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彼方の島の夏休み ―不思議系少女と過ごすネットゲームの夏―  作者: 広瀬凉太
第三章 海で遊ぼう

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第31話 はじめてのホーム

「……ゆうべは、お楽しみでしたね」

「いや、意味わかって言ってる!?」

 ログインした途端にカズハが、どこかで聞いたようなことを言い出した。


「確かに昨日もこのゲームは楽しかったが」

 やっとまともに中ボス戦に勝てたし。

「……わたしも楽しかった。で、今日は何するの?」

「使い捨ての簡易テントもこれで使い果たしたし、まずは新しいテントを作る」


 ゲームの中でも季節は少しずつ進んでいるようで、生い茂る真夏の森からはミンミンゼミの合唱が響いてくる。

 時には声を張り上げるか、顔を近付けないと、話もできないくらいに。


    ◆


 大樹の木陰に、雨がしのげそうな場所を探す。

 竹林で作った長い竹の棒を、石で叩いて地面に立てた。それを2本ずつ三角形に組み合わせ、間にもう1本棒を渡し、ツタで結んで固定する。

 カズハから買った帆布を掛け、それも固定する。


――拠点施設【テント】を作成した!――


「見栄えは良くないが、ひとまず衣食住の『住』は確保した」

 ゲームに住は必要かと問われると、このゲームでは必要と答えざるを得ない。

 ログアウト中はアバターが無防備になるので、安全な部屋かテントなどが必要だ。

 現在この本拠地は、町や村と同じくセーフティゾーンとして設定されているが、それはモンスターが寄り付かないだけ。プレーヤーキャラクターだけではなく、ノンプレーヤーキャラクターからも攻撃される可能性がある。アイテムを盗られたり、状態異常を食らったり、時には死に戻りに追い込まれることさえも。

 それを防ぐのが、マイハウスとか宿屋。テントでは完全に身を守れるわけではないようだが、ないよりはずっとましだ。


「……このテント、ちょっと狭くない?」

 中に入ってみた俺を追いかけるように、カズハまでテントの中に入ろうとする。

「待て。言い忘れたがこのテントはひとり用なんだ」

「……なんでそんないじめっ子みたいなことを」

 まさか俺がいじめっ子側にまわる日が来ようとは。いや、そうじゃない。


「さすがに男女ふたりでひとつのテントはまずいだろ」

「……でもゲーム上、へんなこと(・・・・・)はできないから大丈夫」

「それ普通の男子にとって、かえってまずいんじゃないか」

「……ん?」

 だめだ理解してねえ。


「……じゃあわたし、一体どこで寝たらいいの!?」

「いや今までどこで寝てたの?」

「……ゲーム内のスタッフルーム」

 じゃあ引き続きそこで寝たら、っていうのは野暮だろうな。


「わかったもうひとつテントを作るから」


――拠点施設【テント】を作成した!――

――拠点に人数分の宿泊施設を作った!――


「そうか人数分必要だったか」


――拠点レベルが1になった!――


「今まで0だったの!?」

「……まあほぼ何もしてなかったから」

「解放するだけじゃだめだったか」


――拠点施設【小さな湧き水】が解放された!――


 あたりを探ると、大樹の根元近くに小さな水場ができていた。


「さっきまでこんなのなかったのに」

「……ゲームでそういうことは言わないお約束」

「わかったよ。これで川まで水()みに行かなくてよくなったのはありがたい」


 先日作った[竹の水筒]を取り出し、水を汲む。


――[わき水]を作成した!――


 [竹の水筒]のアイテム名が、[わき水]に変化する。

 これ、作成したことになるの? 水汲んだだけなのに。


 同じものをあと5つ作って、3つをカズハに渡す。

 支給品の飲料水も、もうほとんどなかったはず。


「……ん。大事にする」

「いや使ってくれ。そういえばこれ、ずっと持ってたら腐ったりする?」

「……外に置いといたらダメになるけど、アイテムボックスや倉庫に入れたらずっと変わらない」

「そうか。ありがとう。で、衣食住の『衣』は防具があればいいとして」

「……ゲーム内でコスプレとかもできるけど」

 え、コスプレやりたいの? いや、むしろ俺が変な服着せられそう。


「『食』。次は畑を作るけどその前に、気になってることがある」

 俺は[こども用虫あみ]を1本取り出す。


「む、虫っ!?」

 カズハがばっと距離を取る。

 そこまでいやか?


 女性恐怖症とか言っている俺が言うことではないかもしれんが。


「確かめたいことがあるって言っただろ。カズハはプログラムのバイトとかないの?」

「……ゲンがログインする前に終わらせた」

「そんなに時間はかからないから、ちょっと待っててくれ」


 そして俺は、広場を飛んでいる白いチョウを追いかけて走る。


――モンシロチョウを10匹捕まえた!――

――[キャベツの種]を5個手に入れた!――

――種子系アイテムを1種手に入れた!――

――[さびたクワ]を1個手に入れた!――


 やっぱり、そうなったか。

「……え? キャベツ?」


「ゲームでモンスター倒してお金が手に入るのってあるだろ? あれ、疑問に思ったことないか?」

「……モンスターが人間襲って奪ってた」

「いや怖いわ!」

「……昔のアニメだと、大魔王が宝石からモンスターを造ってるって設定のがあったみたい」

「俺も聞いた事はあるが……同じ設定は使いづらいんだろうな」

「……一般的な話だと、倒したモンスターから素材を剥ぎ取って、それを店に売って収入を得ている、っていうのを省略すると、直接モンスターからお金が出ることになるらしい」

「このゲームはお金じゃなくて素材が手に入るからな。加工の部分は一部省略されてるが」

「……ということは、あのキャベツの種も、何か省略された結果なの?」

「モンシロチョウは現実世界ではキャベツのほかダイコンとかハクサイ、カブなんかのアブラナ科作物の害虫とされてる」

「……害虫駆除をすると、収穫量が増えて、その分の種が手に入るってこと?」

「そうみたいだな。この前、スズメバチを倒したらハチミツが手に入ったけど、それも多分同じだろう」

 なんかカズハが難しそうな顔してるが。


「と、言うわけで、昆虫採集、行ってくる」

「……ええええええ」

「いや、夏休み体験ゲームやったことあるって言ってたよな」

「……虫とりは無視してた。ムシだけに」

「…………それ満喫できてなくない!?」

「……まあ、いろんな楽しみ方ができるのがゲームだから」

「じゃあ俺は、昆虫採集楽しんでくるとするよ」

「……ゲンが見たことない顔してる」

「見たことない顔はお互い様だろ」

「……こういうのが好きなの?」

「一応、博物館か水族館に就職希望してるからな。標本採集とか整理のアルバイトもやってる。カズハほどしっかり未来の展望があるわけじゃないが」

「……将来の夢とか、初めて聞いた」

 それは……初めて言ったからな。

 昨日カズハの夢を聞いたせいもあるが。

 そもそも虫嫌いの相手に昆虫学者志望なんて言えないだろ。


「とにかく、行ってくる」

「…………ん」

 何やら寂しげなカズハに背を向け、獣道に突入する。


 相手の苦手分野をカバーするのも、友達ってもんだろう。知らんけど。


    ◇


――キアゲハを10匹捕まえた!――

――[ニンジンの種]を5個手に入れた!――


――ニジュウヤホシテントウを10匹捕まえた!――

――[ナスの種]を5個手に入れた!――


――マメコガネを10匹捕まえた!――

――[ダイズの種]を5個手に入れた!――

 ダイズの種って、それただの大豆じゃない?

 5個じゃ足りないから、畑で増やしてから食べよう。


――ホオズキカメムシを10匹捕まえた!――

――[ピーマンの種]を5個手に入れた!――


――種子系アイテムを5種手に入れた!――

――[さびたクワ]を3個手に入れた!――


 順調順調。

 種と(くわ)があるなら畑が作れるな。


    ◇


――種子系アイテムを10種手に入れた!――

――拠点施設【畑】が開放された!――


 畑ってクワで耕して作るんじゃないのか。

 一旦拠点に戻ってみよう。


    ◆


「 3541、3547、3557、3559、3571、あ、おかえり」

「ただいま……って俺が出かけてる間ずっと素数数えてたの⁉」

「……思ったより早かったね」

「畑ができたそうだから」

「……じゃあ早速、畑のチュートリアル始めるね」

「お、おう」

最後までお読みいただきありがとうございます。

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