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彼方の島の夏休み ―不思議系少女と過ごすネットゲームの夏―  作者: 広瀬凉太
第二章 ふたりの冒険

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第27話 ジェイドカメレオン

「……洗い流せ。その(まなこ)の曇りを。【レストアビジョン】!」

 カズハの声が聞こえた。

 直後、一挙に視界が開ける。

 これは、回復魔法か。

 ゲームでは回復専門のキャラがいたり、仲間と回復魔法をかけ合ったりすることもあったが。

 実際、知り合いから回復してもらうのも、何と言うかちょっと恥ずかしい。

 いや、運動部とかはそうやって助け合ったりしているのだろう、しらんけど。


「……うふふふふふ」

 な、なんか笑ってる。

「お、おい、大丈夫か!?」

 笑気ガスかなんか食らったみたいになってるけど。あの緑のガス、そんな効果もあったりするのか?


「……こういうの、ずっとやってみたかった。今度はゲンの方から、何か魔法をかけて欲しい」

 いや、まだ俺、魔法使えないから。


「それはまた今度な」

「……ん。また今度」

 こんな敵の目の前でふざけてる場合じゃない。


「それじゃ、行くぞ」

「……じゃ、行くよ」

 互いに声を掛け合う。

 女子と一緒にゲームなんて少しは不安もあったけど、少しは女性恐怖症もましになったかな。そう思った瞬間――。

「……あ」

 カズハが小さく声を上げる。

「どうした?」

「……二人で同時に『行く』って言うの、何か、えっち」

「アホなこと言ってる場合か!」


 だからふざけてる場合じゃないって。

 それでカエルにやられたんじゃないか。


 幸いにもその隙に攻撃されるということはなく、いつの間にかカメレオンは姿を消していた。


「……逃げた?」

「いや、移動の音までは消せないし、遠くへ行ったわけではなさそうだな。また保護色でその辺に隠れたんじゃないか」

 俺は周囲を見回し、さっきのような違和感がないか探る。


 ……いた!


 俺はカメレオンを指さしながら、慎重に近づく。後ろをついてきたカズハに指示を送り、ふたりでカメレオンの頭をはさむように位置を取った。


 攻撃直前、俺とカズハは視線を交わし、うなずき合う。

 タイミングを合わせた、両側からの《《ほぼ》》同士攻撃。

 そのつもりだったが、武器種のせいだろうか。カズハのハンマーが先に命中し、数秒遅れて俺の槍が、敵の目をかすめる。

 

――連携攻撃に失敗しました――


「連携攻撃!? そんなのあったっけ?」

「……まだ取得してない。でも、わざわざ失敗のメッセージが出たってことは……」

「もう少しで連携攻撃が成立する、ってことか」


 槍を構え直し、何も言わずにカメレオンの首元へと移動する。

 ここなら舌も届かないはず。


 わずかに遅れて移動したカズハに合図を送るように槍を振る。

 ゲーム好きのカズハにはある程度伝わったようで、彼女もハンマーを振り上げる。

 二手に分かれた俺たちに戸惑うように、カメレオンは一瞬硬直したかに見えた。

 だが、体は動かずとも左右の眼は動いている。


 カメレオンの飛び出した目は、ほかの多くの動物と違い、左右が独立して動くようになっている。左目が俺を、右目がカズハを捕らえた。

 でも、見えたところで対応できない攻撃もある。

 左右同時に対応は、おそらく無理――。


 その直後、カメレオンは口を小さく開き、息を吸い込むような動作をする。

 不覚! これはまさか――。

『ゴガアアアアアアアアァァァァ!!』

 こちらの攻撃より早く、カメレオンの口から大音量の咆哮が放たれた。


「ごめん! 実在するカメレオンには発声器官なんてないから、この反撃は予想していなかった!」

「……大丈夫。予備動作はわかったから、次は何とかなる!」

 普段よりテンションの上がった声で、カズハが答える。


 実際、このサイズのモンスターに本気で叫ばれたら、鼓膜とか精神までやられかねないだろう。

 ゲーム的には、音量は少し驚く程度。ただしその代わりなのか、吹き飛ばしとわずかなダメージが付与されている。


 咆哮に続けて、また緑のガスがまき散らされる。

 身構える俺たちの間を、輪郭があいまいになった緑の巨体が駆け抜けていった。


 今度はすぐに止まらず、獣道を先へと遠ざかってゆく音が聞こえる。


 去る者は追わず、と言いたいところだが。

「あっちは、俺たちのホームの方向じゃないか」

「……仕方ない。追いかけてわたしたちのホームを守ろう」

 カズハの回復魔法で視界を取り戻し、獣道を走る。


 しばらくして、カメレオンの尻尾が見えてきた。

 逃げ始めた時は、それなりのスピードが出ていると感じたが、カメレオン自体、そんなに活発に動く動物じゃない。こっちの方はモデルに設定が近いようだ。

 それでも、俺たちのホームであるエノキの広場はもう目前。


 俺たちの足音に気付いたか、カメレオンは獣道の出口で反転し、大きく口を開く。

 その(のど)の奥で、青黒い何かが渦巻いているのが、見えた気がした。

「さっきと違う! いったん下がれ!」


 ビクッと、一瞬カズハの体が震えたのが見えた。声が大きすぎたのだろうか。

 それでも彼女は、カメレオンから距離を取ろうと、獣道から森へ逃げ込む。

 俺もそれを確認しつつ、獣道を逆走する。


 そして、ジェイドカメレオンが大きく息を吐く。謎の青いガスと一緒に。

 それは周辺の空気を、真夏の空の色に染める。

 ん? 真夏の空?


 体内に毒袋みたいなのを複数持っているんだろうか。いや、複数というか、もしかして……。


 カズハに解毒してもらえるだろうし、最悪でも知り戻りだろうが、それでもわざと食らう気にはならない。


 カメレオンの足音が遠ざかる。ブレスを吐いては来るものの、そこから追い打ちをしてくることはない。

 と、いうことは……。


 さっきカズハが髪の色を変えるのに使っていたカラーパレットが脳裏に浮かぶ。

 たぶん、緑と青だけでなく赤のガスも使えるのだろう。使い時が難しそうだが。


「……あ、ゲンが何か思い付いた顔した」

 いつの間にか近くに来ていたカズハがそんなことを言う。

 いや俺、そんなに表情に出やすいか?


「とにかく、あのカメレオンの能力はやっぱり保護色で間違いない。保護色は本来自分の身を隠したり、獲物を待ち伏せするための能力であって、自分から動いての戦闘、特に複数の敵と戦うには向いていない。だから、攻撃ではなく距離を取るのを優先してるんだ」

 横を歩くカズハに説明をしながら、広場に飛び出したカメレオンを追う。


「……でも、他のゲームだと保護色で戦えてない?」

「あれ実際は透明化だったり光学迷彩的なものだったり、別の能力を併用していたりするからな。それに、あのガスの効果が視覚の阻害だとすると、そういうのとは相性が悪い」

「……じゃあ緑のガスって?」

「たぶん、保護色の補助」

「……補助?」

「身を隠すための時間稼ぎだと思う。敵の目の前で保護色だけ使ってもその場にいるのは明らかだし、動けば効果はほぼなくなる。だから、いったん色付きのガスに紛れて、移動して居場所がわからない状態で保護色を発動。そうすれば、また不意打ちができる、という戦法なんだろう」

「……でも、不意打ちの前にゲンに見破られてるんだよね」

「その辺は、動物園や水族館で鍛えたから」

「……それで、さっきの青いガスは?」

「緑のガスが視覚を妨害し、青のガスは別の効果。そう思ってた。っていうか、勝手にそう思い込んでた」

「……わたしもさっき余計なこと言った気がする」

「それはいい。俺も同じこと考えてたし。ヒスイ(ジェイド)の名前も、今思えばミスリードなのかもしれない」

 カズハはネタバレ防止のため、モンスターの情報はもらってないって言ってたからな。

最後までお読みいただきありがとうございます。

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