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3/11

儂の名は。

「ヴォルディガーン様! 奴らが、騎士団が攻めてきます!」


 儂の部下たち、黒の教団の者たちが声を揃えて叫ぶ。


 騎士団、おまわりさんみたいな物じゃな。それが一体何じゃと言うのか。

 やれやれ、若いもんは落ち着きが無いのう。


「国内での黒魔術は全面禁止されてるんですよ!? ここでの研究がバレたら我らは一貫の終わりです!」


 あぁ、そんな決まりもあったかのう。


 ……やばくね? 儂、やばくね?


 禁術使って若返っちゃったけどヤバイのぅ。


 けどせっかく転生して記憶も取り戻したのに年寄りの体は……。それに生涯掛けた研究も無駄にはしたくなかったし……。


 なれば……。


「解散じゃ」


 そう告げる。これしかあるまい。顔が割れてるのは儂だけじゃ。その儂も今は若返って子供の姿。

 見つかる心配もあるまいて。こいつらも、黒装束脱げばそこらの人間と変わらんし。


「あの、ヴォルディガーン様? 今何と?」


「ええい! 儂をヴォルディガーンと呼ぶな! これから身を隠すんじゃぞ!」


 他に誰もいないから良かったが、儂の素性が割れてしまうでは無いか。


「では……、何とお呼びすれば……?」


 ふむ。儂は思案する。折角じゃし前世の名前……、はダサいし嫌じゃな。


 そうじゃ! 儂の脳裏に閃く妙案。


「†黒き終焉の炎†じゃ」


 儂のゲーム名なら良いじゃろう。カッコ良いのぅ。


「え……、今何と?」

「くろ……、くろ?」

「クロス黒き終焉の炎クロスって言ったか?」


 馬鹿者どもめ。


「そこのクロスは発音せんで良い。黒き終焉の炎じゃ」


 不思議がり、戸惑っておるのう。このカッコ良さが伝わらんのか……。


「もう良い、儂のことはクロスと呼ぶが良い」


「はい! ではクロス様、我らはこの先どうすれば?」


 な……!? そんな事もわからぬのか? 指示待ち人間じゃのう……。呆れてしまうわい。


 はて? どうするか……?


「とりあえず様付けは止せ、子供にそんな態度怪しまれるわい。とりあえずその恰好も着替えよ。

 あとは何食わぬ顔で生活するなり国を出るなりで、ほとぼりが冷めるのを待つかのう」


「お言葉ですがクロス様! いえクロス、君……! 貴方の喋り方も十分に怪しいのでは……」


 ふむ、それもそうじゃ。


「じゃあ姉ちゃん達、誰か一人で良い。変装用の服を買ってきてくれ。オレの分もな」


 子供用の服なんて無いからのう。あ、いかんいかん。やはり慣れしたんだ口調は変わらんのう。


 儂はオレ、儂はオレじゃ。


 意識を新たにする。


 見ると此奴ら、オレがいきなり口調変えて驚いておるな。ククッ、可愛い奴らよ。


 数十分後、家に入りティータイムを楽しんどる所に服を買ってきた奴が戻ってくる。


 着替えてみるが……、何てセンスの無さじゃ。カッコ良さのカケラも無いではないか。


 これではそこらにいる子供と変わらん。


「イマイチじゃな」


 思わず呟いてしまう。


「申し訳ありません! ですがもう時間がありません! 逃げましょう!」


 おぉ、そうじゃったのう。


「のう、考えたんじゃが。オレは単独で国を出る」


 その言葉に一同が驚愕する。


 じゃがオレの意思は変わらん。


「何を仰いますか!? ヴォル……、クロス君! 貴方が居なければ我々はどうすれば!」


 何でも儂の言う通りにしとけば良いと思うなよ。


「ほら、あれじゃ。通信用の魔道具があったろ? 丸っこい水晶の。困ったらアレで連絡せい」


「いえ、ですがーー」


 うるさいのう。


「儂はな、冒険者になりたいんじゃ」


「何を言っておいでですか! その様なお姿でーー」


 納得せぬか? じゃが儂の、オレの意思は変わらん!


「儂はな、冒険者になりたいんじゃ」


 再度、同じ言葉を告げる。魔力を高め、闇のオーラを出し威圧する。


 押し黙る一同。どうやらわかって貰えた様じゃな。


「儂はのう、幼き頃より。いや、この世界に誕生するより前から冒険者に憧れておった。

 圧倒的な力を振るい、周囲に賞賛され、一獲千金も地位向上も思うがまま。何もせずとも女が寄ってくる。

 そんな冒険者にのう」


 オレの言葉を聞いて皆が言葉を発しない。わかって貰えて何よりじゃ。


「ではオレは行く。じゃあの」


「お! お待ちください! ヴォルディガーン様!」


 一人の男が立ち上がる。儂を止めるつもりか? ふふ、そうはさせんよ。


 儂は闇の魔力と体内の気を高める。


 右腕に闇の力、左に生命の波動を込めて練り上げる。


 そして後ろを見ずに振り返り様、それを放つ。


闇功波砲(アビスブラスター)!!」


 拳から放たれるエネルギーの塊、その衝撃の反動が身体にビリビリと伝わる快感。

 儂の脚が地へと軽く埋もれる。


 生気と闇のオーラ。それらが混ざりあった混沌のエネルギーが収束され、男を吹き飛ばす。


 エネルギー砲はそれだけで収まらず儂の家を木っ端微塵に爆散させる。


「ほほ、ちょっとやり過ぎたかの。じゃがまあ、オレの冒険の旅が! 今! 始まる!!」


 儂はすっかり晴れた青空を見上げ、駆け出した。

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