4 教育 ~緑の月 星曜日~ ④若草色の招待状
「そうね……」
「英雄と言われる第一王子のアドルフィン殿下と、ガレジア帝国との国境に領地を持つ第三王子レイナード殿下、どんな方なのか楽しみですね」
「……ん、……そう言えば、さっきモルフェンがもう一度来ていたけれど、何だったの?」
話をそらしたくて、先ほどのモルフェンにふれた。資料に夢中だったセレンディーナは、何があったのか見ていなかったのだ。
「フェロー宰相の奥様から招待状を頂いたのですよ」
「招待状?」
「はい、確認致しますか?」
「まあまあ、二人とも、ずっとここにいるのも変ですから、招待状はテーブルでお茶を飲みながらご覧になってくださいませ」
そう言って、さっさとお茶を用意しに行くマユーラの言葉で我に返る。
確かに、五の鐘もゆうに過ぎていると言うのに、女三人がベッドサイドに固まって、お勉強の資料を覗き込んで雑談を楽しんでいたとは……。
寝間着で夜更かしする『銀の星曜日の茶会』ではあるまいし。
恥ずかしくなって、マルセイと顔を見合わせる。
赤い顔で『やってしまいましたね?』と、肩をすくめ口元を押さえて笑う彼女も珍しい。二人して笑いながら、ベッドから急いで降りた。
「とにかく、招待状確認しなくては」
「何の招待状なんでしょうね~?」
「宰相の奥様は、どんな方なのかしら?」
すでに途中まで用意されていたので、セレンディーナが席に着いた時には、茶葉を蒸らしている状態だった。
「姫さま、こちらです」
「毒と異物の探知は終わっていますよ」
「ありがとう」
セレンディーナはキレイな若草色の封筒から、同色の便箋を取り出した。
若草色の便箋に視線を落とすと、綺麗な字で丁寧に挨拶文が書かれてあり、その後に『茶会への招待状』と題されてあった。
『歌の月一番初めの緑曜日、三の鐘半時より、ドルディア城青の中庭にて、皇女殿下とお話を致したくお茶会へ招待させて頂きます』
「お茶会の、招待状だったみたい」
「まぁ、何時でしょうか? 五の鐘からはお勉強もございますし」
「三の鐘半時と書いてあるわ」
「では、昼餉も兼ねていそうですね、……日時は書かれていますか?」
「歌の月、一番初めの緑曜日とあるわ」
「えっ? 歌の月初日の緑曜日って……?」
「ん? ……明日のこと、ですよね?」
「そうね……」
「……っ!?」
壁に掛かった暦を二度見したのち。三人は顔を見合わせて、真っ青になった。
「あの、無表情天然ボケ文官は、いつこの招待状をお願いされたんでしょう?」
明日では、出席も断りの返事さえ、ままならないではないか!
「マルセイ落ち着いて、わたしたちが入城してからまだ今日で三日、きっとお誘いも早くて謁見の後くらいですよ?」
確かに、そう考えるとまだ二日と経ってはいない。
「……っ」
それはそれで、誘ってきた相手がギリギリの予定を決行したに過ぎない。非常識を承知でお茶会を開く意図があるのか? もしかしたらこちらの対応力を試されているのかも知れない。
「お返事はどうしましょう?」
「取りあえず、明日の三の鐘半時なら大丈夫ですから出席のお返事をしましょう」
「えぇっと『宰相ディアロア・フェローの妻、ミスティーナ・フェロー』と書かれてあるわ」
「そうでした、宰相の奥様でしたね、取りあえず急ぎお返事を書いて宰相のお宅へ届けるよう手配しましょう」
「そうね、ありがとうマルセイ」
「そうだ、トゥルク殿だったら、宰相のお宅がわかるかしら?」
「そうね! トゥルク殿がいてくれましたね」
「では、わたしが聞いてみましょう」
部屋の戸口で控えていたアレイナが手を上げて、扉の向こうに控えるトゥルクに確認をとりに行った。
「アレイナ、ありがとう」




