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Democratic Empire 〜民主帝国の皇帝〜  作者: 一匹狼
エスターライヒの残像
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99%のひらめき

 ヨーロッパ、都市ブタペストにて。

 「東アジアの戦況は一体どうなっているんだい?」

 大都市を背景に、豪華な椅子に座る者が余裕そうに問う。

「現在ロニー率いるエスター軍は同盟軍に押され、戦力差では同盟軍が有利となっています。」

「’戦力差では’ってどういうことだ?それは実質的にはエスター軍が勝っているといったような言い方だが?」

 彼の余裕そうな表情はすでに無くなり、質問は尋問に変わっていた。

「……」

「図星か!この使えぬ工作員たちが!」

「申し訳ありません、デイヴィッド総督閣下。」

 デイヴィッドは怒り、総督室の机を叩いた。

「出ていけ」

 そう言うと、彼の書記官は悔しそうにその場を去った。

「……ああ、そうか。確かに彼は天才的だったよ。だが必ず俺が彼を叩きのめしてやる……!待ってろよ、ロニー。」

 マスクを被った唯一無二の総督、デイヴィッドは燃えていた。



 一方、東アジアでは凄まじい戦いが繰り広げられていた。一人は味方の流れ弾で死に、また一人は食料がなく、死んでいった。

 沖縄を同盟軍が支配し、アルカナ地方にも進軍されていた。

 それに加えて華東南部から渤海にかけての戦線は膠着し、塹壕戦が繰り広げられていた。

 塹壕にいる兵士は恐怖で怯え、死という言葉が身近に感じた。

 地獄そのものだった。

 ロニーは地獄の外でその状況に終止符を打つべく、作戦会議室で一人、地図やファイルを机に並べていた。

「これは……」

 ロニーが持つその資料には最近のアルカナ地方の不審な動きが細かく記載されていた。

 すでにアルカナ地方では複数の都市で武装蜂起が起こっていた。

 ロニーは頬杖をついて考えた。

「別国からのクーデター策略……そうとしか考えられない。」

 そこに、ハルトが入ってきた。

「ロニー、どうすれば……」

「いや、すべてがつながった。」

 ロニーの目は輝いていた。

「同盟軍はアルカナ地方で蜂起した者たちと合流し、アルカナ地方を攻略し、我々を大陸で南と東から攻めるつもりだ。」

「なるほど……。だから同盟軍は必死で北上したのか。……でも、どうやってここからこの状況を打破するんだ?」

「誘い込む。」

「それはどういうことなんだ?」

「一時的に北京より後方に退却しろ。」

 ハルトは混乱した。ロニーはすでに部屋を出ようとしていた。

「でも北京は……、まさか」

 ハルトは確信した。彼が戦争の天才であると。

「アーシャに伝えておけ。」



 ツ――ッ。

「こちら25師団。北京の奇襲準備は完了です。」

 ハルトとの会話から数日、戦況は大きく変わった。

 アルカナ地方南部で蜂起軍と同盟軍が北上し、北京近くでは同盟軍が押し寄せていた。

「全軍、総攻撃――ッ!」

 2つの戦線が一気に動き出した。

 「こちら25師団!北京に全く軍がいません!」

 ロニーの計画はここからだった。

「敵軍は予定通り、北京を包囲後、侵入した。」

 アーシャが通信を入れる。

「すべて揃ったか。では作戦EE-1、開始。」

 次の瞬間、北京市内で戦火が上がった。

 エスター軍の一部部隊は後退せず北京市内で潜伏し、ゲリラ戦法を繰り広げていた。

 ――「敵軍損壊度、基準値を超えました。」

「第二段階、開始」

 エスター軍が北京を包囲するように、南に総攻撃を行った。

 その結果、同盟軍は完全に包囲された。

 北京にいた同盟軍は半分が捕虜としてエスター軍に捕らえられ、もう半分は降伏せず、死んでいった。

 ――「イーストエンド。それが作戦名にふさわしい。東アジアの戦いは歴史上、これで終わらせる。ゲリラ戦による北京の崩壊、そして包囲による外部からの圧力。これほど完璧なのはない。

 そしてもう1つの戦線、アルカナ地方については――」

「蜂起軍は軍人ではない。素人であり、人を殺すというより抵抗心のほうが大きい。しかも装備は一般兵よりかなり劣る。砲撃を相手に浴びせることができれば、相手はどうしようもなくなる。そして同盟軍は寒さを知らない。彼らは性格も住んでいる場所も熱い。また冬が来たら確実に殲滅できる。この作戦名はEE-2だ。」

 ――蜂起軍、壊滅。

 次々とエスター軍の砲兵部隊が蜂起軍を狙い、バタバタと敵が倒れる。

 同盟軍も冬に乗じ、補給や指揮力、士気が急激に低下。

 ――冬季軍の攻撃により、アルカナ地方の全軍、壊滅。



 翌日、大東亜国が無条件降伏。そしてすぐアセアン連合国も降伏。

 講和はエスター民主帝国の完全主導であった。エスター民主帝国が一方的に領土を奪い、世界にその強さを誇示した。

「ジョージ。お前はよくやった。だが俺に勝るやつはこの世界には存在しない。あなたもわかったでしょう?」

「見くびっていたようです。一体あなたは何者なんだ?」

「エスター民主帝国の皇帝だ」

「……エスターライヒ家が世界を統一する日はそう遠くないようだな」

「それより、あの蜂起軍はあなたたちが仕組んだのか?不審な動きが戦争中にあったんだ」

「あれは私たちは何もやっていない。ただ民衆が反乱したのだと考えていた」

「――そうか」



 講和では、大東亜国、極東自治国、長海大公国のエスター民主帝国への編入が決定し、アセアン連合がアセアン自治帝国領となった。

 講和の後、エルヴィンらはロニーに押し掛けた。

「なんで沖縄を見捨てたんだ!そのせいで国民の反感を買ったぞ!」

 エルヴィンはロニーの胸ぐらをつかみ、問いただす。

 そこにハルトが仲介に入る。

「まあ落ち着けエルヴィン。ロニーはそれが罠だって考えてあえて軍を回さなかったんだ。」

「罠……?」

 アーシャが壁によっかかりながら言う。

「無理に沖縄に戻って戦ったら大陸での戦いは絶望的だ。それに同盟軍は私たちが後退しなくたとしても北京を取るつもりだった。それは北京が2つの戦線をつなげるために必要な経路であり、拠点であったからだ。全部、ロニーが教えてくれた。」

「……でも、民兵を殺したのはどうなんだよ。彼らは軍隊になりたくてなったわけじゃないだろう?あと北京にいた弱っている同盟軍の半数は殺したんだろう?それはどうなんだよ、ロニー!?」

 少し間を空けた後、ロニーはガラスの先を見て、言い放つ。

「蜂起軍は非正規軍でも軍隊だ。彼らはなりたくてなったのではないのかもしれない。だが、彼らが私たちと戦っている時点で、同類だ。」

 座っているロニーは今度はエルヴィンを見て言う。

「それに、北京での同盟軍に対してはしっかりと忠告させた。降伏するなら撃たないと。戦う者は無残にも散ってしまったが。」

「……。」

 エルヴィンは何も言えなくなり、その場を去った。

 ハルトが呆れながらロニーに言った。

「ロニーお前は全く。」

「彼には後で謝っておくよ。それよりハルト、ハンガリア国は要警戒だ。」

「そうだな」

 ハルトは今回の戦いの資料を整理するために、その場を去った。


「なんかいつもアーシャが最後に残っている気がするが」

 アーシャは髪をいじっている。

「に、人間観察……だよ。それより、華東には何もしなくていいの?」

「華東共和国とは独立保障、経済連携を約束している。領土は一方的に奪ったが、win-winの関係だ。」

「ふーん。win-winの関係か。お前らしい。」

 ロニーを見ながらアーシャは出て行った。

 

 アジアの国は少なくなった。そしてエスターという大国が形成される。

 エスターライヒの再構築はすでに最終段階に進みつつあった。

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