戦略戦
画像張ってあるんで見てね
作戦は、驚くほどスムーズだった。
進軍開始の命令が下った瞬間から、冬季第一軍から第三軍は極東自治国へ向けて動き始めた。吹雪の中、部隊が雪原を切り裂くように進んだ。極東自治国の守備隊は、その速度に対応できなかった。
三日後、バイカル湖が見えた。
報告書がヴェルナの執務室に届いた。
ロニーはそれを読みながら、口の端を上げた。
「極東北部、孤立確認。北部戦線の同盟軍は降伏———」
ハルトが隣で報告書を覗き込んだ。「完璧だ!計画より四日も早い」
「連戦連勝だ」ロニーは言った。「極東軍は寒さに慣れている。しかし多国籍軍となってくると話は変わる」
ハルトは地図に印をつけながら言った。「南部戦線は、このまま北京方面へ侵攻するか?」
「そのまま進めろ」
一方、大東亜国の官邸では――
「どう思いますか、ジョージ大統領」
アセアン連合国のトップからの連絡が大東亜国に入った。
「ギール・アルカナ戦争で圧勝し、帝国を宣言したとはいえ、アルカナ連邦は陸軍のレベルが低かった。義勇軍を要請する。今は様子見だ――」
北京が見えてきたのは、作戦開始から十二日後だった。
しかしそこで、進軍が止まった。
報告書が届いた。北京周辺、大規模防衛線確認。大東亜国軍、アセアン連合の義勇軍と合流———
ロニーが報告を見ながら言った。
「アセアン連合はどうやら我々をちっぽけな存在と認識しているようだな」
アーシャからの通信が入る。
「北京は落とせない。防衛線が厚すぎる。正面突破は損害が大きすぎる」
ロニーはすぐ決断した。「西を動かせ」
華東共和国が大東亜国に宣戦布告したのは、北の戦線が膠着した翌朝だった。
華東軍が重慶に向けて奇襲を開始すると同時に、エスター帝国軍が長海大公国の北部に侵攻した。
長海の北部防衛隊は、二方向からの同時攻撃に崩壊した。抵抗は散発的で、組織的な防衛線が形成される前に主要拠点が次々と陥落した。
作戦室で報告を受けながら、ロニーは静かに言った。
「長海大公国の西は占領した。彼らは占領したとか何とか言っているけれども」
ハルトが地図に新たな線を引いた。「大東亜国は北と西で挟まれている。北京方面と、長海方面で兵力が分散している」
「今だ」ロニーは言った。「北京を動かせ」
アーシャへの通信が飛んだ。
北京防衛線への総攻撃開始——
防衛線は、すぐに崩壊した。大東亜国軍は西への対応に追われ、北京への増援が間に合わなかった。
帝国軍が北京に入城したのは、西の侵攻から四十八時間後だった。
北京入城直前、大東亜国では――
「彼らはただ者ではない……!長海大公国を一時的に大東亜管理区として併合し、アセアン連合の全面参戦を要請する――」
大東亜国の大統領であるリー・ジョージは明らかに焦っていた。
「やはりロニーは天才だ……エスターライヒ家はいずれ世界を支配する――しかし、それは今ではない」
アセアン連合国、戦争に正式参戦。華東共和国南部に侵攻開始——
ロニーはその報告書を手に取った。
「やっと我々の強さに気づいたか。だがすでに時遅し」
ハルトが険しい顔で地図を見た。「華東の南部が——」
「アセアンに突かれた」ロニーは言った。「我々を見くびっていたからこのタイミングになった」
華東共和国南部の防衛線は、アセアン連合の侵攻により押されていた。華東軍の主力は重慶攻略に向かっており、南部は兵力不足だった。
ハルトが通信機を手に取った。「華東に南部防衛の支援を——」
「待て」ロニーは言った。
「しかし華東が崩れれば——」
「わかっている」ロニーは地図を見つめた。「しかし今、北の兵力を南に回せば、北京方面の制圧が崩れる。東を動かす」
海軍第一艦隊が台湾海峡に進出したのは、アセアン参戦の報告から六時間後だった。
台湾への強襲上陸作戦——
しかし台湾は、がら空きではなかった。
防衛部隊が海岸線に展開し、上陸艇に砲火を浴びせた。波打ち際が炎と爆発に包まれた。第一波の上陸部隊が浜辺で足止めされ、損害が出始めた。
アーシャが艦橋で通信に怒鳴った。「第二波、右翼から回り込め! 正面突破をやめろ!」
戦闘は六時間続いた。
僅差だった。本当に、僅差だった。
右翼からの回り込みが防衛隊の側面を突き、防衛線が崩れ始めたのは、夜が明けかけた頃だった。台湾守備隊は最後まで戦い、帝国軍が島を制圧したのは翌朝だった。
アーシャからの報告がヴェルナに届いた。
台湾、制圧——損害、予定の二倍——
ロニーはその数字を見た。
予定の二倍。
「ジョージ、お前は読んでいたのか……」
しかし報告はそれだけではなかった。
沖縄、大東亜国軍が上陸——
アルカナ地方、大東亜国連合軍が侵攻開始——
2つの報告が、ほぼ同時に届いた。
作戦室が凍りついた。
エルヴィンが青い顔で地図を見た。「沖縄と……アルカナが同時に?」
ハルトが地図に釘付けになっていた。「台湾攻略に艦隊が集中している隙に——沖縄に上陸し、同時にアルカナから帝国の背後を突く。これは——」
「ジョージの判断だ」ロニーは静かに言った。
作戦室に沈黙が落ちた。
エルヴィンが呟いた。「ピンチだ……本当にピンチだ」
ロニーは地図を見つめた。
北京、制圧。長海大公国西部、占領。台湾、制圧。ここまでは計画通りだ。しかし——
沖縄、上陸。アルカナ地方、華東南部、侵攻。
三点が同時に燃えていた。
ハルトがロニーを見た。「どうする」
ロニーは答えなかった。
地図の上で、3つの炎が揺れていた。
ロニーは目を細めた。
「彼はただの政治家ではない」
それは初めて感じる感覚だった。恐れではなかった。しかし——確かに、何かが違った。
ハルトが通信機に手を伸ばした。
「アーシャに台湾から大陸沿岸への上陸を急がせろ。沖縄の対処は本州の守備隊に任せる」
「待て。これで大陸に上陸しても殲滅される可能性が高い。動きが読まれている。それになぜ同盟軍が奇襲したのかを調べなくては……」
ロニーは地図から目を離さなかった。
お前は天才かもしれない、リー・ジョージ。
しかし——
俺も、天才だ。
画像はMapChartで作りました。
これはMapChartのサイトです
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