まさかの求婚
戦場に花を咲かせ、魔物を散り散りに逃した私の魔力供給。
まあ、アルトゥーロ様から見たらそれは私の〝聖女への愛〟なのだけど。
その凄まじい光景を目の当たりにしたアルトゥーロ様は、馬車の中で倒れ込む私を…馬車のドアを開けて壊れ物を扱うような手つきで抱き上げる。
そして魔力回復ポーションを飲ませてくれた。
正直これは助かる、これは。
「イサベル嬢…君の聖女への愛の深さと執念、そしてその自己犠牲の精神。俺は、これほどまでに一途な人を見たことがない」
彼の瞳にはこれまでの疑念や困惑が完全に消え去り、代わりに〝燃え上がるような決意〟が宿っていた。
え、やめて、まって、はやまらないで。
一体何を言う気なの。
「騎士団長様…私はただ、レナが……」
「言わなくていい。分かっている。君は妹君という『太陽』を輝かせるために、自分という『月』を削り続けているのだろう」
それ久々に聞いた。
月扱いめっちゃ久々。
何故ならレナを表に出して目立たないようにしてたから。
アルトゥーロ様はそんな私の手をとり馬車から出して花畑となった戦場に立たせて、騎士としてかっこよく跪く。
「俺は決めた。君が妹君を『応援』し続けるというのなら…俺は、そんな君を『応援』し続けよう」
「えっ? 応援…?」
「そうだ。君が一人でその重すぎる気持ちを背負い、孤独に推しを支える必要はない。これからは俺が君の隣に立ち君の精神を支え、君が倒れそうになったらこの腕で受け止めよう。…俺と結婚してほしい」
「………はい?」
馬車から出てその場で杖を振り回して勝利のポーズをとっていたレナが、固まる。
今回の件の後始末を近くで手伝っていたお兄様が、持っていた書類をバサリと落とした。
「き、騎士団長様、何を仰って…! 私はただの、聖女である妹に狂った日陰者の姉ですよ!?」
「いいや、君のその『狂気』こそが、今この国を救ったんだ。あんなに凄まじい愛という名の魔力を放てる女性を、俺以外の誰が御せるというのだ? 君の愛の重さは、俺がすべて受け止める。君が妹のブロマイドを部屋中に貼ろうが、寝言で妹の名を呼ぼうが俺は一向に構わない」
『お兄様のバカぁぁぁ!! 嘘が…嘘がとんでもない方向に限界突破してるよぉぉ!!』
「さあ、王都へ戻ったらすぐに伯爵閣下へ挨拶に行こう。君が今後より健やかに、より効率的に『妹を応援』できるよう公爵家の財力と私の武力で全力でサポートすることを誓う」
アルトゥーロ様の顔はかつてないほど爽やかで、そして「絶対に逃がさない」という執念に満ち溢れていた。
「お姉様…なんか、ごめんね……」
レナの哀れみの視線が突き刺さる。
こうして私は「本物の聖女」であることを隠し通す代わりに、「最強の騎士団長に全力で推し活をバックアップされる婚約者」というさらに逃げ場のない地位へと追い詰められてしまったのだった。




