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番外編 妹も大変なのよ?

「ねえ、お兄様…これ、どういう状況?」


王都の伯爵邸。


レイナは目の前に積み上げられた「山」を指差し、引き攣った顔でビクトルに問いかけた。


そこにあるのは最高級の布や希少な宝石、そして高価な果物の数々。


「見ての通りだよ、レナ。アルトゥーロ殿からベルへの『結納品』の一部だ」


「これだけあって一部!?というか お姉様に送るにしては、なんか…これ、私の好みばっかりじゃない?」


「ああ。彼曰く『ベルの健康と精神の安定には、彼女の最推しの…聖女である妹君が心身ともに満たされていることが不可欠だ』…だそうだ」


レイナは思わず顔を手で覆った。


お姉様の平穏を守るために『ニセモノ聖女』を引き受けたはずが、気づけばお姉様は『聖女オタク』という謎の肩書きで公爵子息にロックオンされ自分はその〝姉の最推し〟として過剰なまでの供物を捧げられる対象になっていた。


そんな中、追い打ちをかけるように扉が開いた。


「失礼する。聖女レイナ殿、本日も実に見事な輝きだった」


入ってきたのはアルトゥーロの親友であり王国魔術師団の若き魔術師団長、ライムンド。


彼はアルトゥーロに負けず劣らずの真面目くさった顔で、レイナの前に跪いた。


「魔術師団長様? 騎士団長様の付き添いで?」


「いいえ。本日は私個人の要件で参りました。…ビクトル殿」


ライムンドは居住まいを正すと、信じられないことを口にした。


「私を、聖女レイナ殿の婚約者候補に加えていただきたい」


「「はぁ!?」」


兄妹の声が被った。


「魔術師団長殿、貴方まで何を言い出すんだ」


ビクトルは頭痛がするような気がして頭を押さえた。


しかし、ライムンドの目は至って真剣だ。


「アルトゥーロの様子を間近で見て、確信したのです。聖女殿を支えるイサベル嬢のあの凄まじい魔力。あれを受け止めるためには、聖女側にも彼女の愛に応えうる『強固な防壁』が必要だと」


「防壁って…そんな大袈裟な」


「聖女殿。私はイサベル嬢のあまりに重すぎる愛で国が黄金色に染まりすぎるのを防ぐ…いわば、避雷針としての役割を担いたいのです!」


『この人もだ。この人もお姉様の魔力を〝重すぎる愛〟だと信じ込んで、変な使命感に燃えてる!』


レイナは確信した。


アルトゥーロの影響で国の重鎮たちには『イサベルの愛はチート魔力に繋がる』という可笑しな認識が浸透しつつあるのだと。


他言は無用にってお兄様に言われたでしょうがぁっ!!!


「それに」


ライムンドは少しだけ頬を染め、レイナの手を取った。


「あの日、姉君の過剰な魔力供給に耐えながら…震えながらも必死に微笑みをキープしていたあなたの、その凛々しい姿に心を打たれました。私が一生、あなたを支えたい」


「あ、今のちょっとカッコいいかも…」


〝大好きなお姉様が幸せ〟ならもちろん私も幸せ。


でもこのままだと公爵家と伯爵家が、お姉様の『オタク活動』を国家規模で支援する巨大組織になっちゃう!


その上魔術師団長と私が婚姻したら…国が可笑しな方向に行きそう。


だから素敵な方だけど、婚約はご遠慮しなきゃ…と思ったのだが。


数日後ライムンドから贈られた〝聖女の喉を守るための、超高級な蜂蜜〟の美味しさに負け、「まあ、避雷針がいてもいいか」と、あっさり陥落するのであった。


一方その頃、イサベルは。


「イサベル嬢、今日はレイナ殿の新作写真が入ったぞ。さあ、これを見て精神を整え一緒に栄養価の高いスープを飲もう」


『だから、ブロマイドはいらないってば!!!言えないけど!!!』


アルトゥーロの献身的な愛に包囲され、今日も元気に魔力の暴走を抑え込んでいた。

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