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王都デビュー

その後しばらくは穏やかに領地に引きこもって暮らしてきた私たち。


しかし国の有事の際には聖女の出番。


私が聖女の力に目覚めて半年後、ついにやってきた「聖女レイナ」の王都デビュー。


まさかこんなにタイミング悪く…こんなに早く国の危機が訪れるとは。


レナは私と共に王家に出向く。


他の聖女の姿もちらほら見えるが…さて。


「お姉様…心臓が口から出そう。これ、本当にバレない?」


豪華絢爛な聖女装束に身を包んだレナが、舞台裏でガタガタと震えている。


「大丈夫よ、レナ。貴女はただ、一番いい笑顔で空を仰いでいればいいの。あとの『奇跡』は全部私が裏で発動するから」


私はレナの付き添いとして、レナを励ますように小さな声で囁く。


今回の任務は〝急遽古い神殿から発見された、汚染された聖杯の浄化〟。


長年蓄積された瘴気で真っ黒に濁った聖杯から溢れる水を、聖女の祈りで清めるという…極めて難易度の高い儀式。


放置すれば瘴気が国に溢れてしまう。


そんな重要な役目だが、〝私たち〟なら、やり切れるはず。


他の聖女もちらほらいるし。


「それでは、聖女の皆様。そろそろ祈りを」


宰相様の声が響き、聖女が舞台裏から出ていく。


レナが震える手で聖杯に触れた。


他の聖女の反応は様々だが、レナと同じく聖杯に触れる。


『…さあ、やりきってみせるわよ』


私は手を袖の中で組み、祈りを発動。


私の魔力は王宮の床を伝い、レナを触媒にして一本の糸のように繋がる。


「おお、神よ! この穢れを…えーっと、パーッ!と綺麗にしてくださいませ!」


『…レナ、台詞が雑すぎるわよ!まあいいけど!』


私は心の中で突っ込みながら、一気に魔力を流し込む。


他の聖女も同様の動きが見られる。


瞬間、聖杯から溢れ出したのは…ただの浄化の光ではなかった。


聖杯から天に向かって、巨大な「光の柱」が突き抜ける。


王宮の天井すら通り抜けて、王都中の空がまだお昼だというのに黄金色に染まり…どこからか祝福の鐘の音が鳴り響く。


この音どこから鳴ってるの?


「な、なんだこの光は…!?」


「聖杯の瘴気が、一瞬で…消えただけじゃない、聖杯そのものが純金のように輝きだしたぞ!」


聖女の働きをこっそり見守りにきた教会の神官たちが、舞台裏で腰を抜かしてへたり込む。


…やりすぎたー!!!


他の聖女がいるのも考慮するべきだった!


レナもあまりの光の強さに目が眩んだのか、白目を剥きそうになりながら「ドヤ顔」をキープしている。


さすがね…あの子、役者になっても食べていけるわ。


他の聖女は困惑した様子。


そんな中、奇跡を見たがる人々のため用意された参列者席の最前列で、一人の男が立ち上がる。


騎士団長、アルトゥーロ様だ。


彼はレナの輝きには目もくれず、鋭い視線で周囲の〝魔力の流れ〟を追っている。


『え、マズい!こっちを見てる!?』


私は咄嗟に魔力の供給を断ち、わざとらしく舞台裏で隣にいた聖女の誰かの親族であろうおばあさんに話しかける。


「あらあ、すごい光ですわねぇ」


「本当だねぇ、腰の痛みが治ったよ…うちの子も貴女の妹もよく頑張ったねぇ」


アルトゥーロ様の視線が舞台裏からかろうじて見えるのだろう私に突き刺さるのを感じながら、私は確信した。


…これ、絶対に目をつけられたわ。


罰則金確定かなぁ…やだなぁ…。

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