表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/27

第7話

「さて、話はこれで終いだ。守人(もりびと)以外はお帰りいただこうか」


「や、やだよ! ボクはクラウドと一緒にいる! 変なことしないように見張ってるんだ!」


「カズキ……」


 クラウドは首にギュッと抱きついたカズキの頭を撫でる。


「必要はないと言っている。(そう)、連れ出せ」


「はーい。ほら行くよー」


「ヤダっ!」


 (そう)がカズキの腕を取った瞬間、複製が入った一本のガラス管が砕け散った。辺りに水が侵食し、ごとりと音を立てて管に入っていた少年が転がった。


「ぁ……」


「カズキ、落ち着きなさい。俺は大丈夫だから。カズキがいる限りいなくなったりはしないと言っただろう? だから、皆と待っていて欲しい」


「……うん。分かった、待ってる」


 後ろめたさがあったのか、床に転がる体を見つめながらカズキが小さく頷いた。


「いい子だね。叉胤(ざいん)、カズキを頼めるかい?」


「ああ、任せてくれ」


「終わり次第すぐに戻るよ」


 階段を上る彼らの後ろ姿を見送り、クラウドは床に転がっている少年を抱き起こした。銀色の髪が、白い肩をさらりと撫でながら落ちていく。


「良く出来ているだろう」


「この子も一人のヒトだ。決してモノではない」


「動かぬ物は未だ作品に過ぎんよ。自我を持って動き始めた物は者となろう」


「こうして目覚めなくともヒトはヒトだ」


 羽織っていたマントで少年の体を包み、額に手を当てた。少年は息をしていない。


「覚醒なく培養液から出たそれは二度と目覚めることはない。お前の言葉を借りれば死んでいるのと同じことよ」


「なぜ、そんな悲しいことを平然と言えるんだ……」


「答える義務はないな」


 カズキと違うとは分かっていても同じ顔、同じ体だ。息をせず動かぬ彼を見ているのは忍びなかった。何もできない自分が悔しく、クラウドは少年の体をきつく抱きしめる。


 刹那、腰に下げていた剣が、まるで意思があるように高音を奏で強い光を放った。


「……ッ!?」


「うわぁ、びっくりしたぁ。……ぁっ!」


 (そう)が驚いたように少年を覗き込む。小さな呻きと同時に少年が身じろぎ、紫色の瞳が開かれたのだ。肌は相変わらず冷たいが、僅かに鼓動が感じられる。


「ほぉ、驚いたな。(そう)、服を用意してやれ」


「はーい。可愛いの用意してあげるねー」


 クラウドは、(そう)と共に歩む少年を見つめた。奥の部屋に入る前に少年がこちらを向いて、あどけない笑顔を見せて手を振ってくる。


「目覚めた、のか?」


「ああ、生命反応は正常だ。あれは召喚士と全く同じもの、守人(もりびと)のお前の力が何かしら作用したのかもしれぬな。最盛期にもお前ほどの力を持つ者はいなかった。それも聖獣剣に選ばれた者故か」


「聖獣剣……」


 柄を握った。少年が目覚める前、この剣が今までにない光を放ったのだ。守人(もりびと)の力というよりも、聖獣の力を宿すこの剣が命を与えてくれたのかもしれない。


「懐かしいな」


「これを知っているのか?」


卯龍(うりゅう)守人(もりびと)に与えた剣だ。人間界では教会に伝わっていたのだな」


「ああ。教会の騎士に与えられる紋章剣は、この剣が元になっているそうだ」


「なるほど、召喚士を護る守人(もりびと)、番人を護る騎士は同一か。召喚士の複製、足りぬのは守人(もりびと)だな」


「足りる足りないの問題ではない。守人(もりびと)はあの子が決めることだ。鵠僖(こくき)、あの子にはカズキとは別の名をあげてくれないか?」


「ふむ。守人(もりびと)よ、お前はあれにどのような生き方を望むのだ」


「そうだな、彼には……常しえに明るい道行を願うよ。カズキと同じ顔をしているが、違う一人の人間なんだ」


「――白夜(びゃくや)


「え?」


「あれの名だ。昔はな、薄く白んだまま夜の空が闇に包まれぬ日があったのだ。それを白夜(びゃくや)と呼んだ。白い夜、常に明るい夜空だ。お前の望む生き方に合う名だと思うが」


白夜(びゃくや)……」


 願わくは少年に闇が訪れぬように。クラウドは頷いた。


「いい名だ。ありがとう」


「礼を言われるほどのことではない」


鵠僖(こくき)サマお待たせ~」


 弾んだ声で(そう)が扉から出てくる。カズキと対照的な黒い服を与えられた白夜(びゃくや)が、恥ずかしそうに扉の陰から顔を覗かせていた。


「こちらへ来なさい。クラウド、しばし実験に付き合ってもらうぞ」


 鵠僖(こくき)白夜(びゃくや)を呼び、掌で瞳を覆うと何かを耳元で囁いた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ