第26話
カズキは目の前で起きていることに理解が及ばなかった。クラウドが二人、目の前にいる。おかげで先程の快感など吹き飛んでしまった。
どちらが本者?
どちらが偽者?
後から現れたクラウドが、こちらへ剣先を向けてきた。煌めく瞳の碧はクラウドと全く同じだ。
「カズキから離れろ」
「渡すか。カズキ、大丈夫だよ。君は俺が護るから」
「う、うん……」
カズキはクラウドの袖を掴む。自分を抱き包む腕は、大好きなもの。セックスも彼は自分が感じる場所を知っていた。
もう一人のクラウドは?
「ねぇ、そっちのクラウドにも聞くね。何で白夜にキスしたの?」
先程と同じ質問を投げかけると、彼は驚いたような表情を浮かべた。
「何の話だ。白夜と? ありえない」
それを知らないならば、真偽を見定めるに十分な答えだ。
「じゃぁ、あんたが偽者だ!」
「カズキ!? 待て! 話を……」
「する必要ある? だって、ボク聖獣で見たんだもん。悔しいけど、クラウドが白夜にキスしてるとこ。それ見て暴走しそうになったけど、クラウドが白夜で助けてくれた。だから、キスしたことも知らない、ボクを助けてもくれなかったあんたが偽者だ!」
「……っ」
図星を指されたのか彼は言葉を失った。騒ぎを聞きつけたソギたちが合流し、やはり驚きを隠せなかったのか眉を寄せる。
「クラウドさんが二人……?」
「びっくらこいた」
「二人共、それクラウドの偽者。なんで現れたのか分かんないけど」
聖獣の結界内に敵意ある魔族が入り込むとは考えにくい。聖獣の試練か何かだろうが、全くもって悪趣味である。
「ねぇ、あんたはさ、ボクとクラウド相手に戦う気?」
男はしばらくこちらに剣を向けていたが、小さく肩を落として剣を鞘に収めた。
「……出直そう」
落胆したかと思ったが、彼は素早い動きでソギたちの前に立つ。
「悪いがソギ達は連れて行く」
クラウドが制止をするが、男は膝を着いて左の人差し指を地面に当てた。そこから左右に緑色の光が走り、大きく風が巻き上がる。目も開けられないほどの強風が二人を襲い、風が収まる頃には、ソギたちの姿が消え失せていた。
「…………」
カズキは皆を連れて行かれたことに焦りを感じながらも、これで確信をした。クラウドに風を操る力はない。それを操った彼は、やはり本当のクラウドではないのだろうと思う。
「もうっ、砂漠に入ってから変なことばっかりだよ」
「変なこと?」
「うん。ナシュマは逃げるし、叉胤は元彼に殺されかけるし、クラウドの偽者は現れるし、ソギも白夜も連れて行かれちゃったし。でもクラウドが帰って来てくれたことは良かったぁ」
そう言って笑うとクラウドが頬にキスをしてくれた。
「ああ、カズキに触れていると安心するね。離れている時間が長く感じたよ。さて、皆を捜しに行かないとね。神殿を歩き回ったから多少地理勘はあるよ」
「うん、お任せだよ。えへへ、笑ってられる状況じゃないけど嬉しいなぁ。クラウドが無事で良かった」
「……カズキ、可愛い顔をしてあまり煽るな。止められなくなってしまうよ」
「うん、全部終わってから、だよね」
カズキは元気良く頷いた。クラウドに会えたことは本当に嬉しかった。
「ねぇ、クラウド。あれから何があったの?」
「神殿の奥に風の聖獣が奉られている祭壇があってね、そこまで運ばれて風は消えた。ただ、何も起こらなかったんだよ、不思議とね。カズキ達は追ってきてくれるだろうと思ったから、どうにか合流できないかと方法を探していた。そこで白夜に会って、そしてカズキにも会えた」
「そっか。クラウドにそっくりなアイツ何なんだろう」
「召喚士と守人の絆を確かめるためのまやかしかな。カズキは俺を選んでくれたわけだ」
「うん。だって、さっきのクラウドとのえっち、ボクが大好きなところばかり攻めてくれたもん。本当のクラウドじゃなきゃ知らないでしょ」
「ふふっ、いやらしい子だ」
右腕でカズキの体を支えたクラウドが、空いた左手で服を脱がせてくる。
「ゃんっ、クラウドっ?」
「自分の弱さに笑ってしまうな。お前が欲しいよ、カズキ」
「クラウド……」
全てを脱がされ、裸体に触れる空気は少し寒い。
「さっきは声を我慢していただろう? 今度は、たくさんカズキの声を聞かせてくれ」
「もう、クラウドってば」
カズキは笑う。それから何度身を絡ませただろう。体は知っている。クラウドとの快感を。カズキは彼の体温を感じながら長い眠りについた。




