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第27話

 彼に連れられたソギたちは、一つの部屋へ入った。


 五十人ほどが入れるであろう大きな部屋は、等間隔に石造りの柱が並び、奥には竜を象った石像があった。石像の周りを緑色の水晶のかけらが円を描くように流動し、天井から漏れる光に照らされて煌めいている。聖獣の神殿に相応しい、荘厳な雰囲気だ。


 男が申し訳なさそうにソギの前に片膝を着いた。


「ソギ、白夜びゃくや。無理矢理連れて来て悪かった。だが、カズキを救うために協力をしてくれないか?」


「あなたは一体……」


 ソギは首を傾げる。白夜が袖を引っ張ってきた。


「ソギ、こっちが本当のクラウドさん」


「え?」


「さっきの人、カズキと間違えて僕に触った。でも、カズキ溺愛のクラウドさんはカズキと僕を間違わない。それと、そっちのクラウドさんに一つ聞く。カズキ暴走しようとしてた。どうする?」


「俺が何とかする。それが鵠僖こくきとの約束だ。カズキが意識を失うところは見たくない。白夜にも負担をかけるしな」


「これが理由」


「確かに、本当のクラウドさんなら白夜君に頼んで暴走を止めない、か」


 こくりと白夜が頷いた。そして白夜の言葉は、否定する余地がないものだとソギも思う。


 安心したのかクラウドが小さく息を吐く。


「クラウドさん、話を聞かせてくれる?」


「ありがとう、ソギ。見当はついていると思うが、ここは風の聖獣の祭壇だ。そして人間界で会った風の民が、元々に住んでいた神殿でもあるらしい。俺は、どうやら風の民の血を引いているようでな、それがあってこの神殿へ導かれた」


「導かれた?」


「おそらくだが、風を操る力を得るために。聖獣か、風の民の意思なのか、風を操ることができるようになったのだが、しかし不都合も起きた。風の力を授かると同時に現れたもう一人の俺だ」


「受け入れた力でカズキ君を護ってみろってことかな」


「おそらくな。自分で言うのも何だが、俺はカズキへの執着が酷い。だから、もう一人の俺がカズキを無理矢理に束縛しそうで怖いんだ。あれは俺の思念の塊だろうから。しかし、既にカズキに手を出したなんてな」


 何とも悔しそうにクラウドが口を引き結んだ。こんなにも悔しがる彼を見るのは、迷いの杜でカズキがさらわれた時以来か。


「ソギ、そういうの手が早いって言う?」


「えーと、うん、そうだね」


「そうか。さっきも、いきなりちゅーして、カズキの服に手――もがっ」


 純粋な白夜が物凄いことを口にしそうで、ソギは慌てて白夜の口を押さえる。


「見てたの白夜君っ?そ、それ以上は心に留めておこうね」

「むぐーっ!」


「はぁ……自分のこととはいえ面目ないな」


「クラウドさんは悪くないよ。風の力を手に入れるために導かれたなら、これから必要になる力なんだろうしね」


「ありがとう。ところで叉胤ざいんは?」


「うん、それがね」


 ソギは事情を話す。


 それを聞いたクラウドが叉胤を抱き上げ、祭壇の奥へと連れて行った。祭壇の奥は小さな部屋になっており、先の建物のように家具が綺麗なまま残されている。


「ここに寝かせておこう。聖獣の力に一番近い場所だ。魔力に力を与えてくれるかもしれない。白夜、看病を頼めるかい?」


「やだ!」


「はい? えっと……困ったね」


「僕、クラウドさんと一緒」


 白ナシュマが肩に乗り、耳元に囁いてきた。彼も仲間の一員である。


「みぃ~」


「そっか。クラウドさん、白ナシュマが見ててくれるって」


「……仕方ないな。白夜、俺とソギの傍を離れるなよ」


「うん。約束」


「クラウドさん、大丈夫?」


 カズキに拒絶されることは彼にとって辛いことだろう。それでも笑顔を見せ、気丈に振る舞うクラウドは強いと思う。


「俺は俺に対して自分を抑えられないと思う。その時は頼むよ」


「うん。カズキ君助けてあげようね」


 そう言ったソギは、元気づけようとクラウドの背を軽く叩いた。


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