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細川ガラシャになる前の明智玉でした。父の謀反を止めないと私が燃えるので必死です  作者: れんれん


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二百五十六話 黒幕との対面

誠仁親王の居所。


信長たちはついに、その場所へと辿り着いた。

周囲はすでに織田の兵によって完全に包囲されている。

逃げ道はない。

信長、光秀、信忠が門前に立つ。

門番たちが槍を構えた。


「何者だ!」

「織田信長である」

その名を聞いた瞬間、門番たちの顔色が変わった。

「ここを通すわけには――」

「ならば、退け」

信長の言葉と同時に、織田の兵が動いた。

門前で短い攻防が起こる。

だが、多勢に無勢。

抵抗する者は次々と押さえ込まれ、門が開かれた。

「進め」

信長を先頭に、光秀、信忠が中へ入っていく。

邸の周囲は既に完全に封鎖されている。


「逃げようとする者は捕らえよ」

光秀が命じる。

「ただし、無用な殺生はするな」

「はっ!」

一行は奥へ進んでいく。

途中、槍を手に立ちはだかる者もいた。

「止まれ!」

しかし織田の兵が素早く取り押さえる。

抵抗する者は武器を奪われ、床へ伏せられていった。


やがて――。

長い廊下の先。

一際立派な部屋の前へ辿り着いた。

信長が足を止める。

「ここか」

「はい」

光秀が頷く。

襖の向こうから、静かな声がした。

「……どうぞ」

信長が襖を開ける。


そこには、誠仁親王が座していた。

慌てた様子はない。

逃げようともしていない。

ただ静かに、信長たちを見つめている。

信長は数歩進むと、立ち止まった。


「誠仁親王殿下」

深々と頭を下げる。

「織田信長にございます」

誠仁親王も静かに答える。

「存じております」

信長は腰を下ろした。

信忠と光秀もその後ろにつく。

部屋の外には織田の兵。

完全な監視下である。

信長はしばらく誠仁親王を見つめた。

そして、静かに口を開いた。

「何故です?」

誠仁親王は答えない。

「何故、儂を殺そうとした?」

「……」

「何故、信忠まで巻き込んだ?」

「……」

「そして、玉と安寧丸まで」

その言葉に、誠仁親王の表情が僅かに変わった。

信長は続ける。

「本能寺の計画は、いつ始まった?」

「……かなり前からです」

「どれほどだ?」

「信長殿が天下を大きく動かし始めた頃から、と申し上げればよいでしょう」

「なぜ儂を危険視した?」

誠仁親王は静かに答えた。

「あなたが天下を統一すれば、朝廷は再び武家の下に置かれると考えたからです」

信長の眉が動く。

「儂が朝廷を滅ぼすと?」

「いいえ」

「ならば?」

「朝廷を尊重するでしょう。しかし、最終的な決定権は武家が持つ」

誠仁親王は真っ直ぐ信長を見る。

「それが、恐ろしかった」

「だから儂を消す?」

「はい」

信忠が怒りを露わにする。

「そのために父上を騙し、私まで殺そうとしたのか!」

誠仁親王は信忠を見る。

「……申し訳なく思っております」

「申し訳ないで済む話ではない!」

信忠が一歩前へ出る。


しかし信長が手で制した。

「よい」

信長は誠仁親王へ視線を戻した。

「続きを聞こう」

「はい」

「秀吉をどうやって動かした?」

「彼の欲を利用しました」

「近衛は?」

「織田家に対する危機感を利用しました」

「毛利は?」

「織田家が弱体化した後の利益を示しました」

「寺社は?」

「信長殿への反感を利用した」

「徳川は?」

「徳川家康殿には、直接すべてを知らせてはおりません」

信長は頷いた。

「やはりな」

誠仁親王は続けた。

「それぞれが、自分自身の意思で動いていると思うように仕向けたのです」

「見事なものだ」

信長は皮肉とも感嘆ともつかない声を漏らした。

「だが、失敗した」

「はい」

「そして、お前はこれから裁かれる」

「……承知しております」

しばらく沈黙が続いた。

すると、誠仁親王が静かに口を開いた。

「一つ、お願いがございます」

「何だ?」

「裁かれる前に……玉殿とお会いしたい」

信忠が即座に反応した。

「断る!」

誠仁親王は信忠を見る。

「なぜです?」

「当然だ!」

信忠の声が響く。

「玉を殺そうとした者を、玉の前へ連れて行くなどできるものか!」


「……」

「玉はお前の策によって命を狙われた」

「承知しております」

「ならば会わせる理由などない!」

誠仁親王は静かに首を振った。

「それでも、会わねばならない理由がございます」

「何だ?」

信忠が睨む。

「それを今ここで話せ」

誠仁親王はしばらく黙った。

やがて――。

「玉殿が、今回の謀略を防いだだけではないからです」

信長と光秀が顔を見合わせる。

「どういう意味だ?」

信長が問う。

「玉殿は、私が最も恐れていたものを既に作ってしまった」

「……何を?」

「織田家と朝廷の関係そのものを変える可能性を持つものです」

信長の表情が変わった。

誠仁親王は続ける。

「そして、それを玉殿自身はまだ理解しておられない」

「……」

「私は、それを直接お伝えしなければならない」

信忠はなおも警戒する。

「到底、信じられぬ」

「当然でしょう」

誠仁親王は頷いた。

「ですが、私の話を聞けば、これまで玉殿が何故あれほど正確に謀略を見抜けたのか、その理由も分かるはずです」

信長は考え込んだ。

確かに、話そのものは荒唐無稽に聞こえる。


しかし――。

これまでの出来事と照らし合わせると、いくつかの点が妙に噛み合っている。

信長はゆっくりと口を開いた。

「分かった」

信忠が振り返る。

「父上!」

「ただし」

信長は誠仁親王を睨む。

「儂と光秀、信忠が同席する」

「もちろんです」

「兵も置く」

「構いません」

「少しでも妙な動きをすれば、その場で終わりだ」

誠仁親王は静かに頭を下げた。

「承知しております」

信長は立ち上がった。

「玉を呼ぶ」

そして、最後に誠仁親王へ告げる。

「お前が何を話すつもりなのかは知らぬ」

「……」

「だが、玉に危害を加えようとしたことだけは、決して忘れるな」

誠仁親王は答えなかった。

ただ静かに目を伏せる。

こうして――。

本能寺から始まった長い謀略の果てに、

玉と誠仁親王。

二人が直接向き合うことになった。

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