↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
細川ガラシャになる前の明智玉でした。父の謀反を止めないと私が燃えるので必死です  作者: れんれん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
253/258

二百五十三年 話 近衛前久――知らされていなかった真実

京。

本能寺の失敗から、まだ日が浅い。

近衛前久のもとにも、次々と情報が届いていた。


「……秀吉が捕らえられた」

「はい」

「信長は?」

「ご無事です」

「信忠も?」

「はい」

近衛は深く息を吐いた。

「そうか……」

本能寺を襲撃する一万の兵。

秀吉を中心にした謀略。

それが失敗した。

近衛にとって、決して小さな失敗ではない。

しかし――。

「それでも、織田に一矢報いることはできた」

近衛はそう考えていた。


信長は生きている。

だが、織田家は今、かつてないほど警戒している。

家臣同士が疑い合う可能性もある。

朝廷との関係も、今後は変わるかもしれない。

そう思えば、完全な失敗とも言えなかった。

「しかし……」

近衛は眉を寄せる。

「一つ、妙なことがある」

「何でございましょう?」

「秀吉が、あまりにも見事に動きすぎた」

近衛は呟いた。


秀吉は野心家だ。

天下を欲している。

だからこそ利用できる。

だが、それだけではない。

誰かが秀吉の性格を理解し、欲望を刺激し、そして本能寺へと誘導した。

「私は、てっきり……」

近衛はそこで言葉を止めた。

自分が聞かされていた話。

自分が協力した話。

それらを思い返す。

「……あの方が全てを考えておられると思っていた」

近衛はそう呟いた。


しかし、その直後だった。

一人の使者が入ってきた。

「近衛様」

「何だ?」

「お耳に入れておきたいことがございます」

「申せ」

「本能寺の件について、織田方が朝廷周辺を調べ始めております」

近衛の表情が変わる。

「……当然だな」

「そして、秀吉の尋問から、朝廷内部の誰かが今回の謀略に関与している可能性が浮上しているようでございます」


「……」

近衛は黙った。

「誰か特定されたのか?」

「まだでございます」

「そうか」

使者が退出する。

近衛は一人になった。

「朝廷内部……」

その言葉が頭から離れない。

自分が知っている以上に深いところで、誰かが動いていた。


その時――。

「近衛様」

別の使者が入ってきた。

「何だ」

「こちらを」

差し出されたのは、一通の書状だった。

近衛は受け取る。

封を開ける。

そして読み進める。

「……」

数行読み終えたところで、近衛の顔色が変わった。

「これは……」

書状には、本能寺失敗後の今後の対応について記されていた。

近衛が関わっていると思っていた計画。

しかし、その先にあるものが書かれている。

「……私は、ここまで知らされていなかった」

近衛の手が震える。


今回の策。

信長と信忠を殺す。

それだけだと思っていた。

だが――。

その後の織田家をどう処理するか。

朝廷がどう動くか。

そして誰を次の時代の中心に据えるのか。

そこまで、既に考えられていた。

「まさか……」

近衛は書状を読み返す。

「最初から、ここまで……?」

近衛は立ち上がった。

「私は……」

自分が利用された。

その可能性に、ようやく気づき始めていた。

「いや……」

近衛は首を振る。

「そんなはずはない」

自分は五摂家筆頭の家柄。

朝廷内でも決して軽い立場ではない。

そんな自分を、誰かが駒として扱うなど――。

「……いや」

近衛の脳裏に、ある人物が浮かんだ。

今回の策を自分に持ち掛けた人物。

その人物が語った言葉。

その人物の立場。

そして――。

自分がなぜ、その話を疑わず受け入れたのか。


「……まさか」

近衛の顔から血の気が引いていく。

「私にさえ、全てを知らせなかったというのか」

その時、近衛の脳裏に一つの名前が浮かんだ。

朝廷の中でも、決して軽く扱うことのできない存在。

自分より上に位置する人物。

近衛は思わず呟いた。

「……あのお方が?」

部屋の中に、近衛の声だけが響いた。

「いや……そんなことを、なさるはずが……」

しかし、今までの出来事を一つずつ思い返す。

征夷大将軍の話。

信長を京へ誘導するための情報。

秀吉を動かした人物。

公家や寺社への働きかけ。

そして、近衛自身が知らされていなかった「その後の計画」。

全てが一本の線で繋がり始めていた。

近衛は愕然とする。

「私は……」

手にしていた書状を握りしめる。

「私も、駒だったのか……」


――その頃。

岐阜では信忠が城内の警備状況を確認していた。

玉は安寧丸のそばを離れず、城内の人員整理を進めている。

本能寺の一件を知った岐阜は、完全に戦時態勢となっていた。

そして玉は、ふと呟いた。

「……近衛様だけではない」

「え?」

侍女が振り向く。

「本能寺を動かした者は、もっと奥にいる気がします」

玉はまだ知らない。

その「奥」にいる人物が――。

朝廷の最も深い場所にいる人物であることを。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。