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細川ガラシャになる前の明智玉でした。父の謀反を止めないと私が燃えるので必死です  作者: れんれん


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二百四十四話 本能寺――決戦

ついに、その時がやってきた。


本能寺周辺には、織田信忠率いる精鋭千名。

さらに、玉が急ぎ送った後詰め五千名。

合計六千の兵が、本能寺を固めていた。


武器も十分に揃っている。

兵站も整えられ、長期戦になっても戦える態勢が整っていた。

信忠は本能寺周辺を見渡した。

「これで、迎え撃てる」

光秀も周囲を確認する。

敵がどれほどの数で来ようとも、ただ待っているだけではない。

陣地そのものを戦場として使う。

鉄砲隊は三段に分けて配置。

第一陣が撃てば後退。

第二陣が前へ出て撃つ。

その間に第三陣が装填を終える。

その後ろには、玉が用意させていたクロスボウ部隊とコンパウンドボウ部隊。

さらに接近された場合に備え、焙烙玉も大量に用意されている。

そして本能寺の中心。

信長の周囲には、織田家の精鋭たちが二重の守りを敷いていた。

外側の兵が崩されても、内側の兵が受け止める。

乱戦になったとしても、決して信長まで敵を通さない。

完全な二段構えだった。


そこへ――

「敵勢、現れました!」

物見から報告が入った。

信忠が顔を上げる。

「数は?」

「およそ一万!」

周囲がざわめいた。

六千対一万。

兵力だけを見れば、圧倒的に不利である。

だが、信長は――

「一万?」

口元が僅かに上がった。

そして、悪そうな笑みを浮かべる。

「猿か?」

信忠が父を見る。

信長は笑っていた。

「奴は、自分が踊らされていることにも気が付かんのだろうな」

そして、ふと考える。

「黒田官兵衛がいて、この有様か?」


信長の目が細くなる。

「それとも……」

少しだけ間を置いた。

「本当に織田家を滅ぼし、その先に天下を狙っているのか?」


答えは分からない。

ならば――

「来るなら来い」

信長は腰の刀に手を置いた。

「殲滅してやる」

その言葉が響いた。

直後。

敵軍が動き始めた。

「敵、前進!」

一万の兵が、本能寺へ向かって押し寄せてくる。

大地が震える。

だが――

光秀は冷静だった。

「鉄砲隊、構え!」

銃口が一斉に敵へ向く。

「距離を測れ!」

敵が近づく。

さらに近づく。


そして――

「撃て!」

一斉射撃。

轟音が響いた。

敵陣の前列が崩れる。

しかし一万の兵は止まらない。

後ろから次々と兵が押し出される。

光秀は叫んだ。

「第一陣、下がれ!」

すぐに第二陣が前へ出る。

「撃て!」

再び轟音。

敵が倒れる。

そして第三陣。

「撃て!」

三段撃ち。

繰り返される射撃によって、敵軍の勢いが徐々に削られていく。


それでも敵は突っ込んでくる。

その時だった。

「焙烙玉!」

兵が次々と投げ込む。

敵兵が密集している場所へ、次々と落下する。

「投げろ!」

――ドンッ!

――ドンッ!

爆発とともに陶器の破片が周囲へ飛び散る。

敵兵が次々と倒れる。

さらに接近してきた兵には――

「クロスボウ隊!」

一斉に矢が放たれる。

続いてコンパウンドボウ。

次々と矢が敵陣へ突き刺さる。

敵は数で押し切ろうとしている。

だが、その数そのものが仇となっていた。


密集しているため、鉄砲も矢も命中しやすい。

半刻。

わずか半刻ほどで――

敵軍の勢いが明らかに衰えた。

「敵、崩れ始めています!」

信忠が叫ぶ。

光秀は敵陣を見つめた。

「……もう半減どころではないな」

敵軍は壊滅状態に近づいていた。


その時――

「怯むな!」

大声が響いた。

一人の男が前へ出てくる。

「この戦、負けるわけにはいかぬ!」

羽柴秀吉。

自ら槍を手に取り、兵を率いて突撃してくる。

「続け!」

秀吉は叫ぶ。

「儂に続け!」

しかし――

その周囲にいた兵たちが、次々と倒れていく。

鉄砲。

クロスボウ。

コンパウンドボウ。

それらの攻撃を前に、秀吉の周囲から兵が消えていく。

「な、何故だ……!」

秀吉は振り返った。


誰もいない。

気がつけば――

秀吉は完全に孤立していた。

「……官兵衛!」

返事はない。

「誰か!」

応える者はいない。

光秀はその姿を見つけた。

「秀吉だな」

「はい!」

光秀は銃を構えた。

「殺すな」

兵たちが驚く。

「足を狙え」

「はっ!」

轟音。

秀吉の右足を銃弾が撃ち抜いた。

「ぐあっ!」

秀吉が倒れる。

立ち上がろうとする。

その瞬間――

もう一発。

左足も撃ち抜かれた。

「ぐっ……!」

秀吉は完全に動けなくなった。


光秀は兵に命じる。

「殺すな!」

「はっ!」

「背後関係を明らかにしなければならぬ。捕らえよ!」

織田兵が秀吉を取り囲む。

そして――

「縛れ!」

秀吉は捕縛された。


ほどなくして、戦場の別の場所でも同じ報告が届いた。

「黒田官兵衛、捕らえました!」

「秀吉の弟秀長も捕縛!」

光秀は頷いた。

「全員、生かしておけ」

そして戦場を見渡す。

敵兵はほとんど動いていない。

「伏兵がいないか確認せよ!」

「はっ!」

織田兵たちは戦場をくまなく探し始めた。

倒れている敵兵。

逃げようとした者。

物陰に隠れている者。

一人ずつ確認していく。

さらに、逃走した兵がいないかも追跡させた。

本能寺周辺を完全に制圧する。

二度目の攻撃を許さないために。


やがて――

捕らえられた秀吉が、本能寺の敷地内へ連れてこられた。

両足を撃ち抜かれ、立つことすらできない。

兵に両脇を支えられながら、信長の前へ引き出される。

秀吉は顔を上げた。

そこにいたのは――

織田信長。

その周囲には信忠。

そして明智光秀。

信長は、しばらく秀吉を無言で見つめていた。


やがて――

「……猿」

低い声が響いた。

秀吉の顔が強張る。

信長はゆっくりと歩み寄る。

「儂を殺しに来た理由を、聞かせてもらおうか」

本能寺の戦いは終わった。

だが――

ここからが、本当の戦いだった。

誰がこの策を仕組んだのか。

そして――

なぜ秀吉は、一万もの兵を率いて信長を襲ったのか。

その全てを明らかにするための尋問が、これから始まろうとしていた。

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