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細川ガラシャになる前の明智玉でした。父の謀反を止めないと私が燃えるので必死です  作者: れんれん


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第二百十三話 「関東攻略の第一歩」

評定が終わり、人払いが行われた。

広間に残されたのは二人。

織田信長と佐竹義重だけだった。


先ほどまでの賑やかな空気は消え、静寂だけが広がる。

信長は広げられた地図へ目を落とした。

関東一円。

常陸、下野、上野、武蔵、相模、房総。

そしてその周辺まで描かれている。

「さて」

信長が口を開く。

「ここからは本当の話じゃ」


義重も頷いた。

先ほどの評定は家臣たちへ向けたもの。

今からは当主同士の話である。

義重は地図へ手を伸ばした。

「まずは現在の関東でございますが――」

そこから話は深夜まで続いた。


北条。

上杉。

里見。

宇都宮。

結城。

那須。

小田。

蘆名。

それぞれの勢力図。

兵力。

関係性。

婚姻関係。

過去の争い。

今後起こりうる対立。

義重は知る限りを話していく。


信長は黙って聞いていた。

時折質問を挟みながら。

「兵はどれほどか」

「城の数は」

「兵糧は」

「家臣の統率は取れておるか」

鋭い質問が飛ぶ。

義重は一つ一つ答えていく。

やがて話は佐竹家の現状へ移った。

「今、最も対立しているのはどこじゃ」

信長が尋ねる。

義重は迷わず地図の一点を指差した。

「こちらにございます」

信長は頷く。


しばらく考え込んだ後、静かに言った。

「なるほど」

そして地図を見ながら笑う。

「面白い」

義重は眉を上げた。

「面白い、ですか」

「うむ」

信長は頷く。

「今の儂の兵だけでは少々骨が折れる」

義重も納得した。

織田軍は強い。

だが関東へ連れてきている兵は限られている。

大軍ではない。

しかし。

信長は続けた。

「じゃが」

その目が鋭くなる。

「佐竹が加われば話は別じゃ」

義重は黙って聞く。

「勝ち目は高い」

信長は断言した。

迷いはない。

義重も内心では同意していた。


織田の軍勢。

織田の鉄砲。

そして佐竹の地理的優位。

組み合わせれば十分戦える。

信長は地図を叩いた。

「まず一つ潰す」

「見せしめも兼ねてな」

義重は息を呑む。

信長は既に決めていた。

戦うことを。

「その後は連鎖じゃ」

「弱い者は頭を下げる」

「強がる者は潰す」

「そうして関東を整える」

義重は改めて思う。

やはりこの男は規格外だ。

戦を一つの出来事ではなく流れとして見ている。


そして信長はさらに言った。

「儂が帰った後の話じゃ」

義重が顔を上げる。

「家臣を残す」

信長は当然のように言った。

「大船で運び込む」

「兵も置く」

「鉄砲も置く」

義重は驚いた。

想像以上だった。

ただの同盟ではない。

本格的な協力体制である。

信長は続ける。

「そして」

そこで少し笑った。

「軍師は光秀じゃ」

義重が目を見開く。


明智光秀。

織田家中でも屈指の知将。

その男を関東へ送るという。

「本気ですな」

義重が苦笑する。

信長は豪快に笑った。

「当たり前じゃ」

「遊びで関東まで来るものか」

その言葉に義重も笑った。

確かにそうだ。

信長は地図を指差す。

「戦をするのは佐竹じゃ」

「主役も佐竹じゃ」

「光秀は支える」

「儂は後ろから見ておる」

義重は深く頷く。

悪い話ではない。

むしろ理想的だった。


関東の大名が前に立ち。

織田が後ろ盾となる。

それならば周囲も受け入れやすい。

信長は最後に言った。

「ひと月後じゃな」

義重も頷く。

準備期間としては妥当だった。

兵糧。

兵の招集。

街道の整備。

各地への根回し。

やるべきことは山ほどある。

「ひと月後」

信長が笑う。

「最初の合戦じゃ」


その言葉に義重の表情も引き締まる。

つい先日まで考えもしなかった未来。

だが今は違う。

織田がいる。

里見もいる。

そして佐竹もいる。

関東は確実に動き始めていた。


深夜。

会談が終わる頃には二人の間で大まかな方針は固まっていた。

あとは動くだけ。

信長は立ち上がる。

「面白くなってきたな」

義重もまた立ち上がった。

「ええ」

二人は地図を見つめる。

その先に待つ戦乱を。

そして新しい関東の姿を。

本能寺まであと二百四十八日。

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