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細川ガラシャになる前の明智玉でした。父の謀反を止めないと私が燃えるので必死です  作者: れんれん


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第二百十九話 「坂東武者の選択」

常陸国・太田城。

安土から戻った和田昭為と佐竹義久を迎え、佐竹家の評定が開かれていた。


上座には佐竹義重。

その周囲を重臣たちが囲んでいる。

皆が待っていた。


天下人・織田信長との会見の内容を。

「話せ」

義重の一言で和田が口を開いた。

安土で見たもの。

聞いたもの。

そして信長の言葉。

一つ残らず語っていく。


やがて。

里見家の提案の話になる。

港の開放。

織田船の停泊。

織田兵の駐留。

そこまで聞いた時。

評定の間にどよめきが広がった。

「そこまでか」

「里見め」

「思い切ったものよ」

驚きは隠せない。


同盟ではない。

明らかに織田を房総へ招き入れる決断であった。

義重も腕を組む。

黙ったまま考えていた。

里見は発展するだろう。

織田の商人が来る。

金が流れる。

人が集まる。

港は栄える。


そして何より。

北条への牽制となる。

北条も簡単には里見へ手を出せなくなる。

それは誰の目にも明らかだった。

重臣の一人が言う。

「殿」

「里見だけが栄えることになりますな」

義重は否定しなかった。


実際その通りだった。

さらに別の家臣が続く。

「北条だけが敵ではございませぬ」

皆が頷く。

常陸にも。

下野にも。

陸奥にも。

大小様々な勢力が存在する。

境目では小競り合いが絶えない。


戦国とはそういう時代だった。

「織田が関東へ入れば」

「そうした有象無象を抑えられるやもしれませぬ」

誰かが呟く。

それは評定の空気を変える言葉だった。

今まで北条ばかり見ていた。

だが敵は北条だけではない。

織田という巨大な後ろ盾。

それは想像以上の価値がある。


義久も口を開いた。

「信長公は関東を見ておられました」

「北条だけではなく」

「関東全てを」

和田も頷く。

「我らの考えていることなど見透かされておりました」

評定の間が静かになる。

信長は理解している。

里見も。

佐竹も。

何を求めているのか。

だからこそ答えを持って来いと言ったのだ。


義重は窓の外を見る。

坂東の空。

先祖から受け継いだ土地。

家臣。

領民。

守るべきもの。

それらを失ってから誇りを語っても意味はない。

「坂東武者の誇りか」

誰にも聞こえないほど小さく呟いた。

もちろんある。

佐竹家にも意地がある。


だが。

誇りだけで城は守れない。

誇りだけで兵は養えない。

誇りだけで家は残らない。

義重は内心で認めていた。

臣従と言っても安土は遠い。

あまりにも遠い。

信長が毎日のように口を出してくるわけではない。

政を奪うわけでもない。


むしろ。

佐竹を残すための選択肢になり得る。

「里見だけに得をさせる必要もあるまい」

義重が口を開く。

重臣たちが顔を上げた。

「もう一度安土へ向かう」

誰も反対しなかった。

むしろ当然という顔だった。

「今度は答えを持ってな」

和田と義久が深く頭を下げる。

「はっ」


一方その頃。

安土城。

光秀は信長へ報告を行っていた。

「佐竹はどう出ると思う」

信長が尋ねる。

光秀は少し考えた後。

静かに笑った。

「臣従して参りましょう」

信長も口元を緩める。

「そうか」

「里見だけが栄える姿を見て黙っているほど愚かではありますまい」

光秀は頷いた。


そして。

少し悪戯っぽい笑みを浮かべる。

「もっとも」

「もし佐竹が臣従したならば」

信長が視線を向ける。

「その足で殿が常陸へ赴けば」

「佐竹は腰を抜かすやもしれませぬな」

一瞬の沈黙。


次の瞬間。

信長が大きく笑った。

「であるか!」

豪快な笑い声が響く。

光秀もつられて笑った。

天下人が自ら関東へ現れる。

確かに佐竹だけでなく関東中が驚くだろう。

信長は笑いながら地図を見る。

関東。

まだ遠い土地。

だが。

その距離は少しずつ縮まりつつあった。

本能寺まであと二百六十五日。

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