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細川ガラシャになる前の明智玉でした。父の謀反を止めないと私が燃えるので必死です  作者: れんれん


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第百九十八話 「里見の使者」

安土城。


初夏の風が城下を抜けていく。

その日、 一人の使者が安土へ到着していた。


房総。

里見家の使者である。


その報はすぐに信長のもとへ届いた。

「里見、か」

信長は静かに笑う。

関東が動き始めている。

その証だった。


側にいた丹羽長秀が口を開く。

「北条との不仲は深うございます」

「関東連合も一枚岩にはなれぬかと」

信長は頷く。

当然だ。

長年血を流してきた相手を、 そう簡単に信用できるわけがない。

「会われますか」

長秀の問い。

だが信長は即答しなかった。


しばらく考えた後、 静かに言う。

「まだ会わぬ」

「は」

「まずは光秀に見させよ」

長秀は小さく頭を下げた。

信長は焦らない。

ここで即座に会えば、 里見側へ期待を与えすぎる。

まずは相手の腹を探る。

それが信長だった。


その頃。

明智光秀は使者との対面準備を進めていた。

「里見から、か……」

光秀もまた、 関東の空気の変化を感じている。

そしてそれは、 織田へ向けられた“恐れ”でもあった。

やがて。

使者が通される。

年は四十ほど。

武士らしい鋭さを持ちながらも、 どこか疲れが見える男だった。

「里見家家臣、正木時茂にございます」


光秀は静かに頷く。

「明智光秀です」

短い挨拶。


だが互いに探っている。

「此度はどのような用向きで」

光秀が静かに聞く。


正木は少し間を置いた。

「単刀直入に申し上げます」

「我らは北条を信用しておりませぬ」

部屋の空気が静まる。

隠すつもりはない。


それが逆に里見らしかった。

「関東連合の話も出ております」

「ですが、北条主導では我らはいずれ呑まれる」

正木の目は真剣だった。

里見にとって北条は宿敵。


織田が脅威だからといって、 簡単に手を結べる相手ではない。

「そこで織田へ?」

光秀が聞く。


正木は頷く。

「織田は海を見ておられる」

「ならば我らにも価値があるかと」

光秀は表情を変えなかった。

だが内心では納得していた。


里見は海を知る。

房総の水軍。

港。

海路。

織田にとっても利用価値は大きい。

「殿はまだお会いになりませぬ」

光秀が静かに言う。

正木も動揺は見せない。

「承知しております」

「ですが、我らは敵として扱われたくない」


その言葉に光秀は少し目を細めた。

敵ではない。

つまり。

味方になれる可能性を探りに来ている。

「織田はまだ東へ兵を向けてはおりませぬ」

光秀の言葉。

だが。

正木は静かに返す。

「だからこそ、今なのです」

その答えに、 光秀は小さく感心していた。


来る前に動く。

それが里見の狙い。

そして。

それほど今の織田が巨大に見えているということでもあった。

対面を終えた後。

光秀はすぐに信長へ報告へ向かう。


信長は話を聞きながら静かに笑った。

「なるほど」

「東が割れ始めたか」

信長の目は鋭かった。

恐れ。

猜疑心。

生き残り。

それらが今、 関東を静かに揺らし始めている。

そして織田は、 その中心になり始めていた。


本能寺まであと三百四日

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