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細川ガラシャになる前の明智玉でした。父の謀反を止めないと私が燃えるので必死です  作者: れんれん


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第百九十七話 「東国の均衡」

関東。

そこは未だ群雄割拠の地であった。


北条。

佐竹。

里見。

宇都宮。

結城。

さらに越後の上杉。

互いに争い、 睨み合い、 均衡を保っている。


だが今。

その均衡を静かに揺らし始めている存在があった。

――織田。

小田原城。

北条氏政は静かに地図を見つめていた。


相模。

武蔵。

上総。

そして海。

その視線は東国全体を見ている。

「八丈島を押さえた意味、分かるか」

側に控える氏直へ問いかける。

氏直は静かに答えた。

「海路にございますな」

氏政は頷く。

「織田は西で終わるつもりがない」

「いずれ東へ来る」

部屋が静まり返る。

重臣たちもそれを理解していた。


問題は。

いつ来るか。

そして。

関東がそれまで持つのか。

「父上」

氏直が口を開く。

「佐竹、里見らも織田を警戒しております」

「ならば動くべきかもしれませぬ」

氏政はすぐには答えなかった。

関東は難しい。

皆が互いを信用していない。

だからこそ今まで均衡が保たれてきた。


だが。

織田という巨大な外敵が現れたことで、 少しずつ空気が変わり始めている。

「連合、か」

氏政が低く呟く。

それは簡単ではない。

だが。

今の織田はそれほど大きい。


一方。

佐竹家でも同じ話が出ていた。

「北条が動くかもしれませぬ」

家臣の報告に、 佐竹義重は腕を組んだ。

「面白い」

「だが、北条主導では気に食わんな」

周囲が苦笑する。

義重らしい反応だった。


だが。

織田の勢いを軽視していないのも事実。

「西の戦国とは違う」

義重が言う。

「今の織田は“国”を作り始めておる」

その言葉に重臣たちも頷く。

武だけではない。

銭。

港。

海路。

商人。

それら全てを繋げている。


だから厄介なのだ。

「もし織田が東へ本腰を入れれば」

「関東もまとまらざるを得ませぬ」

誰かの言葉。

だが。

その“まとまる”ことこそ、 関東にとって最も難しい。


里見でも同じだった。

「北条と手を組む?」

義頼は苦い顔をした。

「簡単に言うな」

長年争ってきた相手だ。

そう簡単に信用できるわけがない。

だが。

海を見れば分かる。

織田の船は確実に増えている。

しかも大型化している。

「……時代が変わるかもしれんな」

義頼の呟き。

誰も否定できなかった。


その頃。

安土では信長が笑っていた。

「関東が騒ぎ始めたか」

届いた報告を読みながら、 愉快そうに目を細める。

「殿」

長秀が静かに言う。

「連合の可能性も」

信長は鼻で笑った。

「まとまれるものならやってみよ」

関東は一枚岩ではない。

互いに猜疑心が強すぎる。

だからこそ、 信長は急いでいなかった。

むしろ。

“織田を恐れることで関東がどう動くか”

それを見ている。


「人は恐れれば勝手に動く」

信長の目は鋭い。

その流れすら利用しようとしていた。


一方。

岐阜。

玉もまた東国の報告を見ていた。

「関東連合……」

まだ形にはなっていない。

だが。

確実に空気は変わり始めている。

歴史が動いている。

以前とは違う形で。

玉は静かに腹へ手を添えた。

未来は変わっている。

だが。

変わった未来が、 良い未来とは限らない。

それだけは、 玉も痛いほど理解していた。


本能寺まであと三百六日

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