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細川ガラシャになる前の明智玉でした。父の謀反を止めないと私が燃えるので必死です  作者: れんれん


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第百九十五話 「若殿の織田」

安土城。


信長は南蛮渡来の地図を眺めながら静かに笑っていた。

海。

港。

交易。

天下を取るということは、 ただ戦に勝つことではない。


人と物の流れを握ること。

今の信長はそこまで見据えていた。

「殿」

入ってきたのは丹羽長秀。

「備中より文にございます」

信長は受け取る。


秀吉からの報告だった。

毛利への圧迫は順調。

海路封鎖も効いている。

さらに長宗我部側からの支援も入り始め、 毛利の動きは以前より鈍くなっていた。

「長宗我部は上手く動いておりますな」

長秀が言う。

信長は鼻で笑う。

「利があるからよ」

長宗我部にとっても、 今は織田と敵対するより得が大きい。


四国統一。

交易。

海路。

全てが繋がっている。

「戦をせずとも締め上げられる」

信長は愉快そうだった。

「これだから海は面白い」


一方。

四国。

長宗我部元親もまた、 家臣たちと話していた。

「織田との交易により兵糧不足も減っております」

「武具も入りやすくなりました」

重臣たちの声も明るい。

以前より戦を進めやすい。

それは事実だった。

元親は静かに頷く。

「あの時、明智殿の話を聞いたのは正しかったか」

家臣たちも異論はなかった。

もし織田と戦っていれば。

四国は疲弊していた。

だが今は違う。

背後を気にせず統一へ動ける。


しかも海路支援まである。

「織田は恐ろしいほど流れを作る」

誰かが呟いた。

元親も同じことを感じていた。

武だけではない。


銭。

海。

商人。

それら全てを使ってくる。

今までの覇者とは違う。


その頃。

岐阜城。

玉は縁側で静かに風を感じていた。

腹も少しずつ目立ち始めている。

「冷えますよ」

信忠が隣へ座る。

玉は少し笑った。

「最近は皆して過保護です」

「当然だ」

信忠は即答する。

玉は少し困ったように笑う。

だが嫌ではなかった。


以前なら、 誰かに守られることへ戸惑っていたかもしれない。

今は違う。

頼れることが少し嬉しい。

「父上は?」

玉が聞く。

「安土だ」

「相変わらず忙しそうですね」

「ああ」

信忠は空を見る。

信長は止まらない。

西を固めながら、 既に東を見始めている。


その流れに、 家中の武将たちも少しずつ飲み込まれていた。

「若殿」

そこへ光秀が現れる。

「関東より新たな報告が」

信忠の顔が少し引き締まる。

だが。

玉はその表情を見ながら、 以前ほど強く口を出そうとはしなかった。


今は任せる。

父と信忠なら、 きっと考えて動く。

玉はそう信じ始めていた。

光秀もまた、 そんな娘の変化を感じていた。

以前は全てを背負おうとしていた。

だが今は違う。

母になろうとしている。

その変化は、 光秀にとってどこか嬉しくもあった。


本能寺まであと三百十一日

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