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細川ガラシャになる前の明智玉でした。父の謀反を止めないと私が燃えるので必死です  作者: れんれん


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第百七十八話 「海を制する者」

安土。


信長の前には、中国方面から届いた文が並べられていた。

播磨。

備前。

備中。

そして毛利。


既に鳥取城の兵糧攻めは終わっている。

飢えにより落ちたあの城の話は各地へ広がり、 織田の“兵站戦”の恐ろしさを天下へ知らしめていた。


今、羽柴秀吉はさらに西へ進み、 備中高松城へ圧力を強めている。

信長は静かに地図を見る。

その横には瀬戸内海。

海。

かつて毛利が支配していた領域。

だが今、 そこへ織田が食い込み始めていた。


「殿」

側近が頭を下げる。

「秀吉様より文が」

信長は受け取り、静かに読む。

備中高松城周辺の状況。

毛利方の動き。

補給。

水軍。

そして。

毛利側が未だ海路を利用し兵糧を動かしていること。


信長は鼻で笑う。

「まだ海を使うか」

だが。

以前とは状況が違う。

織田は既に堺を抑え。

大船団を持ち。

さらに長宗我部との協調まで進んでいる。

海はもはや毛利だけのものではなくなっていた。


信長は筆を取る。

「秀吉へ」

「備中高松城は急ぎすぎるな」

「毛利を飢えさせよ」

「海を締め上げろ」

側近たちが静かに顔を上げる。

信長は続けた。

「戦で勝つ必要はない」

「流れを断てば毛利は弱る」

それはまさに、 織田が今まで進めてきたやり方だった。


貨幣。

流通。

海。

商い。

全てを繋げ、 相手を削る。

力押しだけではない。

国そのものを締め上げる戦。


信長はさらに命じる。

「堺商人へ通達」

「毛利方へ流れる兵糧を徹底的に締めろ」

「従わぬ者は織田領内の商いを禁ずる」

今や堺商人は逆らえない。

織田領内で商売できぬことは、 商人にとって死を意味する。

だから従う。

利益のために。


そして信長はもう一つ文を書かせる。

宛先は四国。

長宗我部元親。

「四国統一を急げ」

「その間、織田は交易を支える」

既に長宗我部は四国西部へ強い圧力をかけていた。

そこへ織田の協力が加わる。


兵糧。

鉄。

塩。

更には海路の安定。

その影響は大きかった。


以前ならば、 四国の勢力争いで消耗していたはずの兵が減らない。

補給も切れぬ。

長宗我部は想像以上の速度で勢力を拡大していた。

特に大きいのは、 海上交易だった。

織田と繋がることで、 長宗我部は莫大な利益を得始めていたのである。

それは単なる同盟ではない。

半ば、 織田経済圏へ組み込まれ始めている状態だった。


安土で文を読み終えた信長は静かに笑う。

「海が変わる」

誰も逆らえなかった。

それほどまでに、 今の織田は巨大になりつつあった。

戦国の勢力図は、 陸だけではなく海からも塗り替えられようとしていた。


そして。

その流れの中心には。

信長。

信忠。

光秀。

そして玉の考えが、 確かに存在していたのである。


本能寺まであと三百四十三日

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