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細川ガラシャになる前の明智玉でした。父の謀反を止めないと私が燃えるので必死です  作者: れんれん


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第百七十七話 「広がる織田」

安土。


信長は南蛮より持ち込まれた品を見ながら静かに笑っていた。

「面白いではないか」

硝子。

時計。

見たこともない布。

そして鉄砲。


南蛮との交易は、織田へさらに富を運び込んでいた。

楽市楽座により商人は集まり。

織田銭の普及で取引は安定する。

そこへ南蛮交易まで加わる。


今や商人たちは、 「織田の領内で商売をしたい」 と考えるようになっていた。

それほどまでに、 織田は巨大な市場へ変わり始めていたのである。

「堺の商人どもも必死になろう」

信長が笑う。

逆らうより従う。

それが最も利益になる。

商人たちは既に理解していた。


一方。

岐阜では信忠が政務を進めていた。

「尾張北部も織田銭へ統一完了にございます」

「美濃街道の整備も進んでおります」

報告を受けながら信忠は静かに頷く。

道が整えば物流が変わる。

物流が変われば商いが変わる。

商いが変われば人が動く。

それは戦以上に国を強くする力だった。


光秀も感心したように言う。

「織田の流れが完全に変わり始めておりますな」

「もはやただの戦国大名ではありませぬ」

信忠もそれを感じていた。

信長が見ているもの。

それは単なる領地拡大ではない。

国そのものを作り替えようとしている。

そんな感覚だった。


だが。

その中でも小さな違和感は続いている。

「……またです」

光秀が一枚の文を差し出した。

「東への荷が一部、予定外の場所へ流れております」

信忠が眉をひそめる。

「商人の判断か?」

「表向きは」

「ですが妙に続きます」

また小さなズレ。

誰かが明確に攻撃しているわけではない。

だが。

まるで水の流れを少しだけ変えられているような感覚。


信忠はしばらく考えた後、静かに言う。

「……泳がせろ」

「はい」

今はまだ掴めない。

ならば無理に暴かない。

その代わり。

流れだけは見失わぬようにする。

光秀も同じ考えだった。


一方。

奥では玉が静かに書を読んでいた。

熙子がその横で針仕事をしている。

穏やかな時間。

だが奥の耳からは今日も様々な話が届いていた。

「最近、妙に商人の出入りが増えております」

「尾張の方で荒銭を求める者が」

「東国の海路の噂が」

侍女たちが小声で伝える。

玉は静かに聞くだけだった。

全てを深く追わない。

違和感だけを拾う。

判断は父と信忠へ任せる。

それが今の玉だった。


玉はそっと腹を撫でる。

以前より少しだけ実感が増していた。

ここに命がある。

その事実が、 玉の考え方を少しずつ変えていた。

本能寺を防ぐ。

歴史を変える。

その想いは今も消えてはいない。

だが。

今はそれだけではない。

守りたい未来ができた。

その違いは大きかった。


外では織田が急速に広がっていく。

戦。

経済。

海。

全てが繋がり始めていた。

だがその裏で。

誰にも見えぬ小さな綻びもまた、 静かに積み重なっていくのであった。


本能寺まであと三百四十五日

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