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細川ガラシャになる前の明智玉でした。父の謀反を止めないと私が燃えるので必死です  作者: れんれん


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第百七十五話 「それぞれの役目」

安土。


信長は完成へ向かう城下を見下ろしていた。


楽市楽座により商人は集まり。

織田銭も次第に広がり始めている。


人。

物。

金。

全てが織田へ流れ込んでいた。

「見事なものよ」

信長の言葉に、側近たちも頭を下げる。

安土は単なる城ではない。

天下を支配するための中心。

その姿が、少しずつ形になっていた。


一方。

岐阜では信忠が政務を担っている。

貨幣。

海路。

東国。

堺。

扱うものは多い。

だが信忠は確実に成長していた。


政務の間。

信忠は届いた文を読み終え、静かに机へ置く。

「堺は落ち着いているな」

光秀も頷く。

「織田銭の流通も安定しております」

「商人たちも逆らうより従う方が利益になると理解し始めました」

信忠は小さく息を吐く。

「戦だけでは天下は取れぬ、か」

「はい」

光秀の表情は穏やかだった。


かつてのような疲弊はない。

今の光秀は、 知略を振るうことそのものに充実を感じていた。

信忠を支える。

玉を守る。

その想いが、 光秀を強くしていた。

だが。

その中でも違和感は消えない。

「……東の動きですが」

光秀が口を開く。

「またです」

信忠が視線を向ける。

「補給路か」

「はい」

「大きな問題ではありませぬ」

「ですが、妙に動きが噛み合わぬ」

また小さなズレ。

ほんの少し。

だが続いている。


信忠は腕を組む。

「誰かが妨害しているなら派手にやるはずだ」

「それをしない」

光秀も同意した。

だから不気味だった。

「焦る必要はありませぬ」

光秀は静かに言う。

「今はまだ、違和感の域を出ておりませぬ」

信忠も頷いた。

無理に動けば、 逆にこちらが乱れる。

ならば今は見る。

それが最善だった。


その頃。

奥では玉が静かに過ごしていた。

熙子が薬湯を用意している。

「ちゃんと飲みなさい」

「はい」

玉は苦笑しながら受け取った。

以前より顔色は良い。

心も落ち着いていた。

母がいる。

それだけで安心できる。


奥の耳からは今日も様々な話が届く。

商人の噂。

武家の不満。

侍女たちの会話。

だが玉は無理に考え込まない。

違和感だけを拾い上げる。

そして判断は父と信忠へ任せる。

今の自分の役目は違う。

それを理解していた。


玉は腹へそっと手を置く。

「この子を守る」

その想いは日に日に強くなる。

熙子が優しく笑う。

「最近、よくそのような顔をしますね」

「どんな顔ですか?」

「母の顔です」

玉は少し照れたように笑った。

外では岐阜城が忙しなく動いている。

天下統一へ向け。

織田は止まらない。


だがその中で。

玉は静かに、 自分にしかできぬ役目を果たそうとしていた。

そして。

小さな違和感もまた。

誰にも気づかれぬまま、 静かに積み重なっていくのだった。


本能寺まであと三百四十九日

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