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細川ガラシャになる前の明智玉でした。父の謀反を止めないと私が燃えるので必死です  作者: れんれん


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第百六十八話 「東へ向かう船団」

駿河沖。


巨大な織田船団が、東の海を進んでいた。


波を割る大船。

幾重にも並ぶ櫓。

帆に刻まれた織田木瓜紋。

西国を震え上がらせたその船団は、今や東へも進み始めていた。


船上。

滝川一益 は海を見つめていた。

潮風が甲冑の袖を揺らす。

背後では兵たちが慌ただしく動き、小舟の確認をしている。

今回の任務では、大船だけでは足りない。

八丈島へ直接大船を寄せるのは危険。

ゆえに。

織田は既に対策を取っていた。

大船に小舟を積載。

沖で停泊し、小舟で接岸する。


ただの戦船ではない。

補給。

上陸。

輸送。

その全てを考えた船団になり始めていた。

滝川は小さく笑う。

「……変わったものだ」

かつての織田なら。

ただ兵を乗せ、敵へ突っ込む。

それだけでも強かった。


だが今は違う。

海を支配する方法そのものを考え始めている。

それを誰より感じているのが滝川だった。

今回。

この任務は織田信長 直々の命。

安土でのやり取りを思い出す。


――東を見ろ。

信長の目は鋭かった。

関東。

北条。

里見。

上杉残党。

織田が次に睨む場所。

その空気を探る役目。

滝川は静かに息を吐く。

嬉しかった。

信長から直接命じられる。

それは信頼の証。


しかも。

これは単なる調査ではない。

織田が東へ進む最初の一歩。

その先陣を任されたのだ。

だが。

浮かれてはいない。

滝川の目が鋭くなる。

北条水軍。

里見水軍。

東国の海にも強者はいる。

特に里見は海に慣れている。

もし遭遇すれば簡単には済まない。


だからこそ。

滝川は既に想定を終えていた。

小舟を散開させる位置。

夜間の灯火管理。

沖合待機の距離。

撤退経路。

全て頭へ入っている。

「戦になれば勝つ」

「だが今は戦う時ではない」

それが信長の考え。

滝川も理解していた。

船団の先頭では、海図が広げられている。

八丈島。

遠い。

だが不可能ではない。


海路を繋げば。

そこは東を見る目になる。

補給地点。

監視地点。

そして将来的には関東への足場。

滝川は思う。

「殿は、本当に天下を取る気だ」

西だけではない。

中央だけでもない。

東まで。

海までも。

全てを織田の勢力圏へ組み込もうとしている。

兵の一人が駆け寄る。

「滝川様」

「前方、異常なし」

滝川は頷く。

「警戒は緩めるな」

「里見の船は速い」

「見えた時には近いぞ」

「はっ!」

兵が去った後。

滝川は再び海を見る。

不思議な感覚だった。

戦場前の高揚とも違う。

未知への震え。

西国では既に織田は恐れられている。

だが東はまだ違う。

これからだ。

これから東国は知る。

織田が西だけの存在ではないことを。


その頃、安土。

織田信長 は地図を見ていた。

東国。

海。

その目は既に次を見ている。

四国は長宗我部を使う。

西は毛利を圧迫。

そして東。

全てを同時に動かす。

常人では処理しきれぬ規模。

だが信長はそれを当然のように進めていた。

帰蝶が静かに問う。

「滝川は動きましたか」

信長は笑った。

「あやつはこういう役目が好きだからな」

「調略、調査、揺さぶり」

「実によく働く」


帰蝶は微笑む。

「織田は西だけでなく、東にも牙を向け始めましたな」

信長は窓の外を見る。

「天下とは国境ではない」

「人と銭が流れる場所全てだ」

その言葉には、もはや戦国大名の枠を超えた響きがあった。

海の上。

夕日が船団を赤く染めていく。

東へ。

織田はまだ進む。

止まることなく。


本能寺まであと三百六十五日

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