表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
細川ガラシャになる前の明智玉でした。父の謀反を止めないと私が燃えるので必死です  作者: れんれん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
167/223

第百六十七話 「土佐の決断」

本能寺まであと三百七十五日


土佐。

長宗我部家の合議は、夜を越えてなお続いていた。


広間。


重臣たちの表情は険しい。

「織田に従えば、いずれ飲み込まれる」

「だが逆らえば今度は大軍が来る」

「毛利と手を組むか?」

「……無理だ」

「毛利も押されている」

議論は何度も巡った。

だが。

結論は次第に一つへ収束していく。


今の織田と正面から争うのは危険すぎる。

しかも。

光秀の話には現実味があった。

長宗我部に四国統一を任せる。

その代わり臣従。

屈辱ではある。

だが滅亡より遥かに良い。


上座。

長宗我部元親 は静かに目を閉じていた。

その脳裏に浮かぶのは瀬戸内海。

堺。

織田銭。

そして巨大な船団。

時代が変わり始めている。

もはや国一つの力だけでは抗えぬ流れ。


元親はゆっくりと目を開けた。

「……日向守を呼べ」

空気が変わった。


翌日。

再び設けられた会談の場。

静かな緊張が漂う。

明智光秀 は落ち着いた様子で座していた。

元親が現れる。

その顔に、昨日までの迷いは少なかった。


光秀は静かに頭を下げる。

「お考えはまとまりましたかな」

元親はすぐには答えない。

重臣たちを一度見渡し。

やがて言った。

「織田は強い」

「それは認めよう」

「武だけではない」

「銭も、商いも、海も押さえ始めている」

光秀は黙って聞いている。

元親は続けた。

「正直に言えば、恐ろしい」

「戦をせずとも国を弱らせる」

「そのやり方は、もはや新しい天下の形だ」


その言葉に、光秀は少しだけ目を細めた。

元親ほどの男だからこそ分かる。

今の織田は、 ただの戦好き集団ではない。

国を“支配する仕組み”を作り始めている。

元親は真っ直ぐ光秀を見る。

「日向守」

「一つ聞こう」

「信長は、いずれ四国を取り上げるか」

重臣たちの視線が光秀へ集まる。


鋭い問い。

だが光秀は落ち着いて答えた。

「殿は天下を統一されるでしょう」

「それは止まりませぬ」

「ですが」

「従う者まで無意味に滅ぼす御方ではない」

元親は黙る。


光秀は続けた。

「若様――信忠様もまた、国を任せられる者は使うお考えです」

「長宗我部殿が四国を治め、織田へ忠を示す限り」

「無理に崩す意味はありません」

元親はその言葉をじっと聞いていた。

嘘ではない。

少なくとも。

今の織田には、 長宗我部を潰す理由より、 利用する利益の方が大きい。


元親はゆっくりと笑った。

「……負けたな」

重臣たちが静まる。

元親は続ける。

「いや、戦ではない」

「流れにだ」

「今の時代は、織田へ向かって流れている」

光秀は何も言わない。

元親ほどの男にとって。

この決断がどれほど重いか分かっていた。

やがて元親は正式に告げた。

「長宗我部は、織田に従おう」

「四国統一の後」 「織田へ臣従する」

「織田銭の流通も受け入れる」

「海路も協力しよう」


その瞬間。

広間の空気が大きく変わった。

重臣たちも完全に納得したわけではない。

だが。

抗えば滅びる。

従えば生き残り、四国統一も近づく。

現実は明白だった。

光秀は深く礼をした。

「賢明なる御判断にございます」

元親は苦笑する。

「賢明、か」

「ただ生き残る道を選んだだけよ」

そして少し真顔になる。

「だが忘れるな、日向守」

「長宗我部は犬にはならぬ」

光秀もまた真っ直ぐ答える。

「織田も、忠ある者を犬扱いはいたしませぬ」


その言葉に。

元親は初めて小さく笑った。

会談後。

光秀は外へ出る。

土佐の海が広がっていた。

その海を見ながら、光秀は静かに思う。

戦を減らした。

かつてなら、大軍が動いていた。

血が流れていた。


だが今は違う。

信忠。

玉。

そして信長。

三人が織田を変え始めている。


その頃、岐阜。

報せを受けた信忠は静かに笑った。

「まとまったか」

玉も安堵したように息を吐く。

四国の大戦は避けられた。

歴史がまた変わった。

だが玉は同時に思う。

織田が強くなればなるほど。

その巨大さを恐れる者もまた増える。

天下統一が近づくほど、 新たな火種は必ず生まれるのだと。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ