夜を裂く咆哮
「ちょっと待ってください! どうして先生のせいになるんですか!?」
守の告白に、思わず声を上げる百合。
すると、守は百合をみやり悲しげに微笑み。
「佐藤――自殺した生徒はとても内向的な子で、普段から気に掛けていました。そんなある日、彼が複数人の生徒達に囲まれている現場を目撃し、止めるために加害者生徒の肩をつかんだんです。けど……」
僅かに言い淀み、しかし決したように顔を上げた。
「加害者生徒の親から訴えがあったんです。体罰があったと」
「体罰って、そんな! いじめを止めようとしただけじゃないですか。悪いのは」
「百合。少し控えなさい」
感情的になる百合に冷たい視線を向け、釘を刺してくる雪。それを受け百合が言葉をのみ込んだのを確認すると、腕を組み、雪は再度守と向き直った。
「ごめんなさいね。続きを」
「あっ、はい。その訴えで私は停職処分となりました。そしてその期間中に、佐藤はこの学校の屋上から身を投げました」
その告白に百合は息を呑み、雪もまた眉間にしわを寄せる。
「もし私がもっとうまく動けていたら、停職処分になってなかったら、彼はあんな結末を……ッ!!」
「だから、貴方のせいだと?」
頷き返す守。
「毎晩聞こえるんです。まるで、遠吠えのようなあの子の叫びが。どうして助けてくれなかったんだと」
そう呟き、力なくその場に膝をつく守。そんな彼に寄り添おうと、百合が一歩生み出した時だった。
「その話、少しおかしいわね」
と、雪がポツリと一言。反射的に守が顔を上げる。
「そんな! もう隠し事は」
「それは分かっているわ。そうじゃないの。もし本当に一年前に自殺した生徒の悪意が原因なら、中級イビルとして現れるには早すぎるのよ」
ピタリと足を止め、振り返る百合。
「どういう事?」
「状況から見て、その一件が大本なのは間違いない。けど、悪意がイビルに――それも、中級に成るのには二、三年はかかるの。稀血を襲って精気を奪えば別だろうけど、こんな教室ではそれもない」
雪が、そう告げた時だった。
ミシッと、木の床が軋む音が背後で鳴り、闇夜に巨獣の咆哮が轟いた。




