表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/10

衝突

 始業時間前の活気あふれる教室内。登校し、席に着いた百合はちらりと横目で転校間もないクラスメイト、氷川雪を見やった。

 彼女が転校してきて三日。偶然とは思えないその再会に警戒心を抱いたが、ここまで目立った接触はない。考えすぎだったのだろうか?

 そんな事を考えていると、教室前方のドアがバンっと開き、一人の女子生徒が姿を現した。

「百合ちゃん、いますか!?」

「楓?」

 台風のように慌ただしいその闖入者たる女子生徒は、腰まで伸びた黒髪をなびかせ、一目散に百合のもとへ向かいその胸もとへダイブした。

 突然の出来事。しかし、クラスメイトの誰もその突然な出来事に驚いた様子を示さない。まるで、日常の一コマと言わんばかりに。

「ちょ、楓!? なんなのよ急に」

「何なのよ、じゃありませんわ! この3日間、体調を崩していたせいで百合ちゃんにお会いできなくて、私、私ッ!」

「そりゃ、下着姿で人様のベット温めてたら風邪もひくでしょうよ」

 やんややんやと騒ぐ二人、すると、隣の席からクスクスと笑い声が漏れ聞こえてきた。

「あら、ずいぶんと愉快なご友人ね」

「ゴメンね、雪。この子幼なじみの龍宮寺楓。クラスは隣ね」

 抱きつく少女、楓を引き剥がしながら、微笑む雪にそう紹介する。すると、楓はそのままの姿勢で顔だけ雪に向け。

「転校生の方ですか。私の百合ちゃんがお世話に」

 しかし、ビタリと続く言葉が止まった。それどころか百合に抱きつくのをやめ、数歩後ずさった。まるで、雪から距離をとるように。

「楓、どうしたの?」

 不審に思い百合が見上げる。すると、その顔は強張り額を汗が伝っている。

「ねぇ、楓。ほんとどうしたの? 顔色悪いよ」

「いいえ、何でも……ありませんわ」

 心配する百合に、絞り出したような声でどうにかそれだけ返す楓。けれど、その鋭い視線は依然として雪に向けられている。

 漂う緊張。周りのクラスメイト達もその様子に気づいたのだろう。自然と、周囲の視線が3人に向けられる。

 と、そんな時だった。

「楓、だったかしら。そんなに心配しなくとも大丈夫よ。貴女の大切な幼馴染を取ったりしないから。もっとも、百合が私に惚れたら保障はしないけれど」

 敵意にも似た視線を向けられていた雪が、そういたずらっぽくほほ笑んだのだ。歓声が湧く教室内。つい先程まで流れていた重苦しい雰囲気が一気に和やかに。

 すると、ちょうど始業のチャイムが鳴り、同時に担任がドアを開け入室してきた。

「おー、ずいぶん賑やかだな。チャイム鳴ったから席つけよ。あと、龍宮寺は自分のクラスに戻れよ」

 声をかけられ、楓は雪から視線を外して百合と向き直った。

「百合ちゃん、約束してください。今日は生徒会の仕事はしないで、放課後は私と一緒に帰ってください」

「急ぎの仕事もないし、別にいいけどどうしたの? さっきから様子が変よ」

「私の様子が変なのはいつものことですわ」

「そこ、自認しちゃうのね」

「とにかくいいですわね、約束ですからね!」

 それだけ言い残し、楓は早足で教室をあとにした。



 


 



 

 

 


 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ