必ず、きっと
百合から溢れた光の泡がグラウンドを包んだ頃、それを離れたビルの屋上から眺める影が二つ。
「背中を押してやったガキの悪意を回収しようと来てみりゃ、なんだアレは」
長身に黒衣をまとった男は、驚きに目を見開く。
「コイツは、予想外の収穫だな」
思わず口角が上がる。
するともう一つの影、長い髪をツインテールに結った少女が、その男の腕に抱きついた。
「あー、またお兄ちゃん他の女見てる」
唇をとがらせ、不服そうにする少女。しかしその目は見開かれている。
そんな少女の頭を撫でながら、男の視線はただ一点に固定されていた。
「いいね、数十年ぶりの稀血だ。この強欲の糧にしてやる」
闇夜に、男の怪しい言葉が残響した。
「今回は、本当にありがとうございました」
グラウンドでの佐藤との別れから数十分。落ち着きを取り戻した三人は、身支度を整え、校門前に集まっていた。
深々と頭を下げる守に、雪は嘆息し。
「叶うならば、次からは隠し事なく依頼してほしいわね。まさか、学校に独断で動いていたなんて」
「すみません。佐藤の一件があってから、上からの風当たりが強くて」
「おかげで、教師一人で用意出来る報酬しかない、と」
そんな彼女の袖を百合が掴み。
「ちょ、雪。そんな言い方。それに謝るのは私たちの方だよ」
脳裏に思い返されるのは、割れた窓ガラスに、逸れた雪の火球で焼けた校舎の外壁。
そんな二人のやり取りを前に、守はクスリと思わず笑みを浮かべた。
「大丈夫ですよ。今回の件も、上はどうせ隠して内々で済ませますから」
その様子に百合と雪も目を見合わせ、苦笑した。
そして雪は嘆息し。
「その笑顔と、あの子への約束で。仕方ないから、それを今回のお代とさせていただきます」
その言葉に、守は再度深々と頭を下げた。
「はい。必ず、きっと」
こうして、百合の初めてのバイトは幕を閉じた。




