土煙のその先に
放たれる炎花の散弾。しかし、ケルベロスは避ける素振りを見せず、その3つの顎から漆黒の炎がチラつく。
次の瞬間、ケルベロスの3つの口から漆黒の炎が放たれ、炎花を相殺した。
「そう、いい度胸ね」
しかし、雪に焦りはなかった。
矢継ぎ早に炎花を放つ。それはあたかも花吹雪のように。
「炎花・吹雪」
速度が上がる連撃。
次第に押され始めるケルベロス。
すると、その時だった。ケルベロスの真ん中の顔だけブレスを止め、一層大きく息を吸い込んだ。
そして、左右のブレスが炎花を相殺した僅かな隙間。真ん中の顎から放たれたブレスが、雪に迫る。
炎花を連続で放つ。けれど、相殺しきれない。
それを認め、雪は舌打ちし、右手を迫りくるブレスに向けた。
「炎花・一輪」
そう紡ぐのと同時、雪の周りにあった八つの火球が収束する。
一枚、二枚と八つの花弁が重なるように、一輪の炎の大輪を咲かせた。
「灼き尽くせ――」
放たれた炎の大輪と漆黒のブレスが激突する。
爆ぜた衝撃がグラウンドを揺らし、土煙が夜空へと吹き上がった。
互いに砂で遮らる視界。けれどただ一点、それだけは雪の視界に映っていた。交戦状態だからかピンと高く張った尻尾が、土煙から顔を出していたのだ。
再度炎花を生成し、尻尾の見える周辺への広域斉射。その内の何発かはケルベロスに直撃し、衝撃で土煙が晴れる。
と、それと同時に雪の目に飛び込んだ。
「バカッ! どうして降りて」
ケルベロスに当たらず逸れた火球の一つが、雪と結ぶ斜線軸の後、昇降口前にいる百合と守に向かって飛んでいるのが。
地を蹴る雪。けれど、ダメだ。届かない。
そんな時だ。雪の横を、一つの影が抜き去っていったのは。




