表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
何を願って  作者: 文絵
84/101

第27章 幸せな 3

 しばらくしてテミストは目元をぬぐい、ごめん、と呟いて続きを食べ始めた。ハルも自分で二つ目を取り出した。


 言葉少なになったまま食事を終えて、十分、二十分も経った頃だろうか。


「……ハル? 寝ちゃった?」


「……寝てないよ。まだ」


 テミストに覗き込まれたハルは、否定しながらも欠伸をした。


「眠くはなったみたい……満腹したからかな」


「珍しいな」


「寝てる? あたしとアキラがどけば横になれそうだけど、……あたしたちがどこか行っても大丈夫かな」


「ん、平気……ここ平和だし」


 ハルは杖を抱いて丸くなった。場所を譲って立ち上がった二人は顔を見合わせた。


「……歩こっか」


「ん」


 足音を忍ばせる必要もなかったかもしれないが、一応静かに丘を下る。


「……魔力の使いすぎ、とか、あるんじゃない? やっぱり」


「それで眠くなったなんてことはこれまでなかったけど」


 テミストは気懸かりそうに見返った。けれども歩調は緩めずに、躊躇わず森へと向かっている。


「ちょうどいい、っていうか。アキラと二人で話したいことが、あったんだけど」


「俺?」


「うん。ちょうどいいから、今のうちに」


 足早になった。困惑しつつも晶は従い、二人は森へ入っていった。


「アキラは、――いつまで、エルにいるの」


「……決めてないけど」


「ハルが〈鍵〉を持ってたから、そんなことだろうとは思ったけど」


 歯切れ悪く、テミストの方も目を逸らす。


「……帰りたくないの?」


「正直な」


 物騒な目にもたびたび遭ったけれども、逃げ帰りたくなったことはない。故郷に、我が家に対して、そういう印象がないのだ。そこにいれば安心できる場所として、自分に染みついていないのだ。


 あちらでの日常に耐えかねて、呼ばれてもいないのについてきた。こちらで何があったところで、あちらに影響するわけではない。話し相手のいない日々は、思い出だけを支えに過ごすには――いや、思い出と比べてしまうだろうからこそ、きっと、一層。


「ていうか、結構あからさまだったと思うんだけどさ。……何も訊かねえのな、ハル」


「帰った方がいいよ」


 顔を見ないままで、テミストは言った。


「故郷に帰れないあたしが言うの。手段があるなら、……許されるなら、帰るべき――」


 ドン! と腹に響く轟音が背後で爆発した。木々が一斉にざわめいた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ