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消えた『人魚の涙』と大混乱の容疑者たち

みのりの迷推理?と暴走が始まります。

夕食を終え、二人が部屋でくつろいでいた時のことだった。

突如、館内のスピーカーからけたたましい悲鳴が響き渡った。


『キャーーーッ!!』


続いて、慌てふためいた男性の声で放送が入る。


『お、お客様にお知らせいたします! たった今、展示室の「人魚の涙」が盗まれました!

犯人はまだ館内に――』

「事件よ!!!」


みのりがガタッと立ち上がった。


「ダメだよみのり! 警察に任せなきゃ!」


あいりは止めたが、みのりの脳内はすでに120%のギヤで暴走を始めていた。

「何を言ってるのあいり! 私たちの旅を邪魔する犯人は許せないわ! それに……ニヤリ」

「な、何よその不気味な笑みは」

「さっきの翔さんよ! あの人、絶対に警察の秘密潜入捜査官(アンダーカバー)だわ! 『人に言えない秘密がある』って言ってたじゃない! これは何かの縁よ、私たちがアシスタントとして協力して、事件をバババッと解決しちゃうんだから!」

「いや、絶対に違うと思う……」


あいりのツッコミも虚しく、みのりは部屋を飛び出していった。

二人が現場の展示室へ向かうと、案の定、物勝手に潜んで様子を伺っている翔の姿があった。


「翔さん!」


みのりが声をかけると、翔は飛び上がるほど驚き、素早く何かをポケットに隠した。


「な、なんだ、君たちか。驚かせないでくれ」

「ふふん、隠さなくても分かってますよ、刑事さん! 私たちも捜査に協力します!」


みのりが胸を張ると、翔は一瞬呆然としたが、すぐにフッと怪しげな笑みを浮かべた。


「……なるほど。いいでしょう、なら僕の足手まといにならないように」

(やっぱりこの人、何か隠してる……!)


あいりは翔を睨みつけた。

翔はあいりの視線に気づくと、耳元に顔を近づけ、低い声で囁いた。


「そんなに怖い顔で見つめないでくれ。お嬢さん」

「……からかわないでください」


至近距離のイケメンに、あいりの心臓はまたしても激しく主張を始める。

そこへ、みのりのスマホが鳴った。涼介からだ。


「もしもし涼介! 今、展示室にいるの! 宝石が盗まれた!」

『だから言わんこっちゃない! みのり、今すぐ部屋に戻れ!』

「嫌よ! 犯人を見つけるの! 今ね、アリバイがない容疑者候補が目の前に大集合してるんだから!」

『いいか、みのり、落ち着いて僕の言うことを聞け』


画面の向こうで、涼介が刑事さながらのトーンで指示を出す。

『警察の初動捜査の基本だ。まず「現場の状況」と「全員のアリバイ」を確認しろ。

特に、犯行時刻の午後8時30分の停電の時に何をしていたか、だ』

「了解、涼介刑事(デカ)!」


みのりはスマホをスピーカーモードにして、容疑者たちに突撃した。


「ちょっと皆さん! 8時30分にどこで何をしてたか吐きなさい!」


みのりの大声に、まず噛み付いたのはベテラン仲居だった。

「なんですか?あなた!?なんであなたになんか・・・。」

「こたえられないってことですか?]

「そんなわけないでしょー。 お客様のお布団を敷きに別館の201号室に行ってたのよ!

そしたら急に停電になって、暗闇の中で激しく何かに激突したんだから!」

仲居は額に貼った大きなサロンパスを指差した。

「そ、それにね……私は見たわよ! 停電の直前、展示室の前の廊下を、

若女将がコソコソと大きな風呂敷包みを抱えて歩いていくのを!」

「あら、人聞きの悪いことを言わないでくださる?」

すかさず若女将が、冷ややかな焦ったような笑みを浮かべて割って入った。


「私はその時、厨房で明日の朝食の食材確認をしていましたわ。

風呂敷包みなんて持っていません。……怪しいのはむしろ、あなたでしょう?

倒産寸前のこの旅館の経営を救うために、私が宝石に巨額の保険金をかけたっていう根も葉もない噂を流したのも、あなたよね!?」

「な、なんですってー!?」

仲居と若女将が掴み合いの喧嘩を始めそうな勢いで睨み合う。


「うーん、どっちも怪しい……。あ、あなたは?カメラマンさんは?」


みのりが話を振ると、カメラマンは首から下げた高級カメラをいじりながら不敵に笑った。


「僕は完璧さ。その時間は露天風呂の美しい夜景を撮影していた。

ほら、これがその証拠写真だよ。はじには支配人も写ってるよ」


差し出されたデジカメの液晶には、月明かりに照らされた露天風呂が写っていた。

「じゃあ、支配人・・・」

「その時、支配人が僕はお風呂で作業したあと、ロビーに戻って仕事をしてましたよ。」

大粒の汗をだらだらと流しながら、ハンカチで顔を拭った。


「あのふたり、あやしいよ。ね。君もそう思うだろ。僕にはわかるよ」

そんなことをいいながら、じっとあいりをみつめる。

翔の言葉に、あいりはドキリと胸を突かれた。

事件の真相に近づく高揚感。

そして、どこか危険な香りのする翔の横顔に、あいりの心臓は不規則なビートを刻み始めていた。


事件の全貌が見えてきました。お読みいただきありがとうございます。気に入っていただけたら嬉しいです。

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