↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
1/5

『湯けむりミステリーツアー!~泥棒とカン違いは蜜の味?~』

こんばんわ。新シリーズ始めました。今回は、トラベルミステリーです。

「見てよあいり! この溢れんばかりのズワイガニ!

そして源泉掛け流しの露天風呂!

私の立てた『極上グルメと癒やしの名湯プラン』、完璧だと思わない!?」


老舗温泉旅館『翠明閣(すいめいかく)』の豪華な夕食膳を前に、

原口みのりは目を輝かせて拳を握りしめていた。

二十代後半、旅行代理店の営業職。大雑把で慌て者だが、その行動力と明るさだけは誰にも負けない。


「声が大きいよ、みのり……」


幼馴染の沢口あいりは、控えめに周囲を気にしながら溜息をついた。

出版社で働く文芸編集者で、大のミステリー小説好き。

正反対の性格だが、暴走しがちなみのりが心配で今回も旅を共にしていた。


「でも、本当に素敵なお宿ね。ただ……さっきから、なんだか館内が落ち着かない雰囲気じゃない?」


あいりの指摘通り、廊下には目つきの悪いスーツ姿の男たちが何人もウロウロしていた。

あからさまに一般の宿泊客ではない。


「あ、それならチェックインの時にフロントの横で聞いたよ! なんでも、この旅館に代々伝わる数億円の秘宝『人魚の涙』っていうブルーサファイアを盗むって、怪盗から予告状が届いたんだって!」

「ええっ!? そんな重大なこと、どうして今そんなに楽しそうに言うの!?」

「だって、本物の事件っぽくてワクワクするじゃない! あ、そうだ、ちょっと涼介に電話しよーっと」


みのりはスマホを取り出すと、同居中の彼氏であり幼馴染の田中涼介にビデオ通話をかけた。

涼介は交番勤務の警察官で、不器用なみのりを支える家事万能な男だ。

画面に映った涼介は、エプロン姿でフライパンを持っていた。


『もしもし、みのり? 無事にお宿に着いたか? 鍵はちゃんと閉めたか? 戸締まりは――』

「涼介聞いて! ここに怪盗の予告状が届いたんだって! 刑事さんがいっぱいいるよ!」

『はあ!? 警察が動いてるのか!? みのり、絶対に妙な真似はするなよ!

お前はすぐ首を突っ込むから――』

「大丈夫だって! じゃあカニ食べるから切るね!」

『おい、待てみのり! みの――』


ツインターボ並みの切り替えの早さで通話を切ったみのりは、早速カニの足を剥き始めた。

その時、食事処の入り口で、一人の男が目にとまった。

仕立ての良いシャツを着こなし、どこか浮世離れした雰囲気を纏った流し目のイケメン。

彼と目が合った瞬間、普段は異性に口説かれても冷ややかなあいりの心臓が、ドクンと跳ねた。

男はふらりと二人の席に近づくと笑みを浮かべた。


「お隣、よろしいですか? 美しいお嬢さん方。僕は相田翔。一人旅は少々退屈でね」

「どうぞどうぞ! 私はみのり、こっちはあいりです!」


みのりが快く迎え入れる。翔はあいりの隣に腰掛けた。


「……女性に慣れている方ですね」


あいりが探るように見つめると、翔は悪戯っぽく微笑んだ。


「おや、見抜かれてしまいましたか。僕には少し人に言えない秘密がありましてね」


つかみどころのない翔の魅力に、あいりは柄にもなく頬を染めてしまう。

しかし、あいりのミステリー脳は彼の指先が異常に器用で、

常に周囲の監視カメラの位置を把握しているような視線の動きを見逃さなかった。


お読みいただきありがとうございます。気に入っていただけたら嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。