時間
「これが、この世界の未来。確定を捻じ曲げて変えてしまうしか無い。」
「なぁみんな、これからどうするんだ。照が入った事で目的が変えたりするのか?」
「する必要ある?無いでしょ。」
「でも照は、みんなとずっと戦っていたいって。」
「それはちゃんと話が通じて手合わせできる人だけよ。殺す事だけしか見えてない人とは手合わせなんてできるわけ無いし。」
でも、と言いかけたところで俺は言葉を飲み込んだ。確かに殺す事だけを考えてる奴には手合わせだなんて言っても殺しに来るだろう。だが、照はそんな奴らは邪魔だと言って殺すのか?聞いてみないことには何も変わらない。照のとこに足を運ぶか。
「照、お前に一つ聞きたい事がある。お前は、邪魔な人がいたら殺すか?」
「いきなりなに?まぁうちは殺すなんてことしたくないけどその邪魔者がうちの目的達成の最大の障壁になるんだったら殺すかな。例えばうちが好きな自然を破壊する人がいたとしよう。その人がいつまでたっても森に居座るようだったら力ずくでどかす。そんな感じかな邪魔者も〜。」
「…わかった。ありがと」
照、ただの戦闘狂かと思っていたがそれだけではない。目的のためなら人も殺せるのだろう。だがなるべく殺さずに駒を進めるって感じか。愛理より危険なのか安全なのかわからんが、1個だけ言えることは照は化け物にも救世主にもどちらにもなり得る。そう思ったとき、俺は吐き気を催した。
「ごめん、一回外の空気吸ってくる。」
人を殺す。それも自分の目的達成のためなら仕方ないし、か。俺が会った人の中で一番の狂人かもしれない。絶対に、照には誰も殺させない。
「君、そこで何をしている。」
「誰だあんたは!」
「通りすがりの転生者だ。それとも時に逆らう吟遊詩人がいいか?」
「吟遊詩人、お前は生前詩人だったのか?」
「そんな質問で何が変わる。時の流れを変化させるには必要な事だけをするべきだ。」
何を言ってんだこいつは。ポエムなのか?時の流れを変化させる?こいつ、未来でも見えてるのか?
「あんた、未来見えるのか?それとも未来から来たのか?」
「未来、か。確かにそれに似ているのかもな。だが、そこどちらも能力の全てではない。」
「何を言ってる。お前は何が言いたい!」
「いつまでも理想を見続けるな。失明するぞ」
なんなんだこいつは、本当に意思が読めない。厨二病、とも言えない。こいつは謎に包まれすぎている。敵意があるのかないのかすらも読めない。
「君、協定を結ぶつもりはないか?」
なんでいまここでその話を切り出す。意味がわからない。頭の中がグルグルになりそう。
「敵意があるのかないのかよくわからないやつとは組むつもりはない。あんたの手札をすべて出したら考えてやってもいいが。」
「そうか。時相テンプス、それが名前だ。能力は時間操作。これでいいか。」
「敵意があるかどうかわからない。まだ協力出来ない。」
「そうか、これ以上話してても時間の無駄だ。」
「な、消えた?」
目の前にはいたはずのテンプスが消えていた。まるでそこに何もなかったかのようにそこにいたという痕跡すら残っていなかった。時間操作が関わっているからなのか否か。時間操作で思いだした。この世界に来てからは約2日は経ってるのか。一日が約百時間、それが2日だから200時間はここにいる。200時間だったらもうこの世界に慣れ始めてるくらいだろうが、今も慣れてない。今まで魔法なんて使ってこなかった現実から魔法が使える異世界に飛ばされた上にいきなりその魔法を駆使して心臓に結びついている能力コアを奪い合う。要は人を殺す。そんなのに慣れないのは普通だろうし、人を殺す事を慣れたくなんかもない。とりあえず帰って報告だな。敵になるかも知れない人の情報を掴めたんだ。重要な情報に違いない。
「悪い、戻った。さっき変な人に会って、絡まれてた。同じ転生者らしいんだけど、うん。とてもおかしな人だったよ。」
説明しようと思ったけどなんて言えばいいかわからない。なんせ言葉で表せるような人ではないのは確かだから。
「どしたんー?うちに話してみな。」
「あぁ、いや。そのなんて言うんだ、価値観が違うのかな。それとも言いたいことを遠回しで伝えるのが好きなのか。まぁ、いわゆる変人ってやつに出会ったんだ。」
「わかったことだけ私らに言いなさい。」
「…言っていいことなのか?相手の気持ちを裏切る事になりそうで。あいつはどうやら俺と協力したいらしくて自分から能力の開示をした。そしてどっか行ったんだ。多分新たな共闘相手でも見つけに行ったんだろうが、そんな簡単に見つかるかな。俺のせいで誰かに殺されるなんてこと起きたら俺は嫌だ。そう思うとあの選択はだめだったのかな。俺は、だめなことをしたのか。あいつが死んでないと良いけど…」
「自責やめなさい。これ以上深掘りしたって結論は出ない。今は生きてるか死んでるかわからない状態に、シュレディンガーの猫みたいにしてた方が楽よ。」
「わかった。そうする」
「優斗って誰も死なせずにいたいの?この世界で。ですよね~愛理さん。うちと同じ望みかもだけどうちと根本は違うね。いつか理想に殺されるときが来るんじゃないですかね。ま、うちは理想に殺されるんだったら満足だけど。最後まで果たせたしね。」
理想に殺される。確かにあるかもしれない。けど、俺は理想を貫き通す。それが今野優斗として生きる事。死はもう二度と見たくない、苦しいから。
「優斗が理想を貫くのは昔の出来事があるんじゃないかしらね。昔、不幸な事故で父親を亡くしたのよ。それから誰も不幸にならない世界を作るって理想を掲げるようになったわ。その頃は小学生だったし私も子供の頃は同じことを思ってた。私は現実を知って理想は折れたわ。そして今になった。」
「けど、理想持つこといい。それが動く動力源になる。」
「確かにその言い分は正しい。けど優斗は行き過ぎなのよ。てか起きたんだ渚ちゃん。」
「おー彼女が例の渚ちゃんかー。よろしく、うちは天野照。好きに呼んでね。」
「渚ちゃん来たしこの話は辞めよ。」
「なんでー?人多いほうが意見集まるしよくなーい?」
「理想を持てない人に聞くのは可哀想でしょ?渚ちゃん、理想を持てなかったのよ。」
「うちノンデリ過ぎたね。ごめん。」




