神勅
「あーそうだそうだ。王が勝手なことしたから優斗に世界のルール教えとかないと。もう知ってるかもだけど一応伝えとかないとな。」
「よっ、会いに来たぜ優斗。」
「お前は神!何しに来た!」
こいつの狙いは俺の排除か。なら攻撃準備を
「攻撃する意志はない。お前らの戦いの観客として愉しむだけだから。それとも何だ?オレとやり合いてぇのか?」
やはり、こいつは思考盗聴ができる。
「やり合うつもりねぇっての嘘だろ?本当は様子をうかがって殺す気だろ?」
「てめぇ少しは考えろよ。なんで助けたやつをわざわざ殺すんだ。」
「助けた?お前がはめたんだろ!」
「オレがお前を導いたから今お前がここにいるんだ。」
確かに、俺は死んでいた事を忘れてた。まずい、本当に神に殺される。
「まぁそう怯えるな。それに全員に勘違いされてっからもう慣れた。ハハッ、」
「じゃあ、なんで殺し合いさせる。全員帰らせればいいじゃねぇか。」
てめぇの化けの皮、剥がしてやるよ。
「全員帰らせたらオレにメリットがない。あくまで愉しませずに帰らせたらオレの力の無駄遣いだ。」
「それが本性か。」
「神なんて全員そんなもんさ。じゃあな。」
「おいてめぇまて!」
クソ、逃げられたか。次あったら容赦はしねぇからな。
「優斗なんかあったの?」
「あ、愛理。何でもない、気にしないでくれ。」
「そ、さぁて渚ちゃーんあんたの治療はすぐ終わるよー。」
はぁ、まったく何なんだあの神は。善とも悪ともとれない。はぁ、めんどくせぇ世界に来ちまったみてぇだな。
数分後、渚は改善したらしく戻ってきた。傷自体は無いもののあの男の能力で骨が折れてたらしい。
「じゃ、今日は街に出かけよ。これからの方針決めるのにちょうどいい人数だ。買い物ついでにな。」
「優斗、あんた本当に勝つ気あんの?あんた留年してなきゃ大学受験よね。受かって人生の夏休み満喫する気はあるの?それとも、ただの逃避行動?」
「俺は勝つ気でずっといる。けど、それ以上に人の死が怖いんだ。今まで人の死に触れてこなかったからさ。」
死、それは俺の周りには起こることが無く、初めて身近に起きた死が自分だったとはな。
「そ、勝手にしなさい。けど失わないための理想が返ってあんたの大切なものを奪ってく可能性があるのは考えておきなさい。」
沈黙が流れた。その沈黙は5秒にも満たないが俺の中では永遠に感じた。その沈黙を破ったのは渚だった。
「理想、あるだけまし。わたしは理想を持つことすら許されないで言うことしか聞けなかった。」
「渚ちゃん、あいつ庇う必要ないから。あんたはとりあえず自分がしたいことを見つけなさい。」
渚は静かに頷いた。顔は笑顔を作ろうとして引きつっていて目には光がなかった。ずっと、こうして理想を持てずに命令されたことだけを繰り返すロボットのような生活を強いられたのだろう。なら、なぜここに来た。未練が無いのならここに来れるわけない。そもそも神がここに俺たちを招待した。そのようなことを先ほど語っていた。『助けた』というのはおそらく俺らをこの世界に導いた事も言うのだろう。なら、渚は神に来てくれと頼まれたのか。だが世界には未練を残して死んでいった人たちはたくさんいる。そいつらを呼んだほうが戦いが激化して神は愉しいのではないか。あぁ、考えれば考えるほど結論が遠くに離れていく気がした。考えるのはやめよ、いつか分かる日が来ると信じて。
「渚ちゃんのこと知るために今日は街に出かけよ。いいよね渚ちゃん。あ、優斗には拒否権無いからね。」
「はぁ、まぁいいよ。それに渚を知る機会にもなる。断る理由がないし。」
「こっから街まで1時間くらいだから…転移使うわね。あんたら歯食いしばって!」
返事させる間もなく俺らは飛ばされ街に着いた。
「ダァっ!イッッッテェ。愛理!下手くそ!」
「あら?じゃあ1時間歩いて来る方が良かった?その場合この辺にいるかもしれない他のやつらに殺されるかもだけど。大体ねぇ、あんただけだよ着地ミス。渚ちゃんも出来てるし。」
また始まった。文句言いだすと止まらないんだよなこの人。適当に頷いときゃ満足するだろ。
「話聞いてないよこの様子。じゃ、ご飯食べいこ渚ちゃん。私この辺におすすめあるからそこにしようね。」
まぁだ文句言ってんのか。いつになったら終わるんだ。んー?どこ行くんだ?着いてくか。
「どこ行くんだ愛理。」
「やっぱり話聞いてないわこいつ。ご飯食べに行く。聞いてなさいよ。」
「すみません。反省してます。」
数分後、例の店に着いた。外見はボロボロ。この前泊まったゴキブリホテルに似た外見。けど内装はかなり綺麗でゴキブリなんてもちろんいなく、テーブルはホコリが乗っかっていない。流石はレストラン、清潔感はすごいのだな。
「私のおごりだから好きなの食べていいわ。好きなの選びなさい。」
「何でもいい。」
「渚ちゃん、何でもいいは無し。自分の意思で決めなさい。私はこのドラゴン肉のレアステーキにしようかな。」
「じゃあ、それにする。」
「え?渚ちゃんも同じのにするの?まぁいいけど。じゃあ優斗早く決めなさい。」
そんな事言われてもメニュー表は俺に選ばせてくれない。どれもおいしそうでまるですべて頼めと言ってきているようだ。適当に選ぶか。これにしよう。
「この牛肉のステーキで。」
「わかったわ。シェフ。ドラゴンのレアステーキ定食を2つ、牛肉のステーキ定食を1つ。これでお願いね。」
「承知しました。」
「珍しい肉があるんだなここは。」
「ドラゴン肉は弱い草食竜を使ってるから狩りやすいのよ。最近は養殖に成功したらしいわよー。知らないけどね。」
数分後、それぞれのご飯が届いた。牛肉は現実のとは少し違った味わいだった。肉が柔らかい点では同じだが少し魚のような生臭さがあった。しかしそれが肉の味とマッチしていて食欲がそそられる。あっという間に皿を平らげてしまっていた。
「じゃ、みんな食べ終わったし、会議しましょ。これからの方針を決めるためのね。シェフ、会議室の用意を。部屋の大きさは、4人部屋でいいわ。」
「かしこまりました。」
「ここ、会議室付きなのよ。ご飯食べたら無料で1時間貸し出しだからいいのよねー。」
会議室は結構広かった。カラオケの部屋より一回り大きく、中にはウォーターサーバー付きだった。水分補給も可能で非の打ち所がない部屋ともいえるだろう。これが無料で使えるなんてな。
「さて、今後の方針の話し合いでもしましょ。その前に、あんたら二人の出会いを聞かせて。異世界じゃなくて現実世界の出会いをさ。」
「出会ってない。互いに顔を見たことがあるだけ。」
「渚の言う通りだ。だからお互いほぼ初めましてだ。性格もわかんないしどんなのが好きでどんなのが嫌いなんてわからない。」
「へぇー、あんたら仲いいからてっきり付き合ってんのかと思ったけどそんなことないんだ。じゃ、話を今後の方針に切り替えましょ。」
「切り替えが早いな。ま、区切りがいいしな。」
「まず現状を話すわ。渚ちゃんはとりあえず私たちの味方をしてる。そして私と優斗は互いに共通の敵がいるから協力してる。あと優斗に貸し作ってあるってのもあるね。だから協力というより休戦同盟って感じ。だけど目的達成後も渚ちゃんに関してややこしくなるからこの同盟は今のところ目的達成後も続ける予定。これが現状、分かった?」
「あぁ、もちろん理解してる。」
「うん」
「じゃ、今後の方針ね。私たちは今のところ最初に倒すべき相手として富士見を置いてる。今後もこいつをターゲットにするでいいわね?」
「俺はいいけど渚はどうなんだ?」
「なんでもいいよ。」
「じゃ、富士見を倒す方法を考えましょ。出来れば殺さないで終わらせましょ、この優斗とかいう不殺を貫こうとしてる偽善者のためにね。」
はぁ、偽善者呼ばわりか。実際そうなのかもしれないがな。まぁいい、富士見を倒す方法の検討はついてる。厄介なのは不死身。そのせいであいつの魔法も代償がなしの技になっている。それなら渚の封印で能力を消してあとは耐久。血がなくなったタイミングでコアを渡すように言う。これならいける。俺はこの作戦を愛理に伝えた。
「その作戦の穴場が多すぎる。ちゃんと考えたの?まず弱い点その1。どうやって封印するつもり?近づかなきゃダメなのよ。その2、相手が簡単にコアを渡すと思ってるの?このコアはほぼこのゲームに参加するためのものといっても過言じゃないわ。その3、耐えるってどうやって?あんたこの間も耐えるとか言って3分も持たなかったじゃない。どうやって耐えるつもり?たとえ不死身がなくなったとしても3分もあればあんたなんか簡単に殺せるだけの力はおそらくあるわ。」
何も言えない。確かに弱い点が多すぎる。なら次の作戦を
「けど、今はこれ以外ないわ。渚ちゃん、近づけないかもだけど近づいてね。最悪私の能力で遠ざけるのはできるから。」
「わかった。」
「んじゃ、会議は終了か?」
「終わりね。これ以上話すこともないし無料開放の時間はとっくに過ぎてる。30分オーバーだから追加で500円か。足りないわ、誰か持ってない?」
「残念ながら手元には300円しかない。」
「200円持ってる。合わせれば足りる。」
「2人ともありがと~。じゃ、会計済ませてくるから外に出ててね。」
その頃、
「ねぇねぇ、うちと生前の時みたいに手合わせしようよ!」




