静止
「時間停止!悪いが、少しここで止まっててくれ。」
止めたはずの時間が動いたかのように優斗の周りに走る電流がテンプスに流れた。
「な、何だと!」
「お前、時間止められないんだな。今のでわかった、お前は時間を止めるではなく、時間を極限まで遅めるんだって。その証拠がお前の肌に焼け焦げた電気の傷痕だ。」
「手荒な真似はしたくなかったのだがな、仕方ない。少し痛いが我慢しろよ!」
「時間を止められないやつが俺に触れれるのか?それに、お前は俺を殺すつもり無いんだろ?殺意を前に不殺で勝てるのか?」
「可能か不可能かで言えば不可能だろう。だが、僕はそれを可能に変えて見せる。」
あぁ、愚かだ。とても、醜い。俺はそれで愛理を失ったんだ。愛理がいなくなってもこいつは不殺を貫くなんて、ただの抑止力だよ。過去の俺みたいな。そんなの、愚か者でしかない。
「そんなこと、出来るんだったら俺はとっくにやってた。けど、それを目指した先が愛理の死だ。そんなもの、望むくらいならここで俺の敵討ちとして派手に、無力感に蝕まれながら死ぬがいい。」
と、俺は無意識に口からこぼれていた。その声は、怒りというよりも、悲壮感の中に閉じ込められた叫びに似ていた。その発言を聞いたテンプスの目は暗く、輝きが消えていた。まるで、先程の希望がプチンと切れたような目だ。
「堕ちたな、君がそうなったのは僕の責任だ。僕がきっちり地獄に送ってやる。」
地獄に送る?俺をか?だが、あいつの目は本気だな。今まで俺と会った時、照と戦ったとき、変なポエムを言って逃がしてただけのアイツがか。敵討ちは、一筋縄ではいかないが、愛理に俺の本気さが伝わるはずだ。
「復讐、ここで果たす!」
「今まで復讐のために動いてたのか?なら、なぜ僕を狙う。」
「テンプス、てめぇがみんなを救出だとかほざいてるくせに愛理を手放したからだろ!それだけじゃねぇ、お前は俺の復讐を邪魔した!愛理を殺したやつと変わんねぇよ!」
「動機が明確になったな、やっぱ君に話し合いすることは難しいな。君とは話し合いで解決をしようとしてたが、少し手荒にする。君を無理やりにでも捕らえ、照たちのもとに連れて行く。それを今ここで受け入れるなら手荒な真似はしないさ。それすらも受け入れないなら最悪ここで何も果たせず死ぬことを覚悟するんだ。」
「そのセリフそのまま返させていただくよ!」
今セットしてる雷なら時間操作である程度遅くされてもスピードは出る、ならあいつには雷が最適だ。
「元素セット、雷。」
くっ、まただ。雷使うたびに腕が、痺れる。けど、使わなきゃあいつは殺せねぇ!動け、俺の腕!仕方ねぇ、静電気で持ち上げるしかない。
「どうした、威勢は消えたのか?なら、ここで捕らえる。」
テンプスが時間を遅め、近くに来た途端、腕は速く動いた。それも、今までにないくらいの速度で。
「てめぇのその時間にも対応してんだよ、はぁ、はぁ。ぐっ、」
電流を過度に流したせいで、俺の体で異変が起きてる。ただ、あいつが時間を遅くしてる中で、この速度での思考し、動けている。このくらいの異変、大したことない。
その時、一筋の風が吹いた。少し強めの風だったが、優斗の体には激痛が走っていた。優斗は先程の雷元素を使ったことにより、神経全体が活性化している。そのおかげで判断スピードが速くなったが、敏感になった神経で風に触れただけで痛む。
「雷と炎は危険、風はあいつに太刀打ち出来ねえ。水しか、ないのか。感電さえ気をつければ…元素変更、水!」
「なぜだ、僕が時間を遅めているのに、なぜ君は動ける。」
「さっきの雷で神経、筋肉などをすべて活性化させ、無理やり動かしてるんだよ。てめぇを殺すためなら、これくらい容易だ。」
「水、といったか!辞めろ!今すぐ解除するんだ!感電死するぞ!」
水以外を使ったら、おそらくこの上ない痛みに襲われるはずだ。水の包容力だけが、今の俺を救う。
「感電死か、そんなのどうってことない。お前を殺せるんだったら、いいさ。」
数秒の沈黙が流れた。
「……………時間停止。」
「させない、水よ!」
その瞬間、体に帯びていた雷が水と合わさり、感電が起きた。
「くっ、だが、こんくらいどうってことねぇ!てめぇも感電の餌食になりやがれ!」
「時間停止をさせろ!お前が死ぬぞ!」
「俺の命と引き換えにてめぇを殺すと先ほど誓った!覚えてないのか!」
体が、痛む。痺れ、触覚が薄くなり、視界は暗くなり、何も考えられなくなりそうだ。目の前の男を殺す、その本能だけが俺を動かしてる。眼の前の男が死ねば、俺の報復は終わりに一歩近づく。俺が死んでも、照にたくせば、愛理は報われるはずだ。だから、今この瞬間、あの男を、テンプスを殺す事だけを!
ビリッ
鈍い音がした。
「な、」
「まさか感電するとはな。時間停止。延命処置をさせてもらう。照との約束を果たすためだ、復讐相手に触られるのくらい我慢しろ。」
優斗の心臓は、止まっていた。




