堕落
「ギガルシ、お前は、本当に英雄なのか。英雄はこんな泥臭いのか。」
「貴様らにはわからんだろう。俺はやるべきことがあるのだ。」
「くっ、だが、今回はお前に殺されるなどしない。今ここで殺さなかったことを恨め。時は戻すことも出来ない、過去ではもう人は殺せない。」
「貴様、何を言っている。さっさと自分の村に帰れ。それとも、俺の加護が必要なのか?」
その瞬間、テンプスは消えていた。
「ほほう、貴様は能力者だったのか。それも、世界干渉型の。ふっ、次会ったときは貴様の望み通り殺してやろう。」
「あれ、あんたテンプスじゃん。あんた、うちを救いに来たの?でもその救いを提示してくんない?」
「君を、助けに来たわけ、ではない。救いは、もう、過去に殺された。」
「じゃあ、何をしに来たの。てか一回そこで座りな。」
「はぁ、はぁ、単刀直入に、言う。優斗を止めるのを、協力してほしい。救える人が減るが、救いをより多くの人に与えるには、必要だ。」
「わかった。これはただの目的の一致、だから信用はしてない。そこはしっかりね。裏切られるということも配慮しな。」
「理解している。」
「じゃ、早速だけど止めに行くよ。おそらくあいつは復讐をするために探し回ってる。ワープもないしそう遠くには行けないはずだし。」
その発言の数秒間、沈黙が続いた。その沈黙を打ち破るようにテンプスは口を開いた。
「作戦会議と行こう。僕はこう考えている。仲間だったら簡単に懐に入り込めるのではないか。」
「試す価値はある。私の方でやらなきゃいけないことがあるからその間、優斗を止めてて。」
そのやるべきこと、それはハザンを捕らえること。守るためでも、殺すためでもなく、優斗が殺さないようにするためのものだった。
「優斗の敵になってでも、うちらはやらなきゃいけない。でしょ?渚」
「うん、絶対に止めたい。初めての、本心だから、絶対に成し遂げたい。」
「君らのそんな計画に僕の命をかけろというのか。ふっ、君たちも結局は理想に動かされてるってことか。」
「うっさい、てさ優斗と違うから。あたしからテンプス、あんたに一つ言うことがある。どうしても止められないなら、あいつを殺して。」
沈黙が流れた。それもそのはず、テンプスから見たら照と優斗は仲間で、失いたくない人のはずだ。それを殺せ、というのはテンプスが果たすための目的とも、照の目的とも相違点が無数に存在しているからだ。しかし、目的には矛盾点は存在するが、ここにいる者の本心には矛盾がなく、むしろ合理的な判断だった。
沈黙が数秒流れたあと、テンプスは口を開いた。
「わかった、あの男がいなくても救いを増やせる未来を予測する。」
その頃の優斗は、
「がぁっ、はぁ、はぁ、なんでだ。なんで能力を使うたびに痛む!」
反動、なのか。けど、殺すにはこれほどの火力がないとやりあえない。あの仮面をはがして、素顔を晒させて殺す。そのためなら、痛みくらい、耐えてやる。
「優斗、戻ろ。」
「どうせ、それも誰かに言わされてるんだろ。渚、お前の本心ですら無い言葉に俺は揺れない。わかったら俺の前から消えろ、人形。」
「それは酷くない?渚っちの本心かも知れないのに?」
「そんなわけないだろ?あいつはいつも自分の意思もなく、ずっと愛理に合わせてきてた。そんな愛理が居なくなった今、照、お前に合わせてるだけなんだよ。」
「それが、あんたの本心ね。見ての通り壊れてる。あんた一人でとりあえずここはやっといて。うちらは優斗が狙ってる相手を保護してくる。」
「了解した。」
は、?嘘だろ。照が、あの敵と協力してる、だと?俺は、裏切られたのか?嘘だ、嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ!俺は、あいつらと共に生きるって決めたんだ。なのに、俺だけこんなに苦しい思いをしなきゃなのか?…やはり、すべての元凶はあのテンプスとあの黒い衣をまとったやつだ。そいつらは、俺の手で苦しみながら死んで貰わなければ愛理が報われない。
「お前は、ここで殺す。」
「言葉だけは達者だな。この前言っただろ?次あったら本気で殺しに行くと。」
殺す、か。
「お前は殺せない。どうせ、言葉だけなんだろ?お前の手を見ればわかる。」
「殺される覚悟があるからか、それともその運命を認めたのか。どちらにしろ死ぬ前まで威勢が良いのは良いことだ。」
「死ぬのはお前だけだよ。今の俺なら、殺せる。お前でも、誰でも。」
あいつの能力の予想は簡単。あのときいきなり消えたのは転移なんかでもない。そして、壁画と重ねればあいつは、時間操作。時間停止を警戒で問題ない。




