不死
優斗炎を腕にまとわせ、テンプスに攻撃をしようとした。今まで使っていた殺さぬように制御していた火力とは10倍もの威力を持つ確実に殺すための炎だ。
「君は僕に攻撃を通すことはできない。時よ、止まれ。」
その瞬間、世界は時が止まったと錯覚するほど時間の流れが遅くなっていた。時間の流れは確実に止められていない。だが、時間の流れの静止と差がないほど時間の流れは遅くなっていた。
(まだ確実に止められないか。これだけゆっくりにすれば問題ないか。いや、動と静自体の差があまりなくてもその2つには大いなる壁が存在する。やはり確実に止められるようにならなくては。)
今のテンプスからしたら優斗を殺せる絶好のチャンス。殺さない理由もないテンプスだが、本当に愛理が死んでいると確証が持てないテンプスは優斗を殺すことを辞めた。
「次会うときは殺す。その時まで君はやりたいことをしておくんだな。」
その瞬間、時が動き出した。テンプスは優斗の眼の前から姿を消していた。まるで時間が止まっていたかのように。
「時間操作か。壁画に描いてあったな。まぁいい、相手がどんなのであろうと俺は復讐を果たすためにお前を殺すからな、テンプス。」
(愛理の死体を探さなければ。愛理の痕跡は時間を遡れば見えるはずだ。ビンゴ、見つけた。)
その痕跡を辿り、痕跡が消えた。そして、そこでテンプスの目に写ったものはあまりにも残酷で信じがたい現実だった。
「嘘だろ、本当に死んでいたのか。守れなかった、のか。僕は何のために誰も殺さぬように立ち回ってたんだ。」
「言っておくが、我はそやつを殺しておらぬ。」
「富士見、何をしに来た。」
「汝を殺しに来たわけではない。この世界に死した人がいると風の噂で流れてきてな、それを確かめに来ただけだ。しかし、殺す気はなかったが汝の顔が我が殺そうとした相手を逃がしたやつと似ていてな。お前がその本人なら殺そう。」
「冗談だろ?君の目に殺意が感じられない。」
「それは我が死んでいるからではないか。」
「なら、なぜ生きている。死んだのならここにいるはずではない。」
「死んだら動かないという前提から違う。我が肉体は血も何もかもある。だが、その全てはコアが動かしている。脳すらもだ。そして、我が意思は全てコアにある。これならどうだ。」
「……つまり、コアが脳の働きをしていてコアで死体の再生と作動をしていると。」
「そういう事だ。つまり、殺意がないと言ったこの目も死んでいる目だからこそ感じないのではないか。」
「ほほう、しかし貴様、そのような情報をペラペラと喋っていいのか?」
その声がした瞬間、富士見の足元に一筋のレーザーが走った。
「汝は、ギガルシ!後ろからの奇襲は武士道に反する。」
「そうか、なら正面から貴様を殺せばいいんだろ?ゲートオープン!」
ギガルシの足元から冥界が展開され始め、テンプス、富士見、ギガルシを飲み込んだ。
「時よ、止まれ。」
(なに、止まらないだと。俺のこの結界はあらゆる能力を無効かするのか?いや、まだ結論を出すのは早い。)
「そこの男は何なんだ。先ほどから能力を使おうとしないが、まさか巻き込まれたこの世界の住人とでもいうのか。なら、大英雄である俺をその目に焼き付けておけ。」
「っく、」
テンプスは近づいてくるギガルシに何もすることが出来ず、冥界の端に投げ捨てられた。
「さぁやろうではないか。貴様のその武士道とやらがどこまでこの俺に通用するか。」
そう告げるとギガルシは剣を捨てた。そして大量のゲートを展開し、富士見の攻撃に備えていた。
「ハァっ」
富士見は走り出した。が、一歩歩くたびにゲートからレーザーが出てき、体が真っすぐに安定しない。だが、能力である不死身で進む事自体に問題は無かった。問題は、この数歩で富士見は5回は死んでいることだ。
「汝よ、その力は、なんだ!」
「俺の力か?それは、選ばれし英雄にしか得られぬもの、とでも言おう。これがあれば誰が相手であろうと俺が直接手を下さずにこのゲートのみで殺すことが出来る。まさに俺に相応しい!」
高笑いしながらギガルシは言った。
「汝、慢心しているな。」
そう告げた途端、体に剣を刺し、血を辺りに撒いた。そのひと粒ひと粒を剣にし、赤い剣の平原が広がった。
「我が城の中では汝の冥界であろうと解体は不可能だ。」
「ほほう、なら、解体不可能な城の解体ショーといこうではないか。貴様のその城、俺が確実に破壊して見せる。」
その瞬間、ゲートを大量に開き、そこからレーザーを放った。そして、剣のほとんどを破壊した。
「剣破壊に集中し過ぎて懐に我がいることに気づかなかったか?」
「気づいている。処理を必要としなかっただけだ。」
そう言ったギガルシは富士見の背中にあるゲートからレーザーを射出した。。が、富士見は両手に握った剣をギガルシに飛ばし、攻撃を受けたあとの隙を消した。そして手元にある剣を握り、また走り出した。
「やはり、富士見というのは厄介だ。だが、先程大量に展開していた剣はどうした?それがなきゃ貴様には俺に決定打を打てないだろ。」
「我が黙って壊されるわけがないであろう。」
刹那、壊れた剣がすべて血に戻った。しかし、その血は剣を造ったときとは明らかに量が減っている。しかし、質量は剣を造る前とは変わらなかった。血液が濃縮されている。
「我が究極の一太刀、汝が初だ。」
「ほほう?やってみろ」
見た目こそは変わらないものの剣の強度は数多の剣をかけ合わせたもの。どのような剣であろうと強度で勝ることは無いだろう。
「俺のレーザーを耐えるとは。貴様もやるな。」
富士見の剣はレーザーを破壊するだけでなく、ゲート、いや、冥界にすら傷をつけた。成す術なく距離を詰められたギガルシは最後のあがきでレーザーを放つがそれすらも剣で切られてしまった。
「これで、終わりだ!」
「ふっ、実に滑稽だ!」
その時、富士見の心臓に一本の剣が刺さっていた。
「貴様は考えが浅い。俺が守りを固めないわけ無いだろう。」
「だが、不死身の力で、ぐぁっ、」
「あまり前であろう。我が友が作った剣なのだからな。麻痺毒を持つ木の実から作ったんだ、貴様はそこで身体がしびれるだろう。」
「汝は、本当に、武士道が、無いのだな。地獄に、落ちるがいい。」
「負け犬の遠吠えか?まぁいい、貴様はここで退場だ。」
ギガルシは富士見の心臓に手を入れ、コアを取り出した。
「お前は、よくこんな非人道的なことを出来るな。それが大英雄なのか。………答えろ!」
「聞こえている。貴様はこの世界で何も知らずに魔王に怯えてればよい。そうすればこんな事も終わる。」
冥界は閉じ、普通の世界に戻った。しかし、富士見の死体だけは戻らず、冥界に残されたままだった。
「ここは、どこだ。我は、死んだというのか。不死身の体は、何処へ。」
富士見は心臓を撫でた。その時、心臓にコアが無いことがわかった。
(そうしたら、ここは冥界か。冥界は死者が行く場所。つまり、我はここからは出られぬということか。しかし、冥界でも意識は遠のいていくとは。我は、ここで、終わりか。)
「優斗、汝に託したぞ。汝が、やつを倒せ。」




