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異世界英雄譚  作者: テト
13/18

断絶

「お前は、理想を捨てろ。」

「お前は誰だ。」

「俺は、お前だ。理想を捨てろ。そして、奴に復讐を誓え。」

「殺さないよ、俺は。」

「お前が理想を貫けばこれからもっとたくさんの人が死ぬ。お前の理想が人を殺すぞ。」

「でも、俺は…」

「お前は、愛理に報いたいんだろ?なら、その腐りきった綺麗事は捨てろ。」


「優斗、大丈夫?さっき唸ってたけど。」

「悪い、やらなくちゃいけないことがある。」

思い出せ、愛理を殺したやつの顔を。……思い出した。黒い衣をまとった、あの女だ。

「どこへ行くの?うちらもついてく?」

「いい、これは俺だけの戦いだ。俺は、あいつを、愛理を殺したやつを殺しに行く。愛理が、報われるように。」

「それはだめ。君さ、愛理と約束したこと忘れたの?うちは覚えてるから言うけどさ、誰も殺さずに現実にみんなで帰るんでしょ?」

「もう愛理はいない。今さら帰る理由なんて無いよ。俺が今やるべきことは愛理の報復、それだけさ。」

「そう、なら今ここでうちと渚を倒してから行きなさい。」

「邪魔だ。氷よ、脚を凍らせろ。」

「くっ、渚っち、あいつを止めて!じゃないと本当に人を殺しかねない。」

「わかった。」

俺を止める、か。もう、愛理が死んでからこの戦いの歯車は回り出しているのに。回り出したものは止まらない、そんな事を知らずに、俺に人を殺させないように歯車を止めようとする。愚かだ。

「お前はここに残れ。どうせお前なんかじゃ止められない。人に言われることでしか動けない自分がない人形のみたいなお前はさ、邪魔なんだよ。」

「え、?」

「優斗、君は、変わったね。昨日の優斗は、どこに行ったの。」

「変わってないよ、俺は。どんな事があろうと、報復は辞めない。」

あいつだけは、許してはダメだ。俺から、愛理を奪ったんだから。

「そこで少し頭を冷やしてろ。そしたら俺が変わってないことがわかる。」

ワープがないと不便だ。報復に時間がかかってしまう。やっぱ、愛理は死ぬべきじゃなかった。


「主よ、渚の仲間を一人殺してきました。」

「よくやったハザン、やっぱお前は感情がない方が使えるな。けどさぁ、お前、一人だけじゃん。もう一人一緒にいるヤツとか殺せなかったのなんでだよ。」

「すみません、ですがコアの回収はしてきました。」

「まぁいいよ、次は逃がすなよ無能。」

そう言ったあとエスパスはハザンをまた殺しに行かせた。


あいつは気配遮断を持っている。だが、気配が完全に読み取れないだけで攻撃は当たるはずだ。なら、冷気を体の周りにまとわせれば殺せないはずだ。

「見つけた、主が言っていた獲物。」

ハザンはナイフを構え、心臓にめがけて跳びかかり、ナイフを刺そうとした。だが、優斗の周りの熱により居場所がバレてしまった。

「人の温度と冷気の温度が違うのを忘れたのか?暗殺者」

「くっ、バレたか。ならもう一度気配遮断で」

「逃さねぇよ。」

頭さえ掴めたらこっちの勝ちだ。このまま使えば。

ザクッ

っち、ナイフで反撃するか。なら、先に腕を凍らせて確実に殺せるように。

「貴様、離せ!氷を溶かせ。」

「黙れ、その口を閉じろ。」

俺は氷で口を塞いだ。うるさいのは黙ったが、まだ生きようと必死に抵抗をしている。

「お前は、愛理に抵抗させる隙すら与えずに殺したんだ。抵抗できるだけマシだと思え。元素セット高電圧で一気に心臓をとめる。息もできない状態で死と生の間で苦しみながら死ね」

出力、最大。

「っ、」

雷が、腕に、くそ。ここで殺さなきゃいけねぇのに、能力が反発してくんじゃねぇ。

「こ、れで、終わり、だ!」

そうして腕から電撃を出そうとしたとき、腕に力が入らなくなった。高電圧の電流が走ったことにより、腕が麻痺したみたいだ。

「くそ、なんで殺せねぇんだ。」

「そこまでにしておけ。それでは君が救われない。」

「テンプス、てめぇが俺に何の用だ。」

「そいつを殺したら君は救われない。君に何があったかわからないが殺すのは辞めろ。その行為が自分をいずれ壊すことになる。」

「てめぇにはわからないだろ、俺の苦しみが。それともお前はこいつの味方なのか。言え、早く!」

「そいつらの味方ではないし、敵でもない。とりあえずそいつを開放させた。君はもう殺すのをやめろ。」

いつの間に、いつだ。いつ俺の背後に回って氷を溶かしたんだ。いや、そんなこと気にする必要ねぇか。こいつは俺の報復の邪魔をする奴だ。殺さなきゃ、ダメだ。こいつがいる限り、あいつを殺すことは難しいだろう。

「お前も、愛理のために犠牲になれ。」

「戦うつもりなど一切ない。ただ犠牲を0にしたいだけだ。」

「犠牲を出さない、だと?そんなの言葉だけだろ。」

「本気だ。誰も犠牲を出さないことが、必要なんだ。」

「なら、ならなんで愛理を助けなかった!お前が助けてれば愛理は、救われたかもしれないのに。」

「今、愛理が死んだと言ったか。」

「死んだ。あの女に背中を刺されて死んだ。そして今、報復の時をお前に邪魔された。」

「まさか、目的が破綻したとは。まぁいい、別のプランを立てるしか。」

「どこへ行く。逃げる気か?己の責任から。愛理を助けられなかったことから。なら、今ここでお前を報復対象として殺す。」

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