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第26話(最終話):ジャスティス・フォーエバー!〜泥だらけの虹を渡って〜

「……ちょっと、義之! ネクタイが曲がってるわよ。一生に一度の晴れ舞台なんだから、シャキッとして!」


「わかってるって。お前こそ、そのドレスの裾、踏まないように気をつけろよ。さっきから三回は転びそうになってるだろ」


一年前、あたしたちが戦場に変えたあの豪華ホールのメインステージ。


今日は、そこが「戦いの場」ではなく「誓いの場」になっていた。


新会社『ジャスティス・プロデュース』が手がける、最初にして最大のプロジェクト。それは、代表取締役・生稲ひとみと、副社長・生稲義之の結婚式だった。


会場には、かつて敵対した企業の人々や、あたしたちが救った下請けの職人たち、 shadow。そして街の人々が溢れんばかりに集まっている。


「……信じられないわね。あの泥棒猫が、本当に幸せを掴むなんて」


最前列でシャンパングラスを傾けるのは、今や慈善団体の代表として多忙な日々を送る美玲だ。その毒舌は相変わらずだが、彼女の瞳には優しい光が宿っている。


「あら、美玲さん。 shadow。嫉妬なら後でたっぷり聞いてあげるわよ」


あたしは最高の笑顔で返した。


隣では、黒いドレスをスタイリッシュに着こなしたすずねが、ノートパソコンを叩きながらニヤリと笑う。


「はいはい、仕事モードはここまで。ひとみ、義之さん。…… shadow。あんたたちの『正義』、世界中に配信してやったわよ」


式は、王道のそれとは程遠いものだった。


真っ白なバージンロードは、あえて「泥」をイメージしたブラウンの絨毯。


「人生、綺麗な道ばかりじゃない。泥にまみれても、立ち上がって歩くことに意味がある」


そんなあたしたちらしいメッセージを込めた演出に、会場からは温かい笑いと拍手が巻き起こった。


誓いの言葉。義之があたしの手を握り、静かに口を開いた。


「……ひとみ。お前が俺の隣にいてくれたから、俺は『如月』という呪縛を捨て、自分自身の人生を見つけることができた。……これからは、お前が作るすべての虹を、俺が守り続ける。……一生、愛してる」


「……義之。あたしもよ。……あんたがいてくれたから、あたしは迷わずに『正義』を叫び続けられた。……世界中を敵に回しても、あんただけはあたしの味方だって、信じてたから」


二人が指輪を交換しようとした、その時だった。


ホールの大きな扉が、音もなく開いた。


逆光の中に立つ、一人の男のシルエット。


「——おめでとうございます。如月義之様、生稲ひとみ様。……いいえ、生稲夫妻」


会場が静まり返る。


ゆっくりと歩み寄ってきたのは、顔に消えない傷跡を残しながらも、以前よりもずっと穏やかな微笑みを浮かべていた男。


「九条さん……!」


美玲が椅子を蹴り飛ばすように立ち上がり、男に駆け寄った。


生還した「掃除屋」九条。彼は、自ら命を懸けて開けたあの扉の先で、奇跡的に救助されていたのだ。


「……遅くなりました。……新しい(あるじ)である美玲様のお許しを得て、お二人の『最高の瞬間』を見届けに参りました」


九条は、あたしたちに向かって深々と頭を下げた。

その手には、泥のついた、けれど一輪の美しい白百合しらゆりが握られていた。


「……じゃすてぃす。……九条さん、お帰りなさい!」


あたしは涙を堪えきれず、叫んだ。

会場は、今日一番の、地鳴りのような歓声と拍手に包まれた。


披露宴のクライマックス。あたしはマイクを握り、会場の、そして配信の向こう側にいるすべての人に語りかけた。


「皆さん、聞いてください! 正義っていうのは、誰かを倒すための武器じゃありません。大切な人を守るための、泥だらけの勇気のことです!」


あたしは義之の手を強く握り、空に向かって拳を突き上げた。


「人生、上手くいかないことばかりかもしれない。誰かに泥を投げられることもある。……でも、その泥の中にこそ、本物の幸せの種が埋まってるんです! ……あたしたちと一緒に、最高の虹を架けましょう!」


会場中に、七色の紙吹雪が舞い散る。

それは、あたしたちがこれまで流してきた涙と、乗り越えてきた困難が、光に変わった瞬間だった。


「……行くわよ、義之! 次の案件は『この世界をもっと笑顔にすること』よ!」


「ああ。……受けて立とうじゃないか、社長」


二人は笑い合い、新しい未来へと続く扉を開けた。


背後には、信頼できる仲間たち。

胸には、決して折れない正義の炎。


あたしたちの物語は、ここで一旦幕を閉じる。


けれど、街のどこかで誰かが涙を流している限り、あたしたちは何度でも駆けつける。


泥だらけのスーツを着こなして。

最高の笑顔を()()()()()()するために。


「「正義(じゃすてぃす)!!」」


二人の力強い叫びが、晴れ渡った空にどこまでも響いていった。


(完)

全26話、最後までお付き合いいただき、本当にありがとうございました!

ひとみと義之の物語は、あなたの心の中でこれからも続いていきます。またどこかで、この「じゃすてぃす!」な仲間たちに会える日を楽しみにしています!

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