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第24話:弔いの進撃と、正義の包囲網

「……九条さん、見てて。あんたが命を懸けて守ったこの命、一秒も無駄にしないわ」


豪華客船の沈没から三日。

世間では「事故」として処理されようとしていた。恵比寿の回した裏工作の手根は、警察やメディアの深部にまで及んでいた。


あたしたちの新しい拠点は、美玲が隠し持っていた「誰にも知られていないセーフハウス」……古い教会の地下室。


「恵比寿の資金源は、ダイコク商事が独占する物流インフラのキックバックよ」


すずねが、充血した目で複数のモニターを監視しながら告げる。


「あいつは、如月や高橋を潰すことで、この国の『食』と『住』のすべてを支配下に置いた。……でも、一つだけ計算違いがあるわ。……ここに、その『内情』をすべて知る女が二人も揃ってることよ」


美玲が、青ざめた顔ながらも毅然と立ち上がった。


「……私が出せる『高橋家』のコネクション。そして、如月グループの残党たち……彼らもまた、恵比寿に使い捨てにされた被害者です。……彼らに一斉に『反旗』を翻させますわ」


「よっしゃ……! 義之、あんたは?」


「俺は、如月家時代に繋がっていた海外の投資家にコンタクトを取った。恵比寿の不透明な資金洗浄の証拠を叩きつける。……あいつの帝国の株価を、紙クズに変えてやる」


あたしは、ボロボロになったスーツの襟を正した。


「あたしの役割は、一つ。……恵比寿幸夫という男の『仮面』を、全国民の前で剥ぎ取ることよ!」


作戦決行日。ダイコク商事の創業記念式典。


恵比寿は、数千人の社員と記者の前で、聖者のような微笑みを浮かべて登壇していた。


「……我々ダイコク商事は、この国の未来を担うプラットフォームとして——」


「——嘘ばっかりつかないでよ、恵比寿さん!」


あたしの声が、会場の音響システムをジャックして響き渡った。


ステージの巨大スクリーンが、すずねの手によって切り替わる。

そこに映し出されたのは、沈みゆく船の中で、冷酷に「誰を見捨てるか」を迫る恵比寿の音声と映像。九条が命を懸けて撮影し、あたしのスマホに転送していた「最後の証拠」だった。


「な、何だこれは!? 警備員、すぐに止めろ!」


恵比寿の顔が、初めて醜く歪む。


「無駄よ! この映像は、今この瞬間、美玲さんが動かしたSNSのネットワークを通じて、全世界に同時配信されてるわ。……あんたが『掃除』してきた人たちの叫び、全部聞こえてる?」


会場の外では、義之が呼びかけたトラック運転手や小売店主たちが、ダイコク商事の不当な搾取に抗議して、一斉にストライキを開始していた。


物流が止まり、システムがダウンし、ダイコク商事の株価チャートが真っ逆さまに突き落ちていく。


「……生稲ひとみ。……君さえいなければ、僕の世界は完璧だったのに!」


恵比寿はステージを降り、あたしに向かって詰め寄ってきた。その瞳には、もはや紳士の面影はなく、ただの狂った守銭奴の光が宿っていた。


「残念だったわね。……あたしの正義は、あんたの『完璧』なんてものに収まるサイズじゃないのよ」


あたしは一歩も引かず、恵比寿を指差した。


「あんたは言ったわよね、ビジネスは最後に誰が笑うかで決まるって。……見てなさい、あんたの周りには、もう誰も笑ってくれる人はいないわ!」


恵比寿が警備員に守られながら逃げようとしたその時、ホールの扉が開いた。

現れたのは、美玲に率いられた、かつての如月グループの役員たち。


「恵比寿社長。……あなたの解任決議、たった今、株主総会で可決されましたわ」


美玲が、氷のような微笑みを浮かべて告げた。


「……馬鹿な……僕の、僕の帝国が……!」


恵比寿はその場に膝を突き、崩れ落ちた。

彼の背後、モニターには、夕闇の海に沈んでいった豪華客船の、静かな波紋が映し出されていた。


「……ひとみ。終わったのか」


駆け寄ってきた義之が、あたしを強く抱きしめた。


「……ええ。……でも、九条さんは、戻ってこない」


あたしは、義之の胸の中で声を殺して泣いた。

正義を貫いた代償は、あまりにも大きかった。

けれど、あたしたちの手には、泥に塗れても決して壊れなかった「絆」が残っていた。


「——さあ、泣いてる暇はないわよ、二人とも」


すずねが、スマホを操作しながら歩み寄る。


「恵比寿は捕まった。でも、崩壊した物流インフラを立て直すのは誰? ……あんたたちの出番でしょ、ジャスティス・プロデュース」


美玲も、あたしの隣に並んだ。


「……生稲さん。……私と一緒に、この街を、今度こそ『本物の虹色(じゃすてぃす)』で塗り替えませんか?」


あたしは涙を拭い、目の前の三人を見た。

宿敵だった女。裏切り者だったライバル。そして、愛する幼馴染み。


「……よっしゃ! あたしたちの『()()()()()()()』、ここからが本番よ!」


あたしは、拳を高く突き上げた。


第24話、帝国の崩壊。

物語は、誰も予想しなかった「未来」へと加速する。

第24話をお読みいただきありがとうございました!

ついにすべての黒幕であった恵比寿の仮面を剥ぎ取り、帝国の崩壊へと導いたひとみたち。しかし、正義の代償はあまりにも大きく……。物語はいよいよ、残り2話。誰も予想しなかった未来へと加速します!


【次回予告】

第25話:希望の瓦礫と、海風のメッセージ

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