二十章 キリシア姫の外出
はてさて、見聞を許されるようになったキリシア姫。
キリシアだと名乗ると、「姫ですか?」と訪ねかねられないので、
「キーリー」と別名を持ちました。
キリシア姫は長い白髪で、根本を紫色に染めています。
一般人に紛れ、いくらかのお金を持つことも許されて、姫は楽しそうです。
そんな姫の様子をうかがっているように距離を保っている側近たち。
一般人に見えるように私服ですが、「姫」と言いながら涙をぬぐっています。
それを偶然聞き取った通りがかりの子供が、彼らの上物の靴を見てぎょっとします。
キリシアは占い師を見つけ、相談をすることにしました。
「教えて下さったら、いくらかお礼をするわ。これからどちらに向かうべきか」
占ったのはポコナミで、彼女は大水晶を前に言いました。
「近々花火のある夜会にご出席なさい。さすれば、運命は変わる。善い方向に」
しばらくの沈黙ののち、キリシアは言いました。
「死者のことも教えてもらったりできるかしら?」
「その者の名前は?」
「タカル・ファ・グライス・・・」
「その者との関係は?」
「きっと運命の相手だったわ」
「ほう・・・あなたは先ほど、死者のこと、と・・・それは誰のこと?」
「タカル・ファ・グライス」
ポコナミは首をかしげます。
「・・・・・・なぜ??」
「なに?なにについて見えているの?ねぇっ」
「お待ちを。お待ちを。天の意思により事情が読めぬ。ただ、言えと。生きていると」
「どういうこと?」
「まだ、死んでないってことさ。お嬢ちゃん、お名前は?」
「キーリー」
「・・・なんだってっ?」
「何が聞こえているの?」
ポコナミは驚きながらも、声をひそめて姫に言いました。
「運命の相手は生きています。あなたが勉学に見聞にいそしめば、会えます」
「分かったわ、ありがとう」
「お代はいりません。お会いできて光栄です」
キリシアは「ちょっと待っててね」と後ろを振り向き、歩き出しました。
すぐそこの角にいる側近たちに、言います。
「あの占い師にたっぷりと礼をしておいて」
「は」、「や」、と側近たちがかしこまったあと、はっとしました。
「姫、我々の存在に気づいておいでだったのですか?」
「靴が上物だったからでしょう?」
近くにいた子供に、姫はほほえみます。
「風にのってきた匂いで分かったわ。いるならいるで、何かあったら助けてちょうだい」
「は」、「や」と側近たちがかしこまりました。
側近のひとりが、ポコナミに礼を渡しに行きます。
「王宮でしか使わない香をたいた服じゃ、分かる者には知れるぞ」
「王宮の香?なぜ貴殿が知っている?」
「私はポコナミ、以前に姫を処置したことがある者だ」
「なるほど、容姿でも知れたか」
「あれだけの器量、目を離したらすぐにさらわれるかもしれないよ。よく見ておくべし」
「心地良く、重要な助言である。礼をはずもう」
「それならもらっておこう」
そしてもらったお金でポコナミは、
白いふかふかのパンと甘い紅茶を
周辺にいる貧しい子供たちに配ってやりました。
「誰がお金くれたの?」
「この国のお姫様だよ」
「ママ。あなたは素晴らしいよ」
そのへんで遊んでいたポコナミの子供が言います。
「あ、ママじゃなくて、お母上か。母上、子であることを誇りに思います」
「なんて可愛いんだろうね、今日はこのへんで仕事を切り上げて、一緒に食堂に行こう」
「やったー」
キリシアはその様子を少し離れた所から見ていて、
関心のために何度かうなずきました。
「素敵な女性だわ」




