十九章 魔法使いのいる街ウィンザー 02
サプリスカの肩に停まったフクロウ、カーキが言います。
「《あんた、誰?》」
「シュガーホール」
「《お話、して?》」
「ああ・・・どうしよう、そう言えば今執筆中だ」
「なんてことだ、とてもレアな時間だ。ぜひ立ち会いたい」
「文房具屋さんがどこらへんにあるか、ご存知ですか?」
「昼飯は食べたかい?」
「いえ、まだです」
「おごってあげるから、少し話をしよう?」
「文房具屋さんを、探すので、これにて、失礼したい」
「文房具屋のすぐそこに美味しい屋台があるのだよ」
「ぜひ教えてもらいたい」
サプリスカとその肩に乗ったカーキと共に、文房具屋に行くタカル。
サプリスカの言った通り案外と近くに食べ物屋の屋台があり、そこの席に座ります。
色々と並ぶ中、豆苗とベーコンの炒め物を食べた頃、タカルは執筆を終えました。
「できた、っと」
「聞かせてくれ」
「ん~・・・この食事分、おごってくれるんだったら」
「ほう、よかろう」
今回のお話の題名を、宝石魔女、と言います。
=====
むかしむかしある所に、美しさで有名な少女がいました。
毎日のように求婚者が現れ、求婚者はふられます。
少女は自分の美しい姿にも、豪華な花束や料理にも、
絵画にも言葉にも興味がありませんでした。
少女が好きな物は宝石。
それを知ったお金持ちたちが、
毎日のように彼女に宝石をプレゼントするようになりました。
子供を産んだ彼女は、宝石のことばかりで子育てをしませんでした。
やがて世界中ともよべる宝石は彼女のものになり、
年をとって美しさをなくし、
料理のよしあしひとつも語れぬ彼女はいつしか忘れ去られようとしていました。
そんな時、彼女は魔女に出会います。
美しいのは宝石だからと、自分の心臓を宝石に変えて魔女の仲間入りをしました。
「宝石に変えた心臓を取り出せば、お前の生は三日で終わりだ」
胸元に光る宝石を見る生活がはじまり、彼女はいちだんと何もしなくなりました。
いくばくか時は過ぎ、持っている宝石を少しずつ売ることになりました。
ついには宝石にした心臓を売り、宝石魔女は死んでしまいましたとさ。
=====
「・・・・・・ほーう」
「《ほーう》」
「おごってね」
「よかろう、それでな、何がきっかけなんだ?」
「何、なんのこと?」
「この話を思いついたきっかけは何なんだい?」
「あれは多分、黒魔女だ」
「・・・うんうん。うん?うんうん」
「魔女だとしたら、黒系統だ」
「ほうほう、それで?」
「あなた本当に魔法使い?」
「ほう、そうだった、証を見せてやろう」
「魔法を?今ここでがいい」
「じゃあ、それをこちらへ」
示したのはタカルが買った船の模型の入った瓶で、テーブルの上に置いてあります。
それを移動させると、胸元のポケットからハンカチを出して瓶にかけるサプリスカ。
いぶかしがるタカル。
サプリスカがハンカチを払うようにどけると、瓶の中の船模型は消えていました。
驚くタカルは、瓶を小突いてみたりします。
もう一度瓶にハンカチをかけて払いどけると、船模型は元に戻っていました。
「すごいなっ。ぜひ、お話の続きがしたいっ」
「君はもう、僕の弟子だ」
「それは分からない」
「店主、勘定。ここに置いて行く。シュガーよ、参るぞっ」
テーブルにお金を置いたサプリスカが指を鳴らします。
すると煙がボムンと立ち上がり、タカルもフクロウも荷物も、消えていました。
魔法使いサプリスカの姿もです。
残った勘定と皿を取りに来た看板娘が、「ちょっと多めにもらったよ~」と奥に言う。
もらっておけ~、と店の奥。
看板娘はご機嫌に、胸の谷間にお金を差し込むと、仕事に戻りました。




