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月花蜜水夜 ペリドティ・アルーア  作者: タカル・ファ・グライス
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十九章 魔法使いのいる街ウィンザー 01



「魔法使いのいる街か~、色々と楽しみだなぁ」


 少し強い日差しとも呼べるうららかな昼頃、ウィンザーに到着したタカル。


 露店が並ぶ市場のような通りで、街の始まりは早くも入り組んでいます。


「なにか、いわくありげなものとか、ないかなぁ?」


 昔の陶器や飾りなんかを置いている店頭に見入っていると、おしりに違和感。


「え?」


 振り向くと、タカルのおしりをわざと触っているにやにやした老婆がいます。


 その老婆が指につけた宝石をみせびらかし、示しました。


 タカルは大きくかぶりを振ります。


 それに対し、かぶりを振る老婆。


 そこに、一羽の鳩が飛んできて、老婆の頭にとまりました。


 それでも老婆が指輪を示すのに夢中で、店のひとが苦笑しています。


 タカルは、「頭の上に鳩がいますよ」と言う。


 そんなわけはない、と老婆が喋ります。


「いえ、頭の上に鳩がいます」


 見えとるんけ、とについて、見える気がします、とタカル。


 そこで鳩が鳴いたので、老婆は悲鳴をあげました。


「鳩はイヤだーーーっ、怖いーっ」


 頭の上の鳩を払おうと、老婆はあばれます。


 商品が落ちそうになって、タカルはそれを寸前で受け止め、素直に店頭に返しました。


 老婆はなにかぐちぐち唱えるように、その場を去りました。


 一息ついて、店のひとが言います。


「これも何かの縁だ。安くしとくよ」


「え、これ?」


「そう、壊れたら売りもんにならないんでね。半額でいいよ」


「え~、ありがとう。買うよ」

 

 買ったのは瓶に入った船の模型で、タカルは市場を抜ける路地から、広場へ。


「平和の象徴として鳩でも書こうかな」


 模型をよくよく見たあと、いわくかぁ、とぼやくタカル。


「そうだ、宝石とかどうだろう?・・・宝石魔女・・・うんうん、いいかもな」


 ベンチに座り、その場でノートを広げて執筆を始めるタカル。


「新しいノートがいるなぁ。文房具屋は近くにあるかな?」


 そこに、フクロウが飛んできます。


 フクロウは足に本を持っていて、タカルの側に落として飛び去りました。


「なんだ?」


 拾って中身をぱらぱら開いてみると、それは白紙の本でした。


 辺りを見渡しても、本の所持者がいる様子がありません。


 しばらく考えて、「もらってもいいのかぁ、これ?」とタカルが言います。


 近くにいたひとに相談してみると、「もらってもいいんじゃないの」と言われます。


 駐在所を見つけ届けると、「引き取ってもらってもいいよ」と駐在。


 そこまでしたからには、もらってもいいのかもしれない、とタカルは思いました。


 さっそく、拾ったノートにメモをします。



 夜の葉の香りは


 まるで月明りの蜜だ



 《ほう、君は誰?》


 

「え?」



 ノートに、文字が勝手に浮かんで来ます。



 《このノートは私の持ち物だ》



「・・・ほう」



 タカルはノートに文字を書き入れます。



 僕はこのノートを偶然拾った者です。


 あなたは魔法使いですか?



 すると返事の文字が浮かんできます。



《そう、魔法使いだよ。名前はサプリスカ、君は誰?》



 名前 シュガーホール。



《とうとう見つけたぞ、うわさの少年。ぜひ対面したい》



 あやしいなぁ。


 黒?白?



《私は白魔法の魔法使いだよ》



 最寄りの駐在所に、あずけておきますので。



《すぐに、取りに行くから》



 ボムン、と音がして煙が立ち、そこには長い髪の美青年がいました。



「いや~、すまなかった。拾ってくれてありがとう」


「サプリスカ?」


「ああ、そうだ」


 ノートを渡し、タカルが言います。


「あのフクロウは知り合いか何か?」


「私の飼っているやつで、名前をカーキ、と言う。賢いいい子だ。ちょと喋る」


「ああ、そうなんですか。じゃあ、僕は用事があるので」


「カーキ」


「《ん?なに、サプリスカ?》」


「事情が変わった」


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