十四章 旧世代からの悪臭 01
タカルが滞在した次の街はカルミアシュロ。
タカルはすぐに、その街の異様な匂いに顔をしかめました。
関所の番人に事情を聴くと、水路が真夏日に匂いだしたとのこと。
街のひとは安全な水の確保をする元気も、なくなってきている、と。
ここしばらく雨も降らず、水路を汚す犯人も、なかなか捕まらないと。
どんな顔なのか聞いていないかとタカルが訪ねたので、心当たりを話す番人。
タカルは絵が少し上手で、その犯人の特徴を紙に描いてみました。
ハルシオン王国は、文字の読み書きができないひとが集まる街もあります。
カルミアシュロはそのほとんどが文字の読み書きができません。
タカルはそれを、聞き知っていました。
「器用だなぁ」
「この顔に見覚えはないか、目立つところに貼りだしておけばいいんじゃないかな」
「なるほど、ありがとう」
「いえいえ」
「君、シュガーホール君じゃないのかい?」
タカルは自分を呼び止めた美青年にぎょっとして、しばたきます。
「どなた?」
「初対面だ」
「すごい、いい服、着てるね」
「君もね」
「どこのひと?」
「歌手として営業周りをしている」
「お名前、聞いても?」
「パサートヴァリアント」
「聞いたことあるよ、アロの街で、その名前」
「光栄だよ」
「こちらこそです。ぜひ、お時間いただきたい」
三十代のパサートヴァリアントと、まだ十代のタカルですが、話は盛り上がりました、
パサートヴァリアントに俳句というものを教えてもらい、感動するタカル。
あとで紡いでみよう、と少し陽気を取り戻しました。
そしてタカルはパサートヴァリアントに、真剣な話があると言われ、場所を移すことに。
そこは旅人限定のホテルで、偶然タカルが宿泊する場所でした。
偶然通りがかった、眉毛を弓型に引いた客室係がタカルを見て言います。
「この男娼がっ、目を合わせてくれるんじゃないよっ」
かんだかいその声はどこかこもっていて、タカルは嫌な気持ちになりました。
「客室係のゴダ・ゴーダ、だ。
読み書きができる件で、コネでここに努めているらしい。
気にするな、減給してもらう」
パサートヴァリアントがタカルをなぐさめます。
「最近はここに滞在しているんですか?」
「そうなんだ。ここが俺の故郷さ」
「え?」
「俺は貧民街の生まれで、ここ、カルミアシェロが故郷なんだ」
「そうなんだ。もしかしてそれが、本題にかかわっているんですか?」
「そうかもしれない」
「うん、なんだろう?」
「いつの間にかこの街で、俺の子供を産んだ女がいる」
「うん、それでなんで僕に相談をするの?」
「君は、私より若くあるのに六人も子供がいると聞いている」
「ああ・・・なるほど、それで?」
「金髪なんだ・・・」
「ん?」
「俺の小さい頃にそっくりな顔なんだが、母親もそうでないのに金髪なんだ」
タカルは部屋に通され、まだ名前をつけられていない三歳の女の子に出会います。
「僕は、物書きさんだよ」
「こんにちは。いい風が吹くかもね」
パサートヴァリアントが、不思議な子なんだ、と言います。
まだおおやけにしていない、昔作った俺の曲を知っていたんだ、と。
本当に俺の子供かもしれない。
ただ、母親が金髪であることを薄気味悪いと言って、育てないんだ、と。
「物書きさん、お話をして?」
まだ名前のない幼女は、無邪気にタカルになついています。
「そうだなぁ・・・ライオンの話なんてどうだろう?」




