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月花蜜水夜 ペリドティ・アルーア  作者: タカル・ファ・グライス
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十二章 タミュの策略



 アルミリオン城の血液検査官に、報せが来ました。


 タカル・ファ・グライスが、生きていると。


 一体どういうことなのかまだ分からない城の者達は、早馬を出しました。


 グライス村の村長が書をしたため、返事をします。


 そして、もうひとりのタカルがいたことを、城の臣下たちは知りました。



 あの奇特な血、タカル。



 グライス村のなかなか近くにある街の医者が、見聞の旅人になるそうだと証言。


 そして早馬の臣下は、文字の読み書きができません。


 契約書を見ても、読めないのだから仕方ありません。


 とにかく確認をとりたいのは、タカル・ファ・グライスが生きているかどうか。


 気持ちが沈んでいた城は元に戻り、この事情を姫にはまだ秘密にすることにしました。



 姫が輸血をしながら、側近に聞きます。


「この血は、誰のものなの?」


「わたくしめは存じません」


「そう・・・」


 姫が聞き出そうとするだろうからと、姫の側近にも、事情は秘密でした。


 

 一方、姫のいいなずけのひとりになったファグライス・タミュは、


 遊女をはべらせ昼間から酒をかっぱらっています。 


 そこに、舎弟のウリズンがやって来ました。


「ファグライスの兄貴~」

 

「どうした、何かいいことでもあったか?」


「ファグライスの兄貴は、タカルって名前と関係ありますか?」


「んん?どうだろうな、なんの話だ?」


「僕のパパ、お城の血液検査官なんですけど、奇特な血はタカルって言う、って」


「ほう・・・それで?」


「タカル・ファ・グライス、って言うんだそうです。何か関係あります?」


「タカル?」


「タカル」


 タミュは両手で自分の胸元を示しました。


「タカル・ファグライス・タミュ」


 少し間を置いて、ウリズンが叫びます。


「やっぱり、兄貴がタカルなんだ~~~っ」



 側にいた遊女が酒をつぎながらが言います。


「噂みたいなので聞いたけど、彼、子供が六人いる十四歳らしいわねぇ」



「すぐに城に知らせてくれ。タカルという名前に罪人がいると」


「なぁんだってぃ、すぐにパパに会いに行く~」



 走って遊郭の部屋を出ていくウリズンの後ろ姿が見えなくなった頃。


 ファグライス・タミュはその状態を、ふふん、と鼻で笑いました。


「こちとらの都合が通れば、あわよくばタカルは死刑だ」


 

 グライス村のなかなか近くにある街は、アロ。


 そのアロとは別の街ダントエルに到着したタカルは、関所で通せんぼに会いました。


「なぜ?」


「君、名前をなんと言ったかな?」


「タカル」


「ちょっと、署まで来てもらう」


「なにかあったんですか?」


「王宮が、タカルという名前の男に警戒中なんだそうだ。なんでも子種の件で、はらんだ女がいる筈のタカルと言う名前を探しているだと」


「この街にはタカルと言う苗字が多いって聞いてるけど・・・そうなんだ、なにがあったんだろう?」


「君、苗字ある?」


「シュガーホール」


「子供が六人いる、十四歳の?」


「僕は十四歳のシュガーホールだけど、なに?」


「国の決まりで、結婚は十五歳からだ」


「それは知ってるけど、何?」


「君、ちょっと捕まえようね」


「は?」



 こうしてタカルは国のシステムである、仮務所の部屋につれて行かれました。



 そこは格子檻がついた大部屋で、二段ベッドがあります。


 指定されたベッドに腰かけて、タカルは深いため息を吐きました。



 同じ部屋の容疑者たちが、何の疑いかかっているの、と聞きます。


 僕たちはタカルっていう名前で、容疑がかかっている、と。


 僕の名前もタカルだよ、とタカルは言います。



 やって来た看守が言います。


「調べたところ、シュガーホールという苗字にタカルはいない」


「僕はグライス村の出身だから、タカル・ファ・グライスでもあります」


「・・・証拠は?」


「ううん・・・」


「証拠が見つかるまで、ここにいてもらう」



 なかなか『奇特なタカル』としての証拠が思いつけません。


 数日仮務所にいる間に、タカルは「無罪檻」というフレーズを思いつきました。


 無罪檻は、無罪の者が間違えられると不思議な力でそれを拒否する檻です。


 奇特なタカルのその話に、この街には多い『苗字タカル』たちが、ここにいたら無難、だと言います。

 

 その感想に、タカルは少し笑ってしまいました。



 シュガーホールのノートを取り出し、お話をしてあげるタカル。


 彼らは、滝を昇る鯉、という話が好みだと言いました。



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