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月花蜜水夜 ペリドティ・アルーア  作者: タカル・ファ・グライス
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十一章 アスカと言う朱い鳥 02



 タカルは街の普段歩かない道を歩いてみて、少し戸惑いました。


 山吹色の柱の飲食店を、初めてみたのです。


 それは、春を売る場所、という言い方でなぜか知っている、売春宿という店でした。


 そこの呼び込みはまだ少女で、タカルを見つけて商売用の笑顔を向けました。


「ここの魚料理は美味しいですよ」


「君は、カムロなの?」


 カムロとは、遊女に仕えることで体を売らない役割のことです。


 ハルシオンでは、正式名をカムロディータと言い、通称がカムロです。


「なに、わたしを買いたいの?」


「いいや、ちょっと話がしたい。僕は物書きになる予定の者だ」


「それなら、息子の様子を見るって理由でお話してあげてもよくってよ」


「ありがたい」


 カムロだと思った少女には、よちよち歩きの年頃の息子がいるそうです。


 店の者が、置屋に向かう少女とタカルを見つけます。


「カムロディータが、客をとるのかい?」


「息子の父親かもしれないの」


「ほう、それなら仕方あるまい。会わせてあげなさい」

 

「ありがとう。少しの間、抜けます」


「仕方ない」


 カムロは名前をアベンデールと言い、彼女の息子の名前はアベルと言います。


「物書きさん、お願いがあるの、寿命の短い息子のために、楽しいお話をして?」


「なるほど、分かったよ」


 アベンデールの息子は父親不明で、そして体が弱く寿命が短いそうです。


 同室の女の子たちもまだ時間があるので話を聞きたい、とのことでした。


 普段人見知りのアベルも、なぜかタカルにはすぐになつきました。


 奇特でひとのいいタカルの話し方に、少女たちは素直に好感を持ちました。


 そして、こんなに心地のいい話をしてもらえたのははじめてだから、


 お礼に「私達の花を咲かせてあげてもいい」と言われました。


 タカルは、遊女についてのお話を思いつきそうだから、作ってもいいか尋ねました。


 了承を得て、タカルはその了承がお礼でいいから、と言って置屋をあとにします。


 

 そして数時間後、宅配で店に花束が届きました。


 アベンデールの同室の、お腹に子供がいる少女たちに、タカルが花束を贈ったのです。


 高価なユリの花の花束に、タカル直筆のメッセージカードがついています。



 【親愛なる者達へ ただひとひらに想いを込めて伝えます。心に花を】



 アベンデールに、息子のアベルが聞きます。


「このお花くれたひと、パパなんだよね?」


「かもしれないわ」


「分かった。それでいい」



 街を出て行こうとするタカルに、追いかけてきた店の者が言います。


「そんなわけはないが、みなが君の子供を産むと言っているぞ。父親は別にいるが」


 奇特なタカルは、少し悩みました。


「よく分からない」


「悪いようにはしないから」


「よく分からないけど、彼女たちのためになるんだったら、父親でいいよ」


「君は男だ」


「まだ、知らない」



 シュガーホールと名乗って街を出て、タカルは旅の目的を、見聞に定めました。


 きっといい出会いだったんだ、と、タカルは少し元気を取り戻しました。


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