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S級転生チケットを盗まれたので、アメーバからやり直します!  作者: しゃじなっぽ
第1章 アメーバになった老人

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12話 アメーバ、戻る

時は少しだけ過ぎ、ここはとある校庭の池の中。


フフフ。

もうお前に逃げ場はないぞ!

僕たちは、あいつの進路を完全に塞いでいた。

そう。

宿命のライバルである、ゾウリムシ君だ。

フフフ。

君はまだ、こちらに気づいていないのだろ?

こちらからは全て見えているのだよ。

「いけ!分体1号!2号!そっちにやつが行ったぞ!」

分体2体は左右へと別れた。

その隙間を縫うようにモゾモゾと、ゾウリムシ君は進んで行った。


実は、暇だからひたすら分裂していた。

そこへ、通りすがりのゾウリムシ君が来て。

通せんぼしてしまったんだ。

だから【思念因子】を使って、分体に道を開けてもらったんだよ。

何の理由もなく、殺生したらダメだからね。


分体とは、僕が分裂した時の片割れ達の事だ。

以前、分裂した時に意識がどっちにあるか?という疑問があった。

結局、僕の記憶は分裂した時に、両方にはない。

ということがわかった。

とはいえ、どちらが元になった体かは、わからないけど…

それでも、思念因子のおかげで、僕から分裂した血統のある分体には意思を伝達できる。

それにより、ある程度の動きをお願いする事が可能になった。


そして驚くことに、周囲の状況がわかるようになっていた。


何故かと言うと【走電性】というスキルがLv.10、カンストしたことで格段に機能が上がった。

その効果で、微弱な電気を感じて、周囲の状況を索敵することができるようになったのだ。


このスキルはオオアメーバになった時に覚えたのだ。

最初は微弱な電気を感じるだけの地味なスキルだった。


スキルのレベルは、同じスキルを持った種類に何度か転生することで上がっていった。

そして、確か960回目の転生くらいでこの走電性がカンストした。

もっと早い段階で、周囲の状況が見えていれば…なんて嘆いても仕方ないな。


そんな調子で、かなり多くのスキルをカンストさせてしまっている。


え?960回?と思っている人もいるかもしれない。

そう。実は今は1000回目のアメーバライフを送っているんだよ。

次の転生は1000回目のキリ番転生。

どんなレアな種類になれるだろうか?

と、相変わらず喋る相手がいないのでぶつぶつと1人で語ってしまっている。


そういえば、会社を定年する時に思ったな

「あとの人生は、ゆっくり過ごせるなー。」なんて。

だけど、何かにつけ元部下たちが相談に来たりしたな。

ばあさんも同じ会社だったから、彼らも相談に来やすかったのだろう。

孫たちが休みになれば遊びに来たり、そのうち孫も進学や結婚。

なんだかんだ、忙しい日々だったな。

でも、今は時間に追われることはないが、命の危機に日々、追われる感じだ。

休まる日なんて、なかなか来ないもんだね。


そんなこんなで、ある程度の周囲の状況はわかるようになった。

だけど、ミドリムシさんを助けるなんてイベントは発生しなかったな。


などと思っていると、上空に大きな影が現れた。

そして吸われ、吐き出された。

地面に押しつけられるような感覚。

身動きがとりづらいが必死に、もがく。

上空から何やら熱い視線を感じるぞ?


少しして小さな衝撃の後、暗闇の中に放り込まれた。

そしてシスト化した。

これは初めての経験だ。


いつも通り、状況を考えるか。


起きたことを整理していく。


あれか?理科の実験で観察されてたか?ということは?

スライドガラスは、捨てないから…

カバーガラスが割れて捨てたか?

「みんなのお金で買った大事な備品なんだから、大切に使いなさいよ!」

聞こえるはずもないが、観察していた人を叱ってみた。


案の定、そのあと衝撃があった。

ガラスが割れる感覚に揉まれていくうちに僕は死んだ。


さあ、次は何に転生する?

なんて思いながら、すぐさまステータス画面を開いて待とうとすると

『死亡を確認しました。…1000回の死亡。条件を達成。固有スキル【折れない心】の覚醒に挑戦します。』


その声に、ハッとした。

ステータス画面をまじまじと観察する。


オレンジに光るステータスが明滅を始めた。

その刹那、明滅は途絶え、真っ暗な世界に戻った。


静かな無の時間が流れる…

その闇の中に


カリカリカリ、カリカリカリ…カリ…

…チチチチチチチチチ


機械式時計が巻かれ、動き始めるような音がした


チチチチチチチ……チ…


ゼンマイが最後の一時を捻り出すように…音が止んだ


瞬間、目の前が光り始めた。

今までとは違う金色の光だ。

暗闇な向こうから次々に集まってくる光の粒子。

その中の一粒一粒には、1匹のアメーバが映し出されている。

それは、僕の1000回のアメーバとして生きた記憶。

生きてきた証が映像となって流れている。

走って、走って、潰され、食べられ、また走って、だけど焼かれて…

それでも…何度も、何度も、何度も、生きて、生きて…

そして、死んでいく記憶。


そんな記憶の光る粒達が、目の前の一点に集まる。

あたり一面が金色の空間になった。

輝きが落ち着いた時には、目の前に金色の文字が映し出された。


【不屈のスキル】


続けてあの声がこう告げる。

『覚醒に成功しました。【折れない心】はエピックスキル【不屈の心】へ覚醒しました。固有スキルの覚醒により、徳ポイントを「1」獲得。これにより輪廻転生の輪に帰還します』

そう、告げられると金色の文字が消えた。

瞬間、周囲は白い光につつまれ、視界を奪われた。

・

・

・

(…懐かしい感覚だ…)

下を見るとそこには何度も履いた革靴。

その上には、少しくたびれた茶色いチェックのスラックス…脚がある。

そして、同じ柄の袖から見える右手と左手。

その手で確かめる。

口元、目尻、額に刻まれた深いシワ。

その上には細く柔らかくなった、後ろ向きに整えていた髪…

懐かしい…

「…僕の身体だ。」


目の前には区役所のような建物。


「…は、は、はは。」

あまりの出来事に混乱しながら、僕は笑った。


建物から1人の女性が、慌てて出てきた。

走りにくそうなハイヒールで息を切らせて…


この人も、見覚えがある。


僕の前で、息を整えようとしている女性。

頬は少し赤く、うっすらと額は汗をかき始めている。


僕は、一度目を閉じた。

その後、ゆっくりと微笑んで、こう言った。


「また…お願いしますね。シー子さん。」


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