10話 アメーバ、100回
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『死亡しました。43回目の転生を行います』
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ようやくスキルを、ひと通り把握することができた。
数個しかないスキルの内容を確認するのに、なんでこんなに時間がかかったかって?
舐めてもらっちゃ困るよ。
ジジイの学習能力を!
昔のことならよく覚えてるんだけどね。
新しいことはすぐ忘れちゃうんだよ。
そのせいで、覚えられなかったから、もう一度!
って、光に突っ込んで行ったことが何度あったことか。
そんなこんなで、判明した僕のスキルがこれだ。
【折れない心】
1.記憶保持
これは前に説明した通りの効果だ。
2.スキル定着
転生時には、稀にスキルを獲得する可能性があるらしい。
その時に、サブスキルスロットにあるスキルを魂に定着させる。
すると、サブスキルスロットが空く。そうする事で、新たなスキルを獲得できるようになるらしい。
このことから推測すると、普通ならメインとサブ、2つしか持てないスキル構成のはずだ。
だが、僕だけは無限に獲得できるかもしれない。
これは、本当にアメーバTUEEEの時代がくるかもしれない。
3.精神耐性
言葉の通り外部や内部からの、ストレスへの耐性が強くなる。
それと精神干渉のレジストがあるらしい。
精神干渉、レジスト。
まさに転生っぽい。でも、誰と戦うんだか。
【変身Lv.1】
やはりこれはアメーバの特性に近い。
自分の形を自由に変えたり、環境の変化に対応するためにシストという形態に変化する。
このシストの状態は、膜に覆われて休眠状態になるようだ。
これはパッシブスキルのようで環境に応じて自動で発動するらしい。
【状態異常攻撃Lv.1】
これは赤痢アメーバの時に覚えたスキルだ。
対象の体内に入ると自動的に発動して、病気などの症状を起こすらしい。
正直使いたくない。だけど、これもパッシブスキルで制御できない。
また、気付いたのだが、
サブスキルとして覚えるものにはレベルがある。
なので、何かのタイミングで強化できるのではないかと思う。
以上が、何度も何度も光へ突進していった結果だ。
なかなか、将来性のありそうなスキル構成な気がする。
だけど、やっぱりアメーバなんだよな。
ステータスや体の動かし方など確認すべきことは、ひととおり終わった。
そろそろ、本来の目的である「徳」を積む事を考えよう。
徳を積むという事で思い浮かぶのはこうだろう。
1.誰かの役に立つ
2.誰かを幸せにする
3.ゴミ拾いなど人の嫌がる事を率先してする
…誰のために?何を?どうやって?
整理して考えるとこれがどんなに困難かがわかった。
まずは、誰かがいないのだ。
いないというか認識できない。
視界が確保できて意思疎通ができれば、こんな出来事もあるのだろう。
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「あ!あんなところに、みどりむしさんがいる!こんにちわ!みどりむしさん」
「あー。こんにちわ。あめーばさん」
「今日はいい天気ですね」
「そうだねー」
「そういえば、さっきから困ったような顔ですが、どうしたんですか?」
「そうなんだよ。昨日から鞭毛が何かに潰されてて動かないんだ。」
「あっ!ほんとだ!石ころのかけらに挟まってますね。よいしょ。よいしょ。」
コロン
「わぁ!動けるようになったよ!ありがとう!あめーばさん。助かったよ」
「いえいえ、お気になさらず。良かったですね!体に気をつけてくださいね!」
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…なんてことで徳がつめたかもしれない。
だけど、意思疎通どころか本当に何も見えない。
これは老眼鏡があっても厳しそうだな…
こんな風に、どうやって徳を積むかを考えているうちに、時間はどんどんと過ぎていった。
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そしてついに大台へ突入する。
『死亡しました。100回目の転生を行います。』
あれから、自滅以外でいうと。
潰されたり、焼かれたり、食べられたり、凍ったり、食べられたり、食べられたりと。
様々な死の体験をしてきた。
ステータス画面を開きながら、
「とうとう100回目の転生か。」
と感慨にふけっていた時だった。
『100回目の転生のため、種別抽選時のレア種別の当選確率が上がります。…抽選終了。種別抽選の結果、転生先がレア種別[フォーラーネグレリア]へ確定しました。メインスキル【折れない心】の効果により、サブスキル【状態異常攻撃】の定着を確認しました。これにより、サブスキルスロットの開放を確認。スロットの開放の結果、種別スキル【侵食】を獲得しました。』
その瞬間、スキル画面が変わっていく
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個体名:なし(海部陸太)
種族名:フォーラーネグレリア(100回目転生中)
転生済みレア種別:赤痢アメーバ
メインスキル:【折れない心】
定着スキル:【変身Lv.1】【状態異常攻撃Lv.1】
サブスキル:【侵食Lv.1】
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おっ!種族名やスキル欄が変わってるぞ。
思っていた通り、スキルが増えてる。
きたぞ!きたぞ!それに今回のスキルは何か強そうだぞ!
そんな期待に胸を膨らませながら、素早く手慣れた操作で【侵食】の詳細を確認する。
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【侵食Lv.1】
対象の中枢神経を侵食し、スキル及び記憶情報を解析する。
その後、高確率で対象の中枢神経を破壊する。
※レベルが上がることにより…
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途中まで読んだところで、ステータス画面が閉じられた。
転生が完了したようだ。
え?このスキル危なくない?
僕はドン引きしていた…
相手の情報読み取るというところは、解析とか鑑定とか定番スキルみたいだけど。
なんでその後、中枢神経を破壊するの?
中枢神経って、脳とか脊椎とかでしょ?
死んじゃうでしょ!相手が。
それにそういう「デス系」スキルって、低確率発動がテンプレでしょ?
高確率ってヤバすぎるだろ!
僕は獲得してしまったスキルに恐怖を覚えていた。
その時、もう一つの違和感があった。
「フォーラーネグレリア…」
どこかで聞いたことがある名前だ。
記憶を辿る。
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「脳食いアメーバ」
…そうだ。
娘の優月がよく見ていた。
世界の珍事件やウイルスとかをドラマ形式で紹介する番組。
あれで見た危険なアメーバだ。
確か感染した時の致死率は、90%以上とか言ってなかったか?
やばいやばい!
こんな種族のまま生きてたら、徳を積むどころか誰か殺しちゃうよ。
どうする?どうする?何をしたらいい?
何かない?何かないのか?
病気?薬?病院?
どれもない。
ここにはない。
焦った。頭の中がぐちゃぐちゃだ。
まともな思考ができない。
これじゃダメだ、一旦落ち着きたい…
その刹那、かかりつけ内科医の宮島先生の顔が頭をよぎった。
これだ!気分だけでも。
頭の中で聴診器をあてられている光景を思い出す。
「はい。吸ってー。吐いてー。」
落ち着いた。
何を焦ってたんだ…答えは簡単じゃないか。
乏しい視界であたりを見回した。
あった。
光だ。
僕はいつもより必死に走った。
…遅い。
でも諦めない。
あれは、死ぬための「希望の光」だ。
無我夢中だった。
次の瞬間
ゾワッ、シュポン。
意識が薄れた。
『死亡しました。101回目の転生を行います。』
暗闇の中。ドドドドと激しく鼓動が打っているような焦り。
夜中に悪夢から飛び起きたような気分だった。
「良かった。死ねた。」
僕は誰も傷つけなかったことに安堵した。
たぶんあの感覚は、食べられたな。
この頃には感覚だけで、すぐに死因を特定していた。
当たってるかなんて知らんけど!
それでも、あえて言わせてもらおう。
「ありがとう。ゾウリムシさん。」
ゾウリムシさんに心の中で感謝を述べていると、ステータスの種族は(アメーバ)に戻っていた。
さらに安堵した。
あんな危険なもの2度となりたくないな。
しかし、あのスキル…【侵食】。
どう付き合っていくかな?
とりあえず危険そうな種族に転生したら、こうやってすぐに死んでしまおう。
そもそもBさんよ。説明はもう少し丁寧にしてほしいよ。
「…基本的には無害な事と半永久的な存在…」
なんて言ってたけど、よく考えたらすごい危ない種類いるし、すぐに死んじゃってるよ?
老人はすぐに人の話を信じちゃうんだから、しっかり説明しないと!
こういうのが、なりすまし詐欺の被害者とかを増やしちゃうんだよ。
そんなことを考えていたら、ステータス画面が消えた。
101回目の転生が終わり新しいアメーバとしての暮らしが始まる。
「安全第一、安全第一」
僕は、いつものように仮足を動かし、静かに進んでいった。




