↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
S級転生チケットを盗まれたので、アメーバからやり直します!  作者: しゃじなっぽ
第1章 アメーバになった老人

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
10/16

9話 アメーバ、光へ

突然すぎて思考が追いつかなかった。


出たのだ。

ついにステータス画面が出たのだ。

あっけにとられたが、すぐにステータスを確認してみる。

なになに?


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


個体名:なし(海部陸太)

種族名:アメー…


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


ここまで読んだ瞬間、ステータス画面は消えた。

あれ?

もう一度、念じてみる。

「ステータース!オープーン!」

ダメだ、反応がない。

なんでだ?

アメーバなので腕も顔もないのだが、頬杖をついている気分で考えている。


状況を整理してみよう。

念じている途中で、死んだ。

そのまま念じた。

そしたらステータス画面が出た。

転生が完了した今は?

…出ない。

もしかして、アメーバの状態じゃ見えない?

転生中のあの時間なら見えるのか??

そうなると、試してみるか。


「死んでみよう。」


そう決意した途端。

・

・

・

何も起きない。

前回の赤痢アメーバの時以外は、いつの間にか十数回も死んでいたのに。

そもそもアメーバってどうやったら死ぬんだ?

死んだと記憶しているものは2回しかないんだよな。

全くのデータ不足だ。

1つはさっきの赤痢アメーバになった時だ。

乾燥の後、おそらく人に感染して、投薬による殺アメーバが行われたのだろう。

もう一つは、あのモゾっとした感覚。

おそらく、ゾウリムシのエサになったのだろう。

死因は、捕食か投薬による毒殺。

外部的要因が大きいな。


今の転生状態はどっちだ?

普通のアメーバか、それともさっきの赤痢アメーバなのか。

…わからない。確かめようがない。

ここには鏡もなければ、それを見る視力がまずない。

感じるのは微妙な明暗のみ。

無理ゲーだ。

でも、まずは祈ってみようか。


「ゾウリムシさん!かもーん!」

・

・

・

返事がない。

ま、あたりまえか。

そんな1人コント、いや、1アメーバコントをしながら体の違和感に気づいた。


勝手に体が動いてないか?

本当にわずかな感覚だったが、体が一方向へ動いているのだ。

これは何かに流されているという事ではない。

明らかに自らの仮足で動いているのだ。

「ア…アメーバの体がひいているだと?」

そう思いながらも、俯瞰して自分を観察した。

何かからこの体は逃げているのか?

本能がそうさせているのか?


感覚がはっきりしないから、わからない。

はっきり見えないから、わからない。

かろうじて識別できる明暗で、僕が逃げている反対側を観察する。

光が差し込む先には結局何も見えない。

時折影のようなものが通るが、それが何かもわからない。

前回の時のように毒(薬)による環境の変化に対して逃げている感覚でもない。

なんだろう、あの光の先に何かあるのか?


「…光か?」


光が苦手なのか?

試しに明るい方へと体を動かそうとする。

その瞬間、何とも言えない不快感が体をおそう。

黒板を爪でひっかいた時のような。

生命的な危機感は、そこまでではないが、不快感を感じるあれだ。


やはり、光かもしれない。

仮説を立てたのなら検証あるのみ。

少し気持ち悪いが、全力で体を動かし光の方へと突っ走る。

・

・

・

遅い…


心はキプチョゲのように快足を飛ばしているのだが。

今の僕には快足どころか、仮足しかない。

「遠いな。」

そう思うが検証あるのみと、必死に仮足を動かす。


体感で20分くらい経ったのだろうか。

光が強くなってきたその時、意識がすこし薄れ始めた。

本能は影の方へと体を引き戻そうとしている。

僕はそれでも仮足を動かし続けた。

「退かぬ!媚びぬ!省みぬ!」

そう心の中で叫んだその瞬間


『死亡しました。20回目の転生を行います。』


「やった!…死ねたぞ!」

ぼんやりとなる意識の中で、そんな喜びをかみしめる隙も惜しんで

「ステータスオープン!」

心の中で唱える。


《ブゥウン》


という音とともに、あのオレンジ色の文字が視界の前に現れた!

「よっしゃーーー!」

僕は成功を喜びながらも、急いで文字を確認した。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


個体名:なし(海部陸太)

種族名:アメーバ(20回目転生中)

転生済みレア種別:赤痢アメーバ

メインスキル:【折れない心】

定着スキル:【変身Lv.1】

サブスキル:【状態異常攻撃Lv.1】


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「み、見えるぞ!僕のステータス!」

僕は、ばあさんとチークダンスを踊りたいくらい喜んだ。

その喜びの前に、次はスキルの詳細が確認できないかと思った。

メインスキルの【折れない心】に意識を向けると、画面が切り替わった気がした。


それと同時に、転生が完了して21回目の人生。

もとい、アメーバ生が始まっていたのだ。

「くそー!あともう少しでスキルの詳細まで見えたのに!」

そう心の中で絶叫した。


だが、僕は冷静だった。

不快感はあるが、人間だった前世。といっても正確には21回前の前世だ。

その時のような、激しい痛みなどの苦痛がアメーバには乏しいのだ。

死に対する感覚が完全にマヒしている。

「では、では。やり方はわかったので、今度はステータス詳細までいってみるかな。」

なんて思い、周囲を見渡した。


「見つけた。光だ。」


光を見つけるや否や、僕は仮足を動かした。

仮足で加速した…

うん、歳をとるのはイヤだね。

今のは無かったことにしよう…


『死亡しました。21回目の転生を行います。』


その声にすかさずステータス画面を開くとともに、折れない心の画面を開いた。

おっと、思ったよりも情報量が多かった。

生命保険の規約とか苦手なんだよな…

なんて思いながら情報を読んでいった。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


メインスキル:【折れない心】

グレード:レア

・一律ポイントでの転生を1000回繰り返すこと。その条件を達成した状態で、1回の転生先での努力値が99を達成した場合、低確率で取得可能。※努力値は隠しステータスのため転生省でも管理対象外。

このスキルは魂魄に定着するため、魂魄が消滅しない限り、スキルを維持した状態で転生する。

効果

記憶保持、スキル定着、精神耐性


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


そこまで確認すると、ステータス画面は消えた。

転生が完了したのだ。


理解するのに時間がかかった。

1000回転生?そんなに転生していたのか。

100ポイント累積というのが今更なのはおかしくないか?

そう思ったが、人間だっていつ死ぬかわからない。

僕もあの時、ばあさんが偶然通りかかっていなければ…

仮説にたどり着くまで、時間はかからなかった。

繰り越したポイントをやりくりしながら、何度も生きてきたんだな。

(1000回以上転生か…よく頑張ってんだな、僕。)


なんてことを考えたが、まだまだ気になることがある。

スキル詳細の中にあった効果だ。

3種類くらいあったかな?

1.記憶保持

2.スキル定着

3.精神耐性

それぞれの効果がやっぱり気になる。

気になったのならば行動あるのみ!

それでは1つ目、記憶保持だ!

・

・

『死亡しました。22回目の転生を行います。』

・

・

そして、新しくアメーバに転生したとき。

僕は泣いていた。

悲しかったからではない。

うれしかったんだ。

努力は報われるというが、まさにこの事だった。


【記憶保持】


この効果はスキル【折れない心】固有の効果で、その名前の通りだ。

転生してもスキル獲得後の記憶が保たれるのだ。

普通ならあの時、シー子さんが言ったように、転生後には前世の記憶が消滅するらしい。

後で知った話だが、例外として「Sランク転生チケットを使った場合」などであれば記憶を保持したまま転生ができるようだ。


辛いこともあったが、前向きにばあさんと一緒に努力して歩いた人生だった。

その人生がこの【折れない心】の効果として現れたのだろう。


世の中には、もっとすごいチートスキル。

世界最強の魔法とか、最強の剣技とか、そんなものもあるかもしれない。

だけど、このスキル。この能力こそ、僕には最高のチートだ。

思い出を忘れない。こんな素晴らしいスキルがあるだろうか…


あの夜…ばあさんに諭されて、一緒に泣いて、一緒に笑って、それから惚れて、家族が増えて…

楽しいことも、辛いことも、家族の分だけ…

その時々のにおいや、手の温もり…

この胸にずっとある…

ずっと、ずっと…

忘れないでいられる。

僕の大切なものをずっと守ってくれる。

そんな優しい力だ。

そう思うと一気に温かいもので心が満たされ、感情が溢れかえった。


アメーバに涙腺は無い。

だけど、僕はうれしくて確かに泣いていた。

心は激しく揺れたのだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。