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おとなりの文学淑女  作者: シルヴィア・紫の夜明け


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8/11

水色と制服とバイクの本

 今日の彼女は文庫本サイズの本を読んでいた。

 本の背表紙から雷印のライトノベルだろう。

 珍しいと思えた。

 彼女もそう言う本を読むのだなと。

 最初から分かっていた事だとは思えるが、緑川若葉は文学淑女の皮を被った雑食淑女だろう。

 非科学的な化粧品への浪費をしている文系女性を観測したことがあるが、彼女はその括りに当てはまらないと思う。

 それは依怙贔屓だろうか。


「お疲れ様です」

 といつものように挨拶をすると。

「おかえりなさい」

 と彼女は微笑みと返してくれる。

 ただいま、と言ってしまったら負けと思ってしまうのは、まだ自分と彼女の心距離が遠いからだろうか?

 今日の会話の切り出しは、免許証はお持ちですか? や風を感じたいのですか? と、どことなく訪問宗教臭いなと思っていると、彼女の方から切り出してきた。

「記憶を失う事は悲しいことなんですかね?」

 なぜそんな事をと一瞬思いはしたが、いつもの読んでた本の通りだろう。

「知人に、持病で記憶を無くしてしまう人がいるんですけれど、本人は何の記憶を失くしているか分かりにくいそうですよ」

「そうなんですか?」

「はい、対外評価って言うんですかね。殆どの記憶が失っている事を気づく時は他人と関わっている時らしいですね」

「なるほど、齟齬が出るから気がつけると」

「それに、記憶を失っている時は失った本人よりも、他人の方が感情的になるらしいですよ。怒ったり悲しんだり」

「確かに、健常者でも記憶違いによる言った言わないは凄く揉めますもんね」

「だから想像するよりも受け取り手の問題なんじゃないですか?」

「私が3日前に読んでいた本は何でしょうか?」

「確か、まっピンクの本でしたっけ」

「なるほど、そういうことなのですね」

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